【読書メモ】マルクス・ガブリエルの哲学: ポスト現代思想の射程
本書では、マルクスがブルリエルの未邦訳の主著3冊を解説し、その哲学のアウトラインと射程を考えている。
読んで感じるたのは、(ポストモダンというより観念論や実存主義的なことも含め)哲学的な背景や位置づけもある程度わかるが、どうしても、あってほしい社会の基盤となる「思想」をまとめているよう思える。
全体に、ポピュリズムや専制(非自由主義)や環境保全など大きな社会問題の解決をねらった、具体的な哲学(思想?)のモデルであるかもしれないとおもった。新しい実在論として思弁的実在論などと対比されることが多いように思うが、むしろこの哲学は正義論などの政治哲学の系譜に置かれるものではないだろうか。
ただ、どうしてもひかっかるのは、道徳的事実は存在するというテーゼで、存在することまでは良いが、人間にとっての共通道徳があるという主張まで踏み込んでおり、そこまで行くと納得できなかった。
どうやら過去の歴史をみれば当然あるといようなロジック?ロールズと同じロジックにおもえるが、ロールズ自体は、重なり合う合意の可能性にまで、トーンダウンしているように思うので、あらためて主張されたときに、過去議論との違いは理解できなかった。
書籍①諸領野:
意義の領野(他書では意味の場と呼ばれている)が果てしなく増殖する平坦な存在論の主張で、そこには、それぞれの意義の上下関係などの階層性は認めないという主張。これは、形而上学の打破ともいえる。
書籍②フィクション論:
芸術的フィクションを題材に、意義の領野どうしが、衝突することで生まれる社会的事実が、それぞれの意義の領野同士が改訂され折り合いをつける道筋の説明。これは、違う領野(価値観など)をもって生きる人の連帯?の可能性を示していると思われる。
書籍③進歩:
資源を奪い合うパワーゲームという社会モデルに対して、相手の夢の見方を想像することで道徳的に行為するという見方に帰着する。(想像することの前提として道徳自体は共通的なものとして存在する前提があるとおもわれる)