【咲き乱れろ、反撃のパンクロック】ヤバイTシャツ屋さん「Tank-top Flower for Friends」
こんばんは。シリアスファイターです。
2023年が早くも3月に突入した直後、3人組ロックバンド、ヤバイTシャツ屋さんがまたしてもやってくれました。
5枚目のフルアルバム、「Tank-top Flower for Friends」は、その可愛らしいタイトルと華やかなジャケ写の印象から、ただただ何も考えずにポップに頭弾け飛ぶ、テンション爆上げのパリピ御用達のポップソング集…ではありませんでした。
いや、当然、ヤバTの強みである演奏力の高さと、キャッチーなメロディラインは今作でも惜しみなく放出されているので、ライブは楽しくなること山の如し。
その大前提がある上で、何かと上手くいかない自分の現状や、取り巻く環境etc...に対するモヤモヤと鬱屈した想いを、全く嫌味なく、卑屈になるわけでもなく、心のままに直球のパンクロックに乗せて吐き出すことで、そういったネガティブなものにも目を背けず生きていく、ヤバTの側面を存分に味わえたのが、私にとってのこのアルバムでした。
そんなアルバム13曲分の感想をまとめました。
01.Blooming the Tank-top
ヤバTのアルバムと言えば、タイトルにタンクトップを冠した曲で始まるのが通例で、いわゆるタンクトップ(パンクロックetc...様々な意味を自然と持ってるように聞こえてしまう)の呪縛から逃れられないバンドのあり方を歌い続ける、自己紹介的な立場を担う一曲目。
ヘヴィなギターリフと小山さんのデスボイズ、もりもとさんの正確無比なドラムのビートがザクザクと曲をかき分けた先に、ありぼぼさんの可愛らしいコーラスが合流し、サビで大輪のポップでキャッチーなパンクロックが開花します。ライブ映え間違いなし。
前半は多種多様なタンクトップを用いた造語連発のカオスな展開ですが、後半は自らの負の感情をぶち撒けつつ、それを抑圧する自分もいるというシリアスな本音の芽が顔を出すという、コミカルとシリアスが2分ちょっとの間で詰め込まれた、なんて欲張りな曲…!!!
誰にも見つからなかろうが、季節がいつだろうがお構いなしに、タンクトップの苗をうるさくて早い音楽に乗せて植え続ける、ヤバTのパンクロックを鳴らし続けていくという覚悟の宣誓として受け取りました。
死ぬことも枯れることもないロックバンドが、またここから始まります。
02.ちらばれ!サマーピーポー
この曲に関しては好きすぎて、一曲でnote書いちゃったくらいです。
(公式さんにリツイートされた時は、心臓飛び出るほどビビりましたが)
前書き部分で書いたことを踏まえて付け加えると、世間一般にイメージされるキラキラ輝く青春やパリピの象徴としての暑い夏に対する猛烈なカウンターが利きまくっていて、そういった私にとっては縁遠かったり、苦手だったりする夏の側面を、ここまで具体的に切り取ってくれたからこそ、ライブで躊躇うことなく暑くなれるのだと思います。
ちらばれ!群れるな!と言いつつ、その裏返しで、結局1人ぼっちでも、このロックがあれば楽しめるんだという頼もしさたるや…!
03.dabscription
雰囲気だけで、果ては、サブスクなどで音楽を聞き流す人が多い現状へのカウンターパンチとして受け取りました。
前半は、いわゆる「チルい」音楽も好きに違いない?メンバーが丹精込めて背伸びしながら作ったであろう、「チルい」気分に存分に浸れるクオリティ抜群極上のトラックに乗せて「君のBGMになりたいの」なんて甘い歌声で囁いてきます。
この「前フリ」が、壮大に活きまくった先に、暴力的なまでに音が割れた、後半の直球パンクロック大会で、ロック大好き人間の私は心からブチ上がるのです。
チルい音楽が決して嫌いなわけではないけど、この音に、歌詞に、魂込めて作ってんだから、最後までしっかり聞けよおおおお!
「ヤバみ」のような曲でヤバTが歌い鳴らしてきたことを、更に今のシーンに合わせて、分かりやすい形で投げかけながらも、結局うるさくて早い音楽しかできないと開き直るこの曲を聞いて燃える私は、世間からするとマイノリティかもですが、それでも自分が好きなものには嘘つけないですよ!
