「ふるさと」通信【エッセイ】八〇〇字
北海道に、両親の墓を守る二つ違いの弟がいる。小さい頃から、近所のおばさんなんかは、弟のほうを「お兄ちゃん?」というくらいに老けて見える(態度もデカイ)。だからという訳ではないけども、ほとんどの(なけなしの)相続権を放棄し、「長男」を譲った。
その弟が、午前様で、自宅前で倒れ頭を打ち、緊急手術することに。急性硬膜下血腫。頭部に衝撃が加わり、頭蓋骨の硬膜と脳の間に血腫ができ、取り除いたという。東京も北海道もコロナ感染者数が急増中、駆けつけることも叶わない。だけど幸い、一か月後のいま、車椅子に座るくらいには回復したようだ。
そんななか、弟の名で林檎が送られてきた。毎年十一月に、滝川・江部乙からくる無農薬林檎。倒れる前に、今年も手配してくれていたのだろうと、段ボールを開ける。クッション材として、新聞紙が挟まれていた。いつもは、そのままゴミ箱行きなのだけど、今年は、クチャクチャの新聞紙を、丁寧にのばした。
「北海道新聞」。二〇一七年二月一一日の日付。三年九か月前だったが、入っていた六枚をベランダに持ちだし、懐かしく読み込んでいった。二年前に弟宅で読んで以来だろうか。
地方紙だから当然なのだけど、地元の出来事に多くのスペースを割いている。中学生の除雪ボランティアの紹介、スキーバッジテスト合格者発表、北方領土国後島に初の温泉プールをロシアが完成、と北海道ならではの記事。他の地方紙も同じなのかもだけど、「お悔やみ」に全段を使っている。全道みな親戚って感じ。笑ってしまったのが(被害者に悪いけど・・・)、「雪に生き埋めの救助訓練」。
ショックだったのが、「ふるさと納税昨年過去最低」の記事。現役の時、検討したことはあるが、人気の北海道、他の人がやってくれているだろうと、そのままになっていた。コロナ禍の今年は、さらに厳しくなっているかもしれない。無職ではあるが、なんらかの形で少しは応援できるかな、と思うのだった。