転校生【エッセイ】六〇〇字
小学校時代の話。給食が終わると、男子は、体育館やグランドに走る。しかし、私は週に3、4回は、教室に残る。放課後に、野球の練習があるので、体力を温存するためだ。というのはウソで、残っている女子と遊ぶためというのが、本当のところ。おはじき、あやとり、お手玉など、転校前の学校で培った技を披露し、人気を勝ち取る。授業のベルが鳴っても教室に入れず、廊下から「ヒュー・ヒュー」と口笛を吹き私を冷やかすしかできない男子たち。ドヤ顔(そんな言葉、なかったけど)で見返す、とてもイヤミな生徒だった。しかし、野球部には必ずケンカに強いヤツがいるので、イジメにあうことはなかった。
小学6年まで、北海道の中を4回、転校する。父は、食糧庁(今はない)の検査官。米とか農作物の品質を、等級で判定する。農家にとっては、検査結果が収入に大きく関わるので、農家との癒着を防ぐために、短期間で異動させられるのだ。最短で、9か月の地も。
転校は、とても嫌だった。友達と別れるのが、とても悲しかった。新たな学校への不安も、ある。が、いつしか、自分を納得させる術( すべ )を、身につけることになる。次もきっと、かわいい子がいるだろうし、とか、何らか楽しみになるようなことを、自ら創っていた。
短期の在学と自覚しているから、友達を作るのは極めて、早い。野球が得意だったので、クラブに入り、すぐに友達になる。教室に残り、女子と遊ぶのも、その一環でもあった。