【ライブ感想文】NOT WONK「RETURN ONE MAN LIVE」@苫小牧ELLCUBE 2024.12.22(日)
こんばんは。シリアスファイターです。
今回はNOT WONKのワンマンライブの感想文です。
このライブは元々、コロナ禍における同ライブハウスを支援する目的で行われていたクラウドファンディングの支援者に対するリターンとして企画されていたもの。
当時軒並みライブが無くなって途方に暮れていた私。
無理のない範囲でここぞとばかりに募金や支援をしていた中の1つにこのクラウドファンディングがありましたが、当時はコロナ禍の出口もいつ見えるか分からない状況だったため、気付けばリターンの存在すら忘れていた今日この頃。
支援から実に4年近い年月を経て、満を持しての開催。
今年、北海道で見る最後のバンド、最後のライブとして、これ以上ない状況の中、数ヶ月振りのELLCUBEへと向かいました。
予定時刻を5分ほど回ったところで、場内のBGMが大きくなると、ところどころで上がる歓声とともに暗転。
赤いTシャツに、いつもの黒い革のパンツという出立ちの加藤さん(Vo.&Gt.)を筆頭に、3人が淡々とステージに姿を現します。
この日のサポートベースである本村さん(Ba.)は、全身カーキ色のつなぎに、バチバチに固めた髪、大きなサングラスというあまりにイカシすぎた出立ちで、かつてカネコアヤノさんのサポートで拝見したときよりもゴリゴリの風貌に変わっていてちょっと驚きつつも、いたって淡々と準備を進める3人。
チューニングを整え、3人それぞれが試運転するようにポツポツと出す音の粒が、次第に1つの音楽に向けて形を成していきます。
アキムさん(Dr.)の合図から重ね合わせる最初の爆音とともに、逆光に浮かび上がる3人のシルエット。
爆音の更地に佇むバンドの輪郭だけがくっきりと浮かび上がり、全ての景色を塗り替える「NOT ALL」。
ゆったりしたテンポの中で、そのアンサンブルや歌声の居場所を、自分の立ち位置を確かめるように、声や音を丁寧に重ねていく時間…音は破壊的に爆音でも…あまりにも凄絶で美しい音楽の景色…!
最初の一音で壮大に景色を塗り替えた後、曲が終わると間髪入れずに、緩急つけて、静かに怒り始める「OOH,FUCK OFF THE SENIOR!」。
さきほどの爆音ミドルテンポから、静かなアップテンポへと移り変わると、本村さんが奇怪なステップを踏み始めながらノリノリでベースプレイに興じる様は、かつてカネコバンドで見た様子そのもの。
そのままサビのタイトルコールの絶唱になると途端に勢い付く3人の合唱とともに、客席からも力強い拳や歌声が上がり始めます…!
加藤さん
「NOT WONKよろしく!」
軽快に挨拶を済ませると、アキムさんのスティックカウントから「Count」へ勢いよく雪崩れ込みます。
間奏部で少しずつ音階と音量を上げる加藤さんのシャウトは、マイクから多少距離を置いても、客席にダイレクトに届くほどには絶好調。
その額には既に汗が滲み始めていて、見て聞いているこちらの熱も高まる中、もちろん続けて投入されるのは「Elation」で、2Aに突入すると、何度もフェードインするように緩急を付けるアキムさんのドラムロールに、飛び出したくてたまらない気持ちを更に煽られ…サビで大爆発する流れ…!
更に攻撃の手を緩めない鋭いギターの切り込みから一転、一瞬躓きそうになる緩やかなギターリフとグルーヴがたまらない「Of Reality」…とうとうライブで聞けた!
この日常、この現実、自分のなりたいものは誰にも奪わせないと静かに怒れる精神性の爆発に、演奏自体は丁寧で、あくまで淡々と冷静な加藤さんに、私は私の現実を生きたいだけという想いが、サビの清涼感あるメロディとともに溢れ出します…!
まだまだまだまだ!
ブルンブルンとエンジンを吹かすようなギターで、行ったこともないのに、アメリカの海岸線あたりを車で駆け抜けているかのような、潔く、心地よく、熱い風を感じさせる「get off the car」で、ますますそのうねるベースプレイとステップにキレを増していく本村さん!
