葛飾北斎《富嶽三十六景 神奈川沖浪裏》
Googleの検索ボックスに"浮世絵"と放り込んでreturnを叩けば、トップに上がってくるほど、誰もがご存知の超有名作、葛飾北斎『富嶽三十六景』(ふがくさんじゅうろっけい)「神奈川沖浪裏」(かながわおきなみうら)について、じっくり観たいと思います。
大胆すぎる構図。こんな大波が実際に起きていたら大惨事か、サーファーが歓喜するかどちらかでしょう。
さあ、どこから観ていこう?
富嶽三十六景の一枚というからには、富士の山が見える風景画のはず。さてどこにあるかと探していくと、たしかに構図の中心に鎮座されてます。そう、頭に白く雪を被った"This is FUJI-Yama"です。そして、その天下の名峰を飲み込まんとするように、画面いっぱいのグレートウェーブが覆いかぶさっています。
青を基調に、白をかぶる、あれ?それってまるで富士山と同じでは?
波を作りあげるのは、幾つもの曲線。大小様々な弧が連続し、無限にループすることで、視点は一か所に留まることができず、波全体がダイレクトに視界に飛び込んできます。
富嶽三十六景のテーマは富士山だけど、神奈川沖浦の主役は荒れ狂う大波か、といえば、ちょっと待って頂きたい。この中にはまだ、圧倒的な大自然に果敢にも立ち向かっている登場人物がいるではありませんか。
波のまにまに、白波と同化するかのように、海の上を進む漁師たち。舟はそこで泳いでいるのが当然という出で立ちで、まるで海から生まれた、波の双子のきょうだいのよう。
絶景を切り取りつつ、ディフォルメを施すことで、幾何学的なデザインまで落とし込んでいるのですが、それでもなお人々の生活の声が聞こえる風景画に昇華していると思います。
この作品の好きなところは、そのタイトル。そして声に出して読んでも楽しいので、ぜひ。
富嶽三十六景
神奈川沖浪裏
なんかもうかっこいい。漢字の並びが美しくありませんか?三と川、同じ三本線が縦に並んでるあたり、偶然なのか狙ったのか北斎に聞いてみたい。
声に出しても読んでみましょう。
フガク サンジュウ ロッケー
ナカガワ オキ ナミウラ
タイミングよく置かれた濁音、カナガワとナミウラの音の近い感じ。命名した人のセンスは尋常ではありません。
商業作品であり、計算されたデザイン。どうすれば、多くの人々それも一般市民の興味を引くことができるのか。葛飾北斎という稀代の作家のブランド力を最大限に活かすことができるのか。
江戸の浮世絵ファンのみならず、西欧文化も時代を超えて北斎の描いた巨大な波は、観る人々を今も、そしてこれからも飲み込んでいくのでしょう。
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