【ネタバレあり ライブ感想文】米津玄師「米津玄師 2023 TOUR / 空想」@北海きたえーる 2023.5.20(土)
こんばんは。シリアスファイターです。
今回は米津玄師さんのライブツアー、北海道公演初日のライブ感想文です。
例によって、演奏曲や各種演出にも触れていますので以下、これからツアー参戦される方は閲覧注意です。
それでは早速。
前に米津さんのライブを見たのは、脊髄オパールツアーだったので、もう4年前のこと。
確か「Lemon」で紅白歌合戦に出て間もなくだった時期で、売れに売れまくってるポップミュージシャンとしての圧巻の存在感と、売れてる曲というより、(おそらく)本人がやりたい曲をやりまくるディープで芸術的な側面が見事に融合していて、ただただ音楽を浴びるだけのライブとは異なる魅力を放っていたように記憶しています。
音楽家として、アーティストとしてのスケールをどんどん広げながらも、ライブではMC含め、とてもアットホームな雰囲気も感じられるので、不思議と心が落ち着いてしまうという人間味もたまらない米津さんのライブ。
流石に4年も経つと、ライブで聞きたい曲は山のように積み重なっており、4年前と同様、今回も運良く先行抽選でチケットを手に入れることができた私は、そんな大きな山を彩り豊かに、自由に塗り替えていただこうと意気込んで、きたえーるへ繰り出しました。
万人近くが集いしライブ会場は、様々な年代の人が入り乱れ、席が前だろうが後ろだろうが、米津さんの音楽を生で浴びることができる!!と、期待に満ちたポジティブな空気が充満しているように感じられて、なんだかソワソワしてしまいます。
定刻を数分ほど廻ったところで、突如会場が暗転。
大きな歓声と拍手に包まれます。
そんな高揚感をなだめるように、子守唄のような優しいメロディが流れ出したかと思いきや、どこか遠くの宇宙に連れて行かれそうな、少し怪しげな、でも不思議と心が広がるようなSEとともに、ステージ上で明滅する青い照明。
私の席はステージから少し遠いところだったため、ハッキリとは見えませんでしたが、拍手が一段と大きくなったタイミングがあったため、間違いなく本人がステージに姿を現したのでしょう。
ほどなくして、イントロが流れた瞬間、大きな歓声とともに、全身緑色の服を見に纏った米津さんと、バンドメンバーがハッキリと姿を現しました。
まるで日本とは思えない、どこか異国に連れていかれそうな、未知の音楽の世界へ踏み出す一曲目は「カムパネルラ」。
小気味のいいバンド隊の奏でるビートと、米津さんの優しい裏声が混ざり合い、1つの炎をじっくりと大切に育てていくように会場を満たすグルーヴがとにかく心地良く、身体は自然と左右に揺れてしまいます。
間髪入れずに、スケールの大きなグルーヴで会場を包み込んでいく「迷える羊」。
今回のライブでは、一曲目からステージ後方にある大きなスクリーンに、楽曲のイメージに合わせた映像が流れていたのですが、この曲では特に、(2番くらいからかな?)、たくさんの歯車がぐるぐると回る壮大な架空世界のような映像が印象的で、曲のもつ大きなスケールとの相乗効果で、好奇心や冒険心のようなものを掻き立てられてしまいます。
端的に言うと…何が起こるか分からない米津さんのライブに想像力を掻き立てられた私は、とてもワクワクしていました…!
「札幌元気かーい!?」
イントロのホーンの音色が流れ出し、米津さんが客席に呼びかけた瞬間、とてつもない歓声が上がった「感電」では、4年前のツアー同様、今回もライブ全編に渡りダンサーの皆さんが加わり、スクリーンにとうとう映し出された米津さんの表情も活き活きとしていました…!