怒りを込めつつ、でも音楽に乗って楽しく響き渡るタイトルコールのフレーズにワクワク…!
加藤さん
「過去一で!!」
加藤さんがそう告げると、異常に鋭くハイテンポなビートを鳴らし始めるアキムさん…!
そのまま私がライブで聞いた中では間違いなく過去一でテンポの速い「Everything Flows」に突入すると、イントロからグッと姿勢を落とし、弦を引き千切る勢いの高速ストロークで応戦するフロント2人!
ハハハッ!本っっ当にワクワクさせてくれるじゃないですか!!
あまりの爆速ぶりに、聞いているこっちも、流されてたまるか!と、身体と心を小刻みに震わせ続けます…!
最後には勢いそのままに、本村さんがマイクを食い破るような強烈なシャウトを連発!!
愉快痛快なロックショーは続きます。
余韻のようなギターノイズが広がる中、加藤さんが足元のエフェクターをいじると、そのギターの残響は次第に緩やかな波を形成していきます。
一転した静かなセッションから始まるのは
「Shattered」。
「隔てている何か」の存在を感じながらも、その中で静かに冷静に、それを食い破らんとする爆音が溢れ出す終盤に、隔たりに負けない何かが溢れ出しますが、そんな曲のグルーヴを牽引していたのは間違いなくアキムさん。
イントロの複雑怪奇なリズムのフレーズから、ジャジーなイントロ、激しく爆発する間奏まで、とても1人で叩き分けてるとは思えないほど雄弁なドラミングで、目まぐるしく展開が変わる曲を冷静に導き続けてくれます…!
加藤さん
「みんな、4年前のことよく覚えてたね笑
本当にありがとうございます、NOT WONKです。
4年で突発的に色々変わって…ベースは本村くんです。
今日はあんましゃべっても仕方ないから曲やるか…。」
MCをすると決めていた訳でもなさそうで、自然にヌルッと話し始める加藤さんの飾り気のなさはいつも通り。
こうして淡々と、再び鳴らし始めるのはジャジーなアルペジオ。
そのまま「slow burning」が始まると、真っ赤な照明の下、情熱のタンゴを踊り狂い出してしまいたくなるグルーヴが色めき立ちます…!
2Aでは全く同じビートで、加藤さんのギタータッチが優しくなり、大人のジャズバーに繰り出したかのように曲が表情を変えるのは近年のライブアレンジですが、この緩急…さっきから言ってる気がしますがこの「緩急」こそNOT WONKのライブの魅力で、しかもくどくなくあっさりと飲み込めるところがまた良い…!
そのまま加藤さんの優しいギターストロークから、暖かみのあるアナログな質感の情景が広がる「in our time」。
音から歌から何から何までここまで分かりやすく純然たる「優しさ」に溢れたNOT WONKの曲は珍しい気がしていて、私も久しぶりに聞きましたが、とにかく心地良い…こういう音の木漏れ日にずっと触れていたい…。
すると曲が終わって早々に、笑顔が漏れ出す3人。
「良い曲〜。」
「良い曲だな〜。」
「俺、泣きそうになっちゃった、最高のバンドだな。」
MCでもなんでもなく、途端に感慨にふけるような3人。
そんなアットホームな安心感を感じるライブハウスの空気もまた愛おしい…!
加藤さん
「報告遅くなったんですけど、10月にフジ(前Ba.の藤井さん)が抜けて、でもそこでバンド辞めるかとはならなくて、アキムもいるし。
で、夏に2人でアルバム録って、ベースも全部俺が弾いたんですけど、来年のツアーは本村くんも一緒に回ってくれます。
苫小牧はないんだけど、4月に札幌であるんで、また集まれたらなっ!って思ってます!笑
次にやる曲は新しい曲で、「永遠性について」って邦題なんですけど、フジと一生バンドやってくと思ってたらそうはならなくて、 永遠ってなんだろうなと思って書いた曲です。」
こうして披露される新曲は、激しくもなく、でも目に見えてゆったりでもなく、でも心地良く浮遊してしまいそうなエフェクトのギターが印象的なミドルテンポの曲で、初聞でも聞き心地が抜群…!
