心構え【エッセイ】六〇〇字(本文)
朝カル「エッセイ講座」の4月のお題、「心構え」。さて、あなたならどんな「心構え」になりますか?
山本圭が先月31日に逝った、と昨日の新聞で知る。高校1年のとき、『若者たち』に夢中になった。「君がゆく道は はてしなく遠い ♪」の主題歌が始まるとテレビの前に正座した。田中邦衛が、長男。圭は三男。知的で、甘いマスクに惹かれた。上京して、俳優座の舞台を何度か観た。享年81歳。10歳違いだったのだ。わずか10年・・・。やはり必要か、そろそろ。「心構え」が。
※
早朝に起き、午前中に仕事。午後、同じ時刻に散歩に出る。彼の姿を見て、時計の針を直したという。ご存知、カントの逸話である。
時間に縛られることなく気ままに過ごしたい、という人は多いようだ。しかし、私は逆だ。65歳で仕事に終止符を打ち、7年。自由の身になったのだが、現役のときよりも、規則正しい。楽なのだ。決めた時刻に、決めたことをする。何をするか、悩む必要がない。
10時には就寝し、8時間寝る。朝食はヨーグルトに果物か、具沢山の味噌汁。午前は、大谷の試合があれば、趣味のエッセイを書くか、読書しながら観る。昼食はとらない。3時には、ウォーキング。速足で8千歩。決めたルートを、回る。自宅近くのスーパーで、その日呑む酒と合う肴を買って、戻る。夜は、映画かナイターを観ながらの、独り酒宴。
カントは、夕食だけだったらしい。かつ、人々との会食を楽しんだ。3年前までは、友人と外食するか、自宅に仲間を集めてポットラックパーティを催すようにしていた。話しながらの食事は、消化にも良いようだ。笑いもあった。来たる日まで元気であり続けるためには、そんな規則正しい生活の心がけが、必須となる。
彼は、「人生の苦労を乗り越えるには、希望・睡眠・笑いが、役に立つ」とも言う。享年、80。当時としては、けっこう長生きの部類だろう。彼も大酒吞みであった。残りの人生、密かな希望はある。睡眠も十分。残るは、会食しながらの、笑い。彼を超えるためにも、早い収束を願う。
(おまけ)
カントは、『永遠平和のために』(1795年)を書いている。フランス革命戦争の最中の時代。そんなかで彼は、こう主張する。
「常備軍は、時とともに全廃されなければならない」
「いかなる国家も、他の国家の体制や統治に、暴力をもって干渉してはならない」
「いかなる国家も、他国との戦争において、将来の平和時における相互間の信頼を不可能にしてしまうような行為をしてはならない」と。
日本国憲法前文とも重なる。
カントは、「永遠平和状態を理念と見なして、そこに向かうことが国家の義務」であるとした。いま起きている戦争に至るまで、実現されていないことになり、単なる夢想家の主張と言うのは容易い。目指さなければ「永遠平和状態」は訪れないのだ。実践しようとする国、人がいないからである。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?