04.ダックスフンドにシンパシー
ライブ初披露は私が昨年参戦したツアー初日の札幌公演で、タイトルから衝撃的だったのでよく覚えています笑
ツービートで疾走する王道のパンクロックに乗せて疾走するダックスフンドは、人間(こやまさん)からすると同情してしまうこと(特に胴の長さによるリスク管理について)ばかりのようです笑
そんなシンパシーを感じてしまう歌詞とキャッチーなメロに、同じようにシンパシーを感じて心踊ったなら、サビで思いっ切り「ワン!」と叫べばあら不思議、楽しいロックショーの虜になるでしょう。
ただ楽しかったで終わらず、歌詞の最後で、シンパシーを感じていたのは人間の一方的な想いに寄るものであると、ふと我に帰るところが最高。
ダックスフンド本人からすれば、「勝手に共感してくれんな!こちとらそっちが思ってる何倍も何十倍も苦労して生きてetcetcetc....」と憤怒しているかもしれません…そんな自己中心的な捉え方をしていないか、改めて考えてみましょう。
まあ、それすらも思い込みだったりして。
05.俺の友達が俺の友達と俺抜きで遊ぶ
実話らしいと知った瞬間から、衝撃的なタイトルに心が別の意味で震えます。
タイトル通りの悲壮感たっぷりのメロディですが、ヘヴィなギターリフがかっこよすぎて、ギターロック好きはもれなく歓喜することでしょう。
初めは自分が紹介した友達だったはずなのに、気付けば自分だけが仲間外れになっている…。
ムカつくのか?寂しいのか?
よく分からないけど異常にモヤモヤする現状をぶつけるには申し分ないロックサウンドに乗せて、最後はそんなこと考えてがんじがらめになってしまう自分が悪いのかな…?と思ってしまうなんて…。
気持ちは分かるけど、謝らないで!!
そう思ってしまうのも人間だから、そういうグレーなモヤモヤは、こういうパンクロックで吐き出しちまいなっ!!
06.Bluetooth Love
この曲が本作で1番…ストレートに可愛い!
繋がりそうで繋がらなかったり、間違って別の機材にペアリングしたり、思い通りにいかないBluetoothを恋愛に例えるという、今この時代に生きてないと鳴らせない、著しくピュアな想いが詰まっている歌詞と、キャッチーで分かりやすい良メロが、真っ直ぐ見つめ合ってガッチリ手を取り合っています。
一方MVでは、架空のポップユニットが歌っている設定で、そこに何だか心から乗り切れないヤバTの面々がユーモラスに描かれていますが、何だか笑えるけど、周りのノリに合わせるのが苦手な人間からすると、笑えるけど笑えない微妙な線を付くことで、これまた結局自分が好きなロックバンドこそ、自分を解放できるものなんだと思ってしまいます。
とか色々言いましたが、ライブで踊るのは楽しいですよ!この曲!
07.インターネットだいすきマン
とんでもなく神妙な面持ちで、バンド10年の集大成との触れ込みがあったところから、リズミカルなピアノの音色と童謡のような可愛らしいメロディに乗せて歌われるのは、コンプライアンスギリギリの表現で攻めるインターネットの光と闇(というかほぼ90%闇)です。
…いや、どんな曲!!?
まるでNHKの「み○なのうた」で流れていてもおかしくない音像で、歌詞と裏腹にとにかく楽しそうに流れるようなピアノの音色が心地良いのは、確かに集大成というか、10年目にして新境地かもしれません…!
SNSやネットでの情報拡散を駆使してきたヤバTだからこその説得力もあるような気がしますが、聞き終わって思うことは一つだけです。
インターネット大好き!
でも怖いから気を付けようね!
08.くそ現代っ子ごみかす20代
前曲からのギャップのせいで、イントロのギターには怒りにも似た迫力を感じますね笑
この世の負の側面を根こそぎ掻き集めた、負の集積みたいなタイトルですが、感じられるものはシンプルに、「私だってできるんだ!」という心の叫びです。
聞く人からすれば滑稽に聞こえるし、実際数々のチャレンジに失敗し続けるカオスな展開のMVは初見で大爆笑しましたが笑、自分がダメであることは痛いほど分かった上で、決して周りのせいにせずに、それでもできるんだ!というこやまさんの切実な叫びに、同じ年代の私は共感の嵐、心のモッシュ発動の運びとなりました。
というわけで、私もやればできますので、仕事の締切を伝えていただく際は、本当の締切日の3日ま…いや、一しゅ…10日くらい前をお伝えいただけます…???
09.もし僕が石油王やったら
アルバム恒例の、ベースありぼぼさん作詞曲枠。
アコギを基調とした爽やかな風が心地良く吹いてくるメロディは気持ちよく、唐突にラップが始まるBメロとの緩急も相まって、ずーっと聞いていたくなるんですが、歌詞を見ると…、これ何?笑
タイトルみたいな例えって、よくありますが誰が言い出したんですかね?