歌詞はアルバム発売後に追って確認するとして、少なくとも2月に出るというアルバムへの期待感は膨らみます。
その膨らんだ期待を、更に空へと押し上げるように、歪みすぎたギターと爽やかなコーラスでカオスを生み出す「This Ordinary」。
背筋をピンと伸ばし、真っ直ぐ前を、時には下を見据えてギターを鳴らす加藤さん。
演奏する姿自体は、どこにでもいるような青年に見えて、そのギターから溢れ出す音はあまりにも勇敢すぎて…!
これがNOT WONKにとっての「いつも通り」であることを堂々と鳴らした先に見据える景色と、サビの大爆発が重なることで生まれる熱に心震えます…!
曲を終えると、ステージ上の照明は、ステージ左右の足元と、アキムさんの頭上をほのかに照らすライトだけに。
ほとんどメンバーの姿が見えない暗がりで演奏されるのは、終始ジャズやボサノヴァのような音楽の香りがするゆったりとした曲(後ほどXに上がっていたセットリストを拝見すると、「Embrase Me」という曲でしたが新曲?)。
ミニマムな世界で、コーヒーでも飲みながら浸っていたい音像に心を落ち着けます。
音楽的なブレイクタイムを挟み、ギターの残像は再び、少しずつ歪みを増していきます。
年々Aメロ部のテンポを意図的に落としている(と私が思い込んでいる)「I Won't Cry」ですが、曲が進行するに連れて、どんどんどんどん、ELLCUBEの床がぬかるんでいく感覚に陥るように、テンポをぐわんぐわんに落としていく3人…先ほどの「Everything Flows」が過去最速だとすると、これは過去最遅…?
すると、くいくいと本村さんに指で合図する加藤さん。
しばしの間、ギターノイズだけが鳴り響き、立ち止まり、目を合わせる3人。
緊張感が高まる中、ギターのノイズが最高潮に高まった次の瞬間、大暴走の速弾ベースを弾き倒す本村さん…!!!
突如過去一最速になった同曲は、実に原曲の軽く3倍増しくらいではあろうテンポで、まさしく泣いてる場合ではないほどには暴力的な速度の最終暴走列車が、突風を巻き起こしながら駆け抜けていきます…ふ…振り落とされる…!!
とんでもない列車が眼前を通過したところで、ここからは「shell」で終始、揺蕩う波のようなアンサンブルを味わう時間に。
いずれもNOT WONKの中では長尺の曲(特に前者)にあたりますが、気持ちとしては湖の上に身体を預けて、波の流れを、水の温度を、周りの音を感じながら、時に心地良く、時に怖く、時に綺麗に、感じ続けるような不思議な時間。
音に乗っているだけで、自然と感受性を揺さぶられている感じ…でしょうか?
そうして音の遊泳を終えると、アウトロ後には、本村さんによる小気味のよいベースフレーズを皮切りに、加藤さんのギター、アキムさんのパーカッションによる軽快なセッションに移行。
改めて、本村さんによる踊るベースラインの凄まじさを実感…歓声も上がります…!
そのまま再びゆったりモードへ。
当初はピンク色の照明が灯っていたステージですがイントロ中、「天井の照明だけでやりたい」という加藤さんの一言で、シンプルなステージに変わる中で披露された「your name」。
照明の影響もあってか、ひたすらに「あなたの名前」を呼び続ける加藤さんの優しい裏声と、エルキューブというライブハウスの距離の近さをより感じる時間。
私とNOT WONKしかいないような空間でこそ、名前を呼ぶことで生まれる温もりに満たされます。
浸り切ったところで、加藤さんは引き続き優しいアルペジオをポロポロと紡ぎ続けます。
少しずつ軽快さを取り戻していくように震える弦がイントロを鳴らし始めると、歓声が上がるのは「Down the Valley」。
まるで心地良い夢の中にいるような3曲が続いた後、朝の光を感じさせるような軽やかさを感じさせるグルーヴで、本村さんの刻むステップも少しずつしなやかかつ軽快に。
そして間奏、音の爆発、照明の大点滅、再び目覚め始める時は…今。
寝てる場合か!?とばかりにスウィングする最後のサビにゆらり揺らされ、心にも軽やかさを取り戻していきます…!
