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Tokyo 2020の先にあるファンビジネスの未来

スポーツビジネスに携わる中で、「オリンピック後のスポーツ界ってどうなるの?」と良く聞かれます。傍目には不況になる要素ばかり…

公的資金の大幅減額大会運営費用1.8兆円スポーツ庁2020年度予算も五輪強化が柱
・回収困難な巨額スポンサーシップマネーの喪失:五輪史上最多77社、国内スポンサーだけで3,200億円その投資がリターン目的ではなく、義務感によるものだったという悲観的な声
・先行き不透明感が漂うマクロ経済環境…

しかし、このようなネガティブ要素を上回る大きな可能性がこれからのスポーツ界に秘めていることを確信しています。その鍵となるのが、テクノロジーによるファン体験の進化ファンコミュニティです。

このnoteでは、私が世界のトップスポーツリーグ・クラブや、海外のスポーツスタートアップと関わっていく中で学んだことを通じて、「スポーツファン体験」の進化、事業可能性について紹介していきます。初回のnoteで紹介した弊社Fanaticsの事業紹介もその一環です。

また、所属するコルクラボでの学びを通じて、日本(アジア)独自のファンコミュニティのあり方についてもアウトプットして行きます。

私が「ファン」事業に拘る理由

さて、まずはスポーツビジネス事業の中で「ファン」領域に着目する理由について個人的な背景を含めて説明します。

1. 自分自身がアスリートではなかった

小学生の頃は1年だけ滞在したアメリカのリトルリーグで野球、中学ではバスケットボール部でプレーしていましたが、高校・大学時代は丸7年間、野球部の「マネージャー」として、運営側として携わりました。

今思えば全くマネージャー向きの性格ではなかったのですが(大雑把、気配りできない、面倒くさがり屋)、チームの強化サポート以上に、部の財政状況はどうしたら良くなるか、どんな仕組みにしたら六大学野球は盛り上がるのかなど、事業側のことをよく考えていました。

(早慶戦100周年記念試合「オール早慶戦」で高橋由伸先輩と)

アスリートの中には、引退したらその競技を全く観なくなる人も少なくありません。その点、私は当初から運営側であったこともあり、エンタメ対象としての野球への思い入れは誰よりも強いと自負しています。ちなみに、野球に限らず、バスケ、サッカー、テニス、ゴルフ、ラグビー、アメフト、バドミントン、卓球など、球技を中心に何でもフォローしています。ESPN(アメリカのスポーツ専用ケーブル局)を垂れ流して過ごすのがアメリカ滞在中の楽しみの1つです。「ファン」としてのスポーツ・エンターテインメントに賭ける想いの強さが、1つ目の理由です。

2. 平成はおろか、昭和時代のサービスレベル

スポーツ観戦は数ある娯楽の1つに過ぎません。にもかかわらず、

・チケット発売開始日前から徹夜で窓口に並ばされる
・スマホで購入したのに、コンビニ発券させられた上に手数料は取られる
・自由席のため、良い場所を確保するために開場2時間前から並ぶ
・的屋みたいな売り場でグッズが売られ、品揃えも限定的
・オンラインでグッズ購入しても届くのは5日後
・スタジアムでは現金しか使えない

…これらは令和時代の顧客サービスレベルではないことは明らかなのですが、
「うちの競技を観に来るファンは今のやり方で満足している」
「ファンが1人あたり使えるお金は限られている。サービス改善しても収益増には繋がらない」
「スポーツで稼ぎ過ぎるのは良くない」
と思考停止に陥ってしまっているコンテンツホルダーは少なくありません。

もちろん、プロ野球であればホークスやベイスターズのようにスタジアム改修に大きく投資をしたり、イーグルスのように一気にキャッシュレス化を進めるといった先進事例も出てきています。新サービスが収益増に繋がっているという結果も出てきているようです。

他でも、ここ数年のJリーグの公式アプリの目覚ましい進化や社会連携の取り組み、BリーグのSNS活用やスマホファーストのデジタル施策がいずれもリーグ主導で進んでいます。ただ、まだまだ業界全体としては、新しいサービスを創り出すプレイヤーの数も質もアメリカと大きな差があります。テクノロジーの力で、ファン体験は確実にまだまだ良くる。これが私がファン事業に拘る2つ目の理由です。

3. ファンコミュニティモデルに大きな可能性

スポーツチームとファンの関係は、昔から大きく進化していません。コミュニケーション手段こそ、メルマガからアプリ・ソーシャルメディア発達により多少インタラクティブになりましたが、程度の差はあれ、あくまでもチームからファンという1対nの関係です。

ファンがチームを応援する理由は「地元チームだから」「親が応援していたから」「好きな選手がいるから」などなど、様々です。毎試合現地で観戦する超コアファンから、連れて行かれれば応援する程度のライトファンなど「ファン度」も異なります。1対nのマスコミュニケーションを最適化したとしても、せいぜいメールが多少ターゲティングされるぐらいで限界があります。

中央集権的な「ファンクラブ」モデルから、分散的な「ファンコミュニティ」を中心とした構造への転換

これが令和時代のスポーツファンサービスを考える上でのキーワードとなると考えます。ちなみに、グローバルに見ても、アメリカはファンクラブすら一般的でなく、ファンコミュニティを軸とした仕組みというのはまだ大きくありません。欧州の名門クラブではレアルマドリードやバルセロナの「ペーニャ」というクラブ公認の地域ファンコミュニティがありますが、まだ申込方法がFax(!)だったりと、今後テクノロジー活用により劇的に進化できるのではないかと考えています。

スポーツにおけるファンコミュニティモデルを確立したい。これが3つ目の理由であり、コミュニティのあり方について学ぶ場であるコルクラボに入会したきっかけです。今後深めて行きます。

ファン領域においてアジアを主導していけば日本のスポーツ界の未来は明るい

アジアにおける日本のスポーツ界の位置付けについては今後色々な角度で紹介していきますが、私が中国(CSL、CBA)、韓国(KBO)、インド(IPL)の状況を聞く限り、チケッティング、ファンクラブ、マーチャンダイジング、スポンサーシップ含めたスポーツビジネスの殆どの要素で日本の方が進んでいると確信しています。

JリーグもBリーグもアジア戦略が大事なことを発表していますが、競技力でアジアトップになると同時に、ビジネス面でもアジアのスポーツビジネス界におけるロールモデルを目指せる位置にあります。コンテンツホルダー側でもサービス側でも人材交流が進めば、日本発のファン向けサービスがスタンダードとなってスケールする可能性も出てくるでしょう。

2020年以降のアジアのスポーツ界をファンビジネスで切り拓く。これによって日本のスポーツ界に希望をもたらしたいと思います。


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川名 正憲/ファナティクス東アジア代表
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