見出し画像

ウォーキング小景(あれこれ)【エッセイ】一二〇〇字

 3時過ぎ、雨が止んだのでウォーキングに出かけた。近くの小学校から低学年の子たちが、狭い歩道を、傘を振りながら走ってくる。<おいおい、あぶねえだろ>と、思っていると、抜かれた高学年と思われる子が、言った。「傘振って遊ぶなあー」と。さすがお兄ちゃん。児童会の委員なんかやっているのだろうか。頼もしい。児童会の委員で思い出した。小学校3年のころだから60年も前のことだけど。朝礼で、委員長の6年生が熱っぽく全生徒に向かって話していた。「このハンカチを落とした子、いませんかあーー。校内に落ちていたのだから、この中に必ずいるはず。自分のハンカチがあるか確認してくださーーい」と。弁舌爽やかに呼びかける。普通は、「ハンカチが〇〇に落ちていました」と、簡単な報告で終わるのだけど、その子は執拗に話を続ける。が、多くは騒いでいるだけで聴こうとはしない。その彼は、きっと、いいリーダーになっただろうね。いや、言葉巧みな詐欺師の可能性だってあるが・・・。
 つい1週間前のこと。外苑東通りの歩道を歩いているとき。50メートル前で、金髪に染めた、170はありそうな背の高い、えらくハデな女が車から降りて、ドアを思いっきり閉める音が聞こえた。なにか叫んでいる。その方向を見ると、男が逆の歩道にいる。「どうすんのよーー!!」と女が。横を通ると運転席にはひとがいない。運転していた男と、その女がケンカでもしたのか、赤信号で車を停めたまま男も外に出て反対の歩道へ。女はなにか叫び続けている。ヒステリーは止まらない。そのうちに青になり、片側1車線の道で何台か停まっている。さすがに男が車に戻り動かそうとする。すると、その女は、置いて行かれると思ったのか、動きはじめた車をバッグや手で叩きながら狂ったように叫んでいる。
「?△☆▲※◎★●○▼※△☆▲※◎★●△☆▲※◎★●!!」
 なにを言っているのか、わからん。男は、道路わきに停めようと動かしただけなのだが。相手にしていられないと、そこで観察は止めにした。
 そのあと早大通りに曲がり、しばらく歩き続けていると、自転車に乗る小学低学年の男の子が、信号が点滅しているうちに横断歩道を渡った。すると、自転車を止め、後ろを振り向くではないか。<ははあ~ん。信号無視をするかどうかを見てやがるんだな。このガキ>と読んだ。いつもなら、子どもの前で信号無視はしないのが、信条。しかし、その子が何を思って停まって振り向いたかを試してやろうと、脇道からの車を確認し、渡る。すると、予想通りに、言った。「赤だよーー!」と。私は、ニタっとして、左手を挙げて、「ゴメン! 悪りぃ!!」と謝る。すると、その子が発した言葉が、「いいよー」。なんとも可愛い。そして、先に走って行った。意外にあっけないお返事だったので、おもわず笑ってしまった。

画像1

(ガキ白バイ警察官に厳重注意された現場。ちょうど自転車が走っている位置で張っていた)

 傘を振る子を注意した子や、拾得物について熱く呼びかけた上級生と、似たところがある子だと思った。だが、将来は、張り込み専任の白バイの警察官だろうな、きっと。<あの金髪の女のようなヤツに捕まるなよ>

(おまけ)
わが集合住宅での“挨拶”の話を何回か書きました。最近、気づいたことがあります。おじぎをしてから挨拶すると、8割5分ぐらいは戻ってくることを。そうだよね、いきなり挨拶されても、言葉が詰まるひともいるかもね。おじぎによって、1拍間ができるので、お返ししようと、心の準備ができる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?