本村さん
「さっき言いそびれたんですけど、NOT WONKでライブをやるのは2回目で、初めて苫小牧来れました!ありがとうございました!」
加藤さん
「俺が言うことじゃないけど、クラウドファンディングで支援してくれた人、本当にありがとうございました。
あの状況で、ここも潰れてもおかしくなかったんで、本当に助かったと思います。」
感謝の気持ちを告げる本村さんや加藤さんに自然と拍手が起きる中、加藤さんのアルペジオに合わせて、自身のマイク付近で小さな鈴の音を鳴らすアキムさん。
まるでクリスマスでも訪れるかのような雰囲気に包まれる中、いざ曲が始まると、しんしんと雪が降り積もるだけの淡々とした一本道を歩く自分が現れる「the place where nothing's ever born」へ。
自分が長いこと生きてきた北海道の街並みを想起する一曲で、かつ、まさに今の時期にこそ情景が似合いすぎる曲。
ひたすらに何もなく、寂しくてただただ長い一本道を思わせる淡々とした演奏の中で、自分の足跡だけが確かに刻まれていく感覚は、それだけが自分の生きている証拠だと思えるような説得力があります。
こうして足取りを確かめた後、強烈なギターノイズがザザッ!ザザッ!と断続的に鳴り響くステージ。
静かな雪国の景色は、イントロとともに豪雪、猛吹雪に包まれます。
ラストは「dimensions」。
一縷の隙も見せない爆音の塊に足を取られて動けなくなる中、ラスサビ前の間奏の爆発で、凄絶な轟音アンサンブルと加藤さんのシャウトが轟くと、豪雪をじんわりと溶かし尽くす豪熱の音像が…!!!
そんな爆音をもってしても、目の前の雪が溶けず、降り止まずとも、確実に燃えたぎる何かがここにあります。
北海道には、少なくとも今日のこの苫小牧には、NOT WONKの爆音があって、それに奮い立つ自分がいるのであれば、この場ではそれで十分…それだけで…十分…!!
爆発的な演奏を終え、何事もなかったかのように淡々と去っていく3人でしたが、アンコールの拍手に応え、早々に再登場。
加藤さん
「今年は本当に色んなことがあって、よかったこととかを振り返って、それに浸るのとかもいいのかなぁとか考えたんすけど。
4年前好きだったものが、今は好きじゃないとか、興味なくなったとかってのはあるじゃないですか。
だから、今はそういう気持ちは封印して、今を見せていきたいなと。
今を見てその都度、あれが良かったとか、これが良くなかったとか判断してほしいって気持ちです。
何はともあれ、素敵な週末に一曲!」
素敵な週末を彩るのは、NOT WONK最初期の曲である、「LAUGHING NERDS AND A WALLFLOWER」。
曲自体は「過去」に発表された曲であっても、今の私の中の何かが燃えるのは、加藤さんの今を生きる言葉があまりにも快活に頼もしく聞こえたからで、目の前のNOT WONKの演奏が何よりもかっこいいから…!
あまりにも熱く歪んだ音像で、心に暖かい花を咲かせてくれる最高の週末…!!
加藤さん
「本村に…NOT WONKの洗礼を…!
(マイクを通さず大シャウトで)
…GIVE ME "FUxxxxkin" BLOW!!!!!!!!」
超絶テンポアップの強ギターストロークから溢れ出す「GIVE ME BLOW」!!
曲の始まりとともに問答無用でモッシュが起こるフロアと、喰らいつくようにモニターに足をかけブンブンにベースを振るう本村さん…!!
音速の爆音に殴られながら、後ろからのモッシュの圧を感じながら、歌われる「俺を殴ってみろ!」という精神的野獣の攻撃…!
どうだ…?そんなもん痛くないぞ…!?私はそんなもんじゃないぞ!!
優しい反骨心が炸裂する2分間は秒で終結。
加藤さん
「この後近くの店で飲むんで奢ります!笑
みなさんよいお年を!」
高々とピースを掲げ去っていった加藤さん。
踊り躍動するベーシスト本村さんを迎え、この4年間で培ったものとか、今年の上手くいったこととか、一切の「エモ」に浸ることを許さない、今しかない爆音で胸がいっぱい…!!
NOT WONKがいる北海道のライブシーン、絶対的よいお年を!というかなるでしょ!
まだまだ付いていきます!!
今回は以上です。
最後まで読んでいただいたそこのあなた、本当にありがとうございました。