音楽以外の情報も多く、見た目はとっても派手なのに、その派手さは全くうるさくなく、ただただ音楽の楽しさを引き立てるものに感じられたのが最高で、音楽的な多幸感に、笑顔だけじゃなく、思わず、嬉しい涙まで溢れそうになりました。
「どうも米津玄師です。
札幌、また来させていただきました。
寒いと思ったら、結構あったかくてね笑
最後までよろしくお願いします。」
はにかみながらもスマートに挨拶をすませると、ここまでハンドマイクで飄々と歌っていた米津さんはギターを構えます。
久しぶり過ぎて何の曲か一瞬分からなかった、「街」で聞かせてくれたぶっといアンサンブルはたまりませんでしたね…。
ロックバンド好きも間違いなく好きになっちゃう重厚なセッション。
ステージ頭上から、バンドを包み込むくらい大きく四角い照明が、足元にスモークが炊かれるメンバーを煌々と照らし出す様は、そのままMVにしてもいいのではないかと思うくらいのかっこよさでした。
一転して、モノクロの切り絵で、女性の足や身体のように見えるものが次々とスクリーンに映し出される中披露された「Décolleté」は、とてもインモラルで艶かしい雰囲気。
ハンドマイクで歌う米津さんの腰の動きも何だか妖艶で、ただ聴いているだけの私も何だかイケナイ遊びをしているような気持ちに駆られ、開演前とは違う種類のソワソワした気持ちを掻き立てられてしまいます。
オレンジ色の照明が米津さんを照らし出す「優しい人」。
ここまでの曲と比べるとシンプルで剥き出しな演出の効果もあってか、人の目線や考え方によって変わる「優しさ」について、より聞き手としての想像を掻き立てられ、胸が苦しくもなりますが、米津さんの美しいビブラートだけは、切ないけど確かに優しいと感じられる時間でした。
歌い出しから会場中がじっとステージに集中する様を(勿論見ていたわけじゃないですが)肌で感じ、それが何だか愛おしかった「Lemon」。
想像を超えて、目に見える現実の喪失や別れに繋がっていく選曲に、最近私の現実でそういうことがあったわけではないにも関わらず、不思議と寂しい気持ちを駆り立てられます。
それでも、胸に残り離れないレモンの匂い。
寂しいけど、今は進めないかもしれないけど、それでも大切な何かがそこにあった人生は、今の私に繋がっていく確かな光となっていくのかな…と、原曲以上に裏声を多く用いて優しく紡がれる米津さんの歌声を聞きながら、想像を膨らませていきます。
前半を締めくくったのは「M八七」。
バンドの演奏も一音一音熱がこもり、米津さんの声も一層力強く響き渡ります。
「Lemon」の先を示すように、光り輝く星空の映像をバックに、痛みを知る人間として、確かにこの先の人生を生きる決意をより強く感じる流れ。
夜空に星が輝いていることを、こんなにも頼もしく思える時間はそうありませんでした。
「元気かーい?、んー、さっぽ〜ろ〜?」
シリアスなパートが終わり、なぜか札幌の発音だけ片言な米津さんによる緩いMCタイムへ笑
一瞬思い出せなくなりつつも、お客さんからの助け舟に「うおろろろろろろいず!」と興奮の巻き舌で、ロイズのポテトチップチョコレートが美味しいので今回も絶対買って帰るというご当地MCから、今、米津さんがハマっているマインスイーパの話へ。
作業の合間に息抜きとしてやっていた爆弾処理は、毎日名探偵コナンの映画の1作目終盤のようにハラハラドキドキで、気付けば夕方6時から朝6時まで、12時間やってしまっていたこともあったと語る米津さん!
「無数の爆弾処理しつつも、締切という名の爆弾がたくさん、自分の周りにはあって…。
私、はっきり言って詰んでるのに、今こうしてここに立って歌ってるんですよ!!
「いつもやらなければいけないことより、自分の興味のあることにばっか時間を費やしてしまうんですよ。
いつもこう!いつも通りの通り1人!こんな日々もはや懲り懲りですよ!そんな歌があったので歌います、LOSER!!」
爆笑のMCトークから、潔すぎる開き直り!笑。
でもこれ以上ない曲繋ぎで歓声とともに迎えられた「LOSER」から、中盤戦へ。
MCでほっこり温まった会場には、ライブ開始直後のような緊張感もなく、米津さんもまるで何か吹っ切れたかのように声もノリノリです!
途中でステージ後方に4階建てくらいの鉄骨階段も左右一つずつ登場し、最後のサビはその階段の頂上で堂々たる歌唱を披露、方やもう片方ではダンサーの方が踊り狂います!
米津さんが階段を降りてくるまでの時間を考えてかどうかはさておき、アウトロがロングver.でセッション長めだったのが個人的に嬉しかったです。
ストイックで好きなフレーズ目白押しなので!!!
ここから再び米津さんもギターを構え、ロックモードに突入!
「Nighthawks」では直球のバンドサウンドをお見舞いしながら、Cメロ部ではBUMP OF CHICKENの「天体観測」のリフを取り入れてくるという遊び心に、ロックバンド好きとしてキュンキュンしてる内に、ラスサビではアリーナ中に銀テープが発射され…と、ホントに最後の曲かと錯覚してしまうほど多幸感に満ちた盛り上がりを見せる会場…!