要するに「もしお金がいっぱいあったら、裕福だったら…」というものの具体例の代表みたいな存在だと思いますが、なんで石油王?日本じゃ石油ほぼ取れないのに??
…歌詞を読んでるうちに、余計なことばかり頭をよぎってしまいました。
…で、そもそも「石油王」って何?
10.職務質問 ~1日に2回も~
アルバム恒例のツービート爆走型の楽曲枠でもありつつ、ラウドロックバンドとしてヤバTの本領発揮曲。
こやまさんのギターは正々堂々と脳天カチ割りにきているゴリゴリサウンドだし、職務質問の数々が飛び出すBメロで、うんざりした気持ちやイライラした気持ちがごちゃ混ぜになって唐突に地声からデスボイスに変わる瞬間は、とてつもないカタルシス。
そんな展開もあって、サビ(まさかの英語詞)での抜け感のあるバンドサウンドの心地良さもよい!!
ライブ映えがとてつもない予感がするので、1番ライブで聞くのが楽しみな新曲です。
これも実話なんです…よね?
曲自体は何度でも聞きたいですが、やめてあげて欲しいし、これをきっかけに自分を責めすぎないでほしいけど、そのモヤモヤは抱えたままでもいいから、このパンクロックにぶつけましょう。…ん?デジャヴ?
11.Beats Per Minute 220
岡崎体育さんとの共作曲、これも好きすぎますね。メロが圧倒的に気持ち良くてツボすぎて、全然発表週と関係ない自分のnoteに感想書くくらい好きでした。
岡崎さんとはお互いに「紅白歌合戦出場」を言霊に乗せて放ち続けるミュージシャン同士。
叶わない夢だなんて一言も言わず、アイデアも枯らさず、できることを全てありったけの音楽に込めて放ち続ける2組の真剣勝負のぶつかり合いだと思って聞くと、更に熱い気持ちが込み上げます。
いつかこの2組が同じ舞台に立った時、この曲を聞けたら私は多分まともにTV画面が見えないくらいには、感情グチャグチャですね。
12.ZORORI ROCK!!!
かいけつゾロリ、アニメのタイアップとして、これ以上ないくらい作品に寄り添って、ヤバTのキャッチーさで持って明るく楽しく作品を彩る良曲ですが、ふと現れる、
この歌詞にハッとさせられます。
周りの人と仲良く楽しくやる自分も時には夢見ながら、それでも上手くいかず1人で泣きたい時も、元気いっぱい楽しい時も、ヤバTのロックで、ライブで踊ると元気が貰える顧客にとって、こういうヤバTの曲が、タイアップも飛び越えた新たなアンセムになるんじゃないでしょうか?
と同時に、Twitter等で本人たちがこれでもかと言うように、「ヤバTのライブは楽しいし、元気が出る!」ということを、この曲が宣言しているようにも聞こえて、それだけ自分たちのライブに自信があるロックバンドの堂々たる選手宣誓。
こう思うと、ライブでの聞こえ方もまた変わってきそうで楽しみですね…!
13.hurray
ここまでの流れを踏まえ、最後は直球勝負で顧客を、そして自分たちを奮い立たせる、ヤバT流応援ソングでアルバムは幕を閉じます。
自分だって元気ない時だってあると歌いながらも、こやまさんはサビで、声が割れる文字通りの絶唱で、「フレー!フレー!フレー!フレー!」と叫び続けます。
綺麗事?無責任?…上等です。
ロックバンドが綺麗事歌わないでどうすんだ?
この声を、歌詞を、演奏を聞けば、全て本気で思って、魂込めてやっていることが分かるはずです。
いつだって、不安でたまらない時もあるけど、元気ない時だってあるけど、モヤモヤしてよく分からない気持ちがまとわりついて離れない時だってあるけど、そんな気持ちもありのまま曝け出して、いつだって反撃の狼煙を上げ続けてくれる、ヤバTのパンクロックがあれば…「大丈夫だ!!!」
今日も自分のペースで、少しでも自分らしく生きるために、反撃を続ける13曲が咲き乱れる一足早い春の知らせです。
ここからまた、ヤバTのこのアルバムとともに人生を突き進むのみです。
ちなみにこのアルバムを引っ提げた楽しみで仕方ないライブツアーは、無論、札幌公演に参戦させていただきます…!
この感想文を書いてる現時点でまだチケットがあるそうですので、少しでもこのアルバムに引っかかるものがあれば、3月20日(月・祝前日)、北海道では一足早い春への第一歩として、満開のパンクロックを浴びに行ってみてはいかがでしょうか?
今回は以上です。
最後まで読んでいただいたそこのあなた、本当にありがとうございました。