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モチベーションを上げようと頑張る必要なんてない

モチベーションをアップさせるためにやっていること

先日、とある講座に登壇した際に質疑応答のコーナーにて現場の方からこんな質問を受けました

私の施設は、若い子が多く人手不足のなか、なかなか理想の介護や看護ができない状況にあって、それでもそんな中でも利用者の皆さんに、少しでもより良い生活を送ってほしいと願う職員もいるのですが、そういう職員はごく一部で、大多数の中に埋もれてしまっている状況です

そんな職員でも前向きになれるように、モチベーションをアップさせるためにやっていることがあったら教えてください

その時の回答は、こんな内容でした

美里ヒルズでは、モチベーションをアップさせるために何かをやることよりも、結果的にモチベーションが上がったらいいなぁと思いながらやっていることが多いと思います

例えば、それは通称「夢プランプロジェクト」といって夢を叶えるケアプランを作るプロジェクトです

これまでは、定型文のようなケアプラン、決まりとしてあっただけのケアプラン、ご本人の身体状況や認知症の症状を課題として考え、どんなサービスを提供したらいいか、どんなケアをしたらいいか、だけをまとめたケアプランになりがちでした

それだけでなく、障害や加齢に伴い身体が不自由になったり、認知症の症状によって、本人やその家族が諦めてきたこと、行きたかった場所ややり残したことを「夢」と捉え、それをどうやったら叶えることができるかを多職種のチームで考えて、ケアプランにしています

入居者さんのために、どうしたらいいかをチームの皆で一緒に考える時間や、そしてそのプランを実践して、皆で良かったねってチームで分かち合える時間を大切にしています

これに尽きるのだと思っています

もちろん、プランの内容は大なり小なりあるけれど、介護職として身を置いて、入居者さんが喜んでくれることに向き合えて、そしてそれに関われたことを、実践したチームの皆で「良かったね」って分かち合えることで、ここでやってて良かった、役に立てて嬉しいと皆が感じることであり、この経験が結果的にモチベーションを上げることになるのではないでしょうか

こんな感じでお伝えしました

夢プランというのは、私たち美里ヒルズの一例ですが、皆さんの施設でも、ケアプラン等を元にサービス提供した結果や、個人目標やユニット目標を実践した結果を、ただ形式的に評価するのではなく、実践したメンバーの皆と、ちゃんと良かったねって分かち合える機会があることが、職員一人ひとりにとって、かけがえのない有意義な時間になるのだと思います

夢プランについては、また別の機会に詳しく触れてみたいと思います

外発的動機づけと内発的動機づけ

もちろん、モチベーションをあげようとすること自体は、決して悪いことではありませんが、それだけを目的にして考えられた手段であがったモチベーションは長続きしないことが多いようです

では、なぜ長続きしないのか、あらためてモチベーションとはどんなものかを整理しながら考えてみたいと思います

外発的動機づけとは、周りの人が強制的にその行動をするようにすすめたり、賞罰を与えることで行動するように仕向けたり、周りの人が評価を与えることでその評価を目的に行動したりすることをいいます

周囲からの評価や賞罰などを気にして行動に移すため、外部からの刺激に応じた一時的な動機づけに終わってしまう欠点があります

一方で、内発的動機づけとは、他者が見ていようがいまいが、何らの評価や賞罰がなくても、そうしたいと思って行動する動機付けです

これによって行われる行動には深い満足感が伴い長続きするし、多少の困難も創意工夫で乗り越えようとします

それでも、最初は外発的動機づけで行動していたものが、そのうち本人が楽しさを覚えたり、やりがいを覚えたり、本人が創意工夫する等、次第に内発的動機づけに変化していくこともあります

(出典:介護福祉士養成講座5 コミュニケーション技術 介護福祉士養成講座編集委員会 / 中央法規 2019年3月31日発行)

例えば、成果に対する報酬や上司からの評価、昇進や昇給のために頑張るのは、外発的動機づけになり、モチベーションを高めることを目的に考えられたものの多くはこれに該当します

しかしながら、一時的なモチベーションに終わることが多いので、いかに内発的動機づけに変化するようにできるかがポイントになります

それから、部下に仕事のやりがいを感じてもらうためのポイントや、部下のモチベーションアップの秘訣としてよく語られる「ほめる」について、上司や管理者向けのリーダーシップ研修等では、「叱るより褒める」、「部下の褒め方」といったテーマでアドバイスを受けることがよくあります

上司や周りの職員からの承認を受け、部下自身の承認欲求を満たすことは、とっても大切な要素で有効なことではありますが、これも外発的動機づけで終わる可能性が高いことは理解しておかなければいけません

「ほめる」や「承認する」が苦手な皆さんへ

上司からほめてもらえたら嬉しいし、周りから認めてもらえている実感があれば、部下のやる気がおきたり仕事のやりがいにつながったりすることは明確なのですが、上司の立場からすると、何もないのにほめたり承認したりというのを苦手に思っている人もいるかもしれません

そういう皆さんには、部下のためにも自分のためにも、ほめるきっかけ、承認する「きっかけ」となる機会を意識的に作ることも重要だと思っています

私たち美里ヒルズでは、夢プランの取り組みがそのひとつとしてうまく機能しています

でも職員からしたら、ほめてもらうためにやっているわけではないし、周りから認めてもらいたいからやっているわけではない

ただ、介護職員として入居者さんや家族に対して良いことをしたいという思いを形にしたら、結果として成功体験にもつながるし承認欲求も満たすことにもつながった

介護職員は介護でやりがいを感じたい

外発的動機づけから内発的動機づけに自然と変化し、深い満足感を得られることにつながった事例です

モチベーションを高く維持し続けることは難しい

そもそも、モチベーションが高く状態をずーっと維持し続けることって可能なのでしょうか

もちろん個人差はあるでしょうが、みんなが皆そうできる人たちばかりではないように思います

ましてや、モチベーションアップが低くなってはいけないと考えたり、高い状態を維持し続けなくてはいけないと考えすぎるあまり、そのこと自体がストレスになってしまう可能性もあります

まれに、ずーっとモチベーションが高い人もいらっしゃいますが、大抵の人は高いときと低いときを繰り返しながら、やっているのではないでしょうか

高いときばっかりでなく、低いときもあっていい

ある程度の波は当然あると考え、あまりにも低く落ち込んでしまうことのないように注意するのがいい塩梅なのだと思います


そういう意味では、

「モチベーションが低くても最低限の仕事はする、特別なことはできないけど、皆と同じように仕事はちゃんとする」

モチベーションに左右されない人でありたいと思います


最後まで、お付き合いありがとうございました


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世古口正臣@美里ヒルズ施設長
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