しかし当然のようにまだ終わらない米津バンドは、続く「ひまわり」で、初期の米津さんの楽曲を思わせるような、遊び心に溢れながらも攻撃的なバンドサウンドを聞かせてくれます。
曲がブツっと終わる瞬間、ジャーン!と威勢のいい一発を鳴らす米津バンド。
破壊的な余韻を引き摺りながら聞き覚えのある打ち込みのイントロ、全てを察した私を含めた観客は米津さんと一緒にカウントする未来しか残されていませんでした。
「1!2!3!」
相当お久しぶりです。「ゴーゴー幽霊船」!
原曲は完全打ち込みスタイルですが、この日は鉄壁のバンドスタイル。
原曲のカッコよさを、人力で武骨に泥臭く、確かに熱い血の通ったサウンドに昇華するライブver.のこの曲は、さ!す!が!に!痺れましたあああ…!
「まだまだ行けるかい!?」
真っ赤な照明に包まれるステージ、先ほど登場した階段には12人のダンサー、行けないわけがないし、これをやらないわけはないと思っていましたが、ここしかないだろと言わんばかりに、中盤戦ラストは「KICK BACK」。
客席の盛り上がりも沸点を振り切っている中、ステージには火柱が上がりまくり、終盤では、手持ちカメラを構える米津さんがエキサイトするバンドメンバー、ダンサー、そして自分自身を捉えるリアルタイムの映像に興奮し、最後には歌詞を「なんか…超気持ち良いいいい!」に変えるなど、もう頭のネジがぶっ飛びそうなほど、このロックンロールがただただ最高な瞬間…!
カタルシスも脳汁もドバドバドバドバ…と、とても日常生活で露わにできない感情に塗れた3分間でした…!!
「暑ぃーー!みんな元気かい?どうにかなってない?笑大丈夫?」
お客さんを気遣いつつ、自身も晴々とした雰囲気の米津さんは、ツアータイトルの「空想」についてお話ししてくれました。
以下は、私による大体の意訳です。
自分が音楽活動を初めて14年。
自分が美しいと信じた空想の世界が、(言葉にするのは難しいけど)、段々と現実に侵食されていく感覚があって、空想の世界と、続いていく現実はどちらも大きく影響しあっていることに気付いた。
SNSで道徳心とかが問われている今、空想の意味について改めて考え直すべきだと思う。
(空想は)行き過ぎると現実逃避になってしまう危険性はあるけど、自分の頭の中だけで、何をしても許される世界を飼っておくことは、現実を生きる上で必ず必要なことだ。
とっても端折りましたが、私が覚えてる範囲でこういったことを、言葉をじっくりと選びながら話していた米津さん。
人見知りで空に閉じこもることが多い子ども時代を過ごした私にとって、自分の想像する世界を大切にして、それを目に見える形で堂々と体現し続けている米津さんの姿と言葉は、これまで生きてきた自分を、とてつもない説得力で肯定してくれているかのように感じるものでした。
と同時に、今日見てきた映像や、体感してきた音や踊り、歌の全てが、米津さんの空想から生まれていて、かつこんなに純粋でキラキラし続けていることが素敵すぎる…!と心の中で唸るばかり。
「今話したようなことが如実に出た新曲です。大事な曲になりました。」
披露されたのは、まだ数十秒しか聞けていなかった、「月を見ていた」。
ステージ中央の花道で1人、時に儚く、時に険しい表情を浮かべながら踊るダンサーさんは、何を感じて踊っているんだろう…。
ステージに大きく映し出される月を眺めながら、曲を聞きながら、想像を巡らせていました。
そんな月が輝く夜空に、まるで花火が上がるような照明演出が儚くも綺麗だった「打上花火」。
今この瞬間に鳴っている音楽が、目の前の光景が素敵すぎて、終わってほしくない夜でしたが、確実に終わりが来ることが分かるこの曲が鳴ることで、より一層、今日のライブが素敵に思えてしまいます。
そうしてとうとう夜は明けます。
(「打上花火」の時もでしたが、)イントロからどこからともなく拍手が起こっていた「灰色と青」。
残酷すぎるほど淡々と、切実に刻まれていく鋭いバンドサウンドが、ゆっくりと夜明けを連れてくる様は、幸福に溢れたものではないけど、自分の中にある変わらない、大切な何かを信じて疑わない強さみたいなものを感じさせました。
現実は痛くても、何もなくても、くだらなくても、自分の空想が生きるためのヒントを与えてくれる。
そう思った矢先に、壁画に刻まれた様々な形の生き物の映像とともに鳴らされた「かいじゅうのマーチ」では、そんな現実の痛みや苦しみに呑まれすぎることなく、自分の心を信じて大切にする気持ちを忘れないでね、と、するすると心の糸を解いてくれるような、暖かいバンドのグルーヴが会場を満たしているようでした。
辛さや苦しみ、痛みや優しさetc...現実と空想の世界であらゆる感情を掻き立てられ、それら全てを持って「愛」と呼んで戦うために、最後に鳴らされたのは「馬と鹿」でした。
曲の進行とともにエネルギーが満ち満ちていくかのように昂る演奏をバックに、ゆっくりとステージ中央に向かい力強い眼差しを外に向ける米津さん、激しさを増すダンサーによる演舞。
くだらなくても、痛くても、確かに進む決意を、MVでない現実の世界でも確かに示した米津さん。
あっという間の幕切れでした。
拍手喝采の会場からは、興奮気味で異常にBPMの早い拍手が鳴り止みません!
