見出し画像

優秀な日本人を日本で働きたいと思わせるには

<働きやすさは改善>
 
社員口コミサイト運営のオープンワークは、国内主要企業約6万社の1280万件超の投稿データを保有し、2012年から2021年に投稿された135万件の口コミ情報を分析しました。2021年の残業時間は全業種平均で月24時間で2012年の46時間から半減しました。コロナの影響で『旅行・ホテル』や『小売』などで6割超と減少幅が大きく、有給休暇の消化率も41%から60%に高まりました。
テレワークが普及するにつれ、本人の同意がない転居を伴う転勤を撤廃する企業が増えてきています。育児や介護、共働きなど入社後の生活環境の変化に柔軟に対応し、優秀な人材の確保と定着を図ります。 
 
厚労省は2022/6/27、副業・兼業の促進に関する指針の改定案を労働政策審議会に報告しました。企業に対し従業員の副業・兼業を認めているかどうか、認めている場合の条件などをホームページで公表するように促します。  
 
経団連が2021年秋に、会員企業向けにエンゲージメント向上のために重点的に取り組んでいる政策を聞いたところ、『時間・場所にとらわれない柔軟な働き方の推進』が最多の43.4%、『企業理念・事業目的の社員との共有』が41.7%、『ダイバーシティ&インクルージョンの推進』が34.4%でした。 
 
<働く魅力がない日本>

OECDは2019年、賃金や就業機会、社会の寛容度などの指標から各国の人材誘致指数を算出しました。上位は北欧諸国で特にスウェーデンが0.63と高いです。移民流入への制限が少なく外国人が広く就労機会を得られます。自国民向けに充実しているリスキリングの機会を移民も平等に利用でき、キャリア展望を描きやすいです。国がスタートアップ育成などで外国人を生かす活かす姿勢を打ち出し、呼応するように人材が集まります。時間当たり労働生産性は70.3ドルと日本の47.4ドルを約5割も上回ります。米国の誘致指数も0.59と高水準です。外国人に昇進の機会が開かれ、高い賃金を得るチャンスも多いことが人材を引き寄せます。アメリカの時間当たり生産性は71.5ドルとスウェーデンを上回ります。
日本は0.5で先進国平均を0.04ポイント下回り、33カ国中25位です。また優れた人材の呼び込みに関連する6つの指標『移民受け入れ政策』『治安・安全性』『社会の寛容性』『外国人の就業率』『実質賃金』『所得税の低さ』について先進国34カ国を比べたところ、日本は『治安・安全性』のスコアは高いが、残り5つの指標はいずれも先進国平均を下回りました。日本の実質賃金は平均38000ドルと最も高いアメリカの56%の水準です。物価は安いが報酬面で他国に見劣りし、高度な人材の獲得には不利に働きます。
 
各国の研究者がまとめた『移民統合政策指数』を見ると、日本は一部途上国を含めた56カ国中35位です。 
米カリフォルニア大の研究者等によると、高度な技能や知識を持つ移民の割合が1ポイント増えた都市では、大卒労働者の賃金が8%上昇しました。 
 
厚労省が2022/7/5に発表した2022年5月の毎月勤労統計調査によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比1.8%減と2ヵ月連続で下落しました。物価高は続くとみられており、当面は実質賃金がマイナスで推移する見込みです。 
 
<昇進、昇格に魅力がない日本>
 
パーソル総合研究所が2019年、アジアの14カ国で実施した調査では、管理職になりたい人の割合は日本が21%で最も低く、インドの86%、中国の74%、韓国の60%と大きな差がつきました。
リクルートマネージメントソリューションズが2021年、主要企業の人事担当者に人材配置の課題を尋ねたところ、『昇進・昇格に魅力を感じない人』の増加が最多の57%でした。
SMBCコンサルティングが2022年度の新入社員に今後目指すキャリアを聞いた調査では、『専門的知識・スキルを持つスペシャリスト』が最多の34%で、『幅広い知識・スキルを持つゼネラリスト』の27%を上回りました。 
 
<優秀な日本人が日本で働きたいと思わせるのが第一歩>
 
上記から分かることはこの30年日本は過重労働等の解消に向けて、働きやすい環境を整えてきました。その結果、一般の人にとってみては働きやすい環境が整ったのかもしれません。一方で生産性向上に重きを置かなかったため、賃金は上がりませんでした。また日本人だけで何とかしようという気持ちが強すぎたためダイバーシティは育ちませんでした。そのためできる人が働くには物足りない環境となってしまったのかもしれません。
野球でもプロ野球の上が大リーグで、優秀な選手は大リーグを目指すように、社会人においても優秀な人は海外を目指すようになりました。その結果、日本が強みとしていた技術等は中国、韓国等に流れ、日本製品の優位性は失われました。 
賃金や権限等で魅力があれば管理職になりたい人が増えるはずですが、日本では昭和時代の年功序列をいまだに引きずり、管理職になったとしても賃金も自分の裁量も増えず、責任だけが重くなるのが現状です。その結果がパーソルの調査結果に表れています。
 
企業の優位性は技術力等もありますが、私は人に尽きると思います。優秀な人をどれだけ集められるか、そして企業にとどめておけるかが競争優位性の源泉になると思われます。JAPAN AS No1を復活させるためには、第一に優秀な日本人をどれだけ日本企業に留めておけるかが鍵になると思います。その上で優秀な外国人材を集めることが順だと思います。施策等では海外の優秀な人材を集めることに焦点が当たりがちですが、日本人の優秀な人をいかに留めるかという議論は聞いたことがありません。 
日本人にとって、海外で働くよりも日本で働く方が非常に楽です。本当は優秀な日本人もきちんとした権限と報酬、目標、大義があれば日本企業で働いてくれるはずです。まずはこの優秀な日本人を留めることに注力すべきだと考えます。
 
今海外の外資で働いている優秀な日本人が、日本企業で管理職として働いてもらえたら日本は非常に活性化されると思います。私も日本人です。国籍で縛るつもりはありませんが、日本人はやはり日本が復興、復権してくれることが嬉しいと思うはずです。どうやったら日本企業の管理職が優秀な人材で埋まるのか?それを議論した上で予算等のお金をつけて実行してみたら、きっと日本は変わる気がします。参院選に勝つためにお金をばらまくのではなく、どうやったら日本の将来が明るくなるのかというのを真剣に考える時期だと思います。 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?