私も流石についていけず、その半分の拍でしか叩けませんでしたが、まだまだこの音楽世界に浸りたい所存。
数分経ったところで、気づけばステージに現れていたメンバーは、特に言葉もなくアンコールを始めたと思えば聞き覚えのない曲…はこのツアーからやっているという未発表の新曲!
いきなりのサプライズに驚きつつも、リリースも未定とのことで、締切に追われつつも流石です、米津さん…!
ここで、米津さんからバンドメンバーの紹介を挟んだところで、米津さんの幼馴染であるギター、中島さんによる元気いっぱいのMCタイムへ!
米津さんを含むバンドメンバーを一通り褒めたおした後、最後は俺のギターが1番カッコよかったよねー!?と自信満々に宣言して見せたり(会場からは大きな拍手!)
羊は食べ過ぎても痩せるのは、肉は身体に残り、それが蓄積され最終的に羊になるからだ!だから北海道は羊が多い!という、トンデモ理論が滑ってしまった笑ところで、バンドメンバーによる一発のジャーンで、無理矢理話の締め感を出すという傍若無人ぶり笑に、米津さんも、それはない笑というリアクションを見せ、非常に和やかな雰囲気のきたえーる笑笑。
この緩い雰囲気も、この人のライブの魅力だったことを思い出したところで、ダンサーの皆さんを紹介した後、
「後何曲かやるけど、次はこの人たちと!」
との宣言から、荒廃した砂漠に、倒壊したビルがあるという違和感たっぷりで想像力を掻き立てるバックの映像とともに、華やかで皮肉たっぷりの「POP SONG」へ。
どんなにくだらなくても、これが楽しくて好きでやってんだよと開き直らんばかりの、やさぐれたような開放感は、米津さんの音楽じゃないと味わえないよなと、ニヤニヤしながら踊らせていただきました。
イントロから大歓声が起こった「Flamingo」では、バックの映像はそのままに、月がピンク色に輝きます。
やさぐれつつ、さらに酔っ払ってしまったかのように唸るグルーヴ、それを大いに引っ張る須藤さんのベースラインが心地良すぎて、素面なのにお酒を飲んでいるかのような気分に…。
そのまま再びイントロから大歓声の「春雷」!これは私もとても嬉しかった!!
言葉にするのも形にするのも覚束ない、色とりどりの愛に溢れたポップミュージックに、胸がキュッとしまって、ポッと火が灯る素敵な感覚、これが音楽に恋する感覚だ!!!
と聞くたびに唸ってしまうこの曲を、痛みや寂しさや悲しみも含めて、しっかりと心で受け取ることができました。
たっぷりと聞かせていただいたアンコールでしたが、正直今日はこの曲を聞かないと帰りたくないなという気持ちがありました。
それが最後を飾った「LADY」。
ちょっと夢見心地でふわふわと漂うように、でも時には地に足つけて軽やかに、また日々を超えていけるように。
目の前の演奏、溌剌とした米津さんの声、躍動するダンサーさん、それらを受け止めるうち、わざわざ自分に言い聞かせるまでもなく、そうやってまた生きていけそうな予感が、身体中に溢れていくようでした。
「どうもありがとう!米津玄師でした!」
バックの夜空を駆ける銀河鉄道の映像に合わせるようにステージを去った米津さん。
最後にはエンドロールまで流れ、そのスタッフの多さに驚きつつも、確かに美しかった空想と現実の世界に、これでもかと拍手を送りました。
演奏から演出まで、自分が美しいと信じる空想の世界と、現実を軽やかに行き来して、何度も心と身体が開放されるうちに、自分だけの想像の世界を、大好きな音楽を信じて生きていいと確信できるライブでした。
何より、楽しそうに音楽を奏でる米津さんが素敵すぎて、嬉しすぎましたね…!
今回は以上です。
最後まで読んでいただいたそこのあなた、本当にありがとうございました。