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「除去土壌」は「低レベル放射性廃棄物」
環境省が「除去土壌」(福島第一原発の爆発と共に拡散し、土壌に固着して「放射能汚染土」となったものを除去して集めたもの)に関する会議を乱発している。
その資料を手繰ると、要するに「除去土壌」は「低レベル放射性廃棄物」であることを環境省は十分に認識していることが、わかった。
再生利用したいばかりに、最終処分する量を減らしたいばかりに、「低レベル放射性廃棄物」を再利用するとは言えないばかりに、「除去土壌の復興再生利用」と表現しようとしているのだ。
会議乱発
2025年1月25日現在、「除去土壌」の再利用の基準について、環境省は放射線審議会には諮問しっぱなしで(既報)まだ答申ももらっていない。しかし、公衆に対する一方通行型のパブリックコメント(既報)は始めた。それと同時並行で同じテーマの会議を乱発している。前代未聞とも言える強引な進行だ。
2025年1月23日 13:30~15:30
中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会
2025年1月23日 16:00~18:00
除去土壌の処分に関する検討チーム会合
前者は福島県内で除去された汚染土壌、後者は福島県外(岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉)で除去された汚染土壌に関する会議だ。
環境省は「除去土壌」と称しながら、発生地で扱いを次のように区別しており、会議体も違う。
・福島県内で除去したものは福島県内外で再利用して、残りを県外で最終処分
・福島県外で除去したものは発生自治体内で最終処分
私は原子力規制委員会の伊方原発の視察等(24日)に合わせて、23日に佐田岬半島の放射線防護施設を見て回っていたので、どちらの会議も取材できなかった。しかし、資料は公開されている。
地域社会における社会的受容の海外事例?
そこで、前者の資料を見ていて「はて?」と思ったものがあった。環境省による「論点整理・論点に対する考え方(案)」P.11で論点「地域社会における社会的受容性の確保の観点からの最終処分の事業実施に係る検討事項について」で、「他の事例を踏まえると」と、海外の事例を挙げている。
![](https://assets.st-note.com/img/1737790931-J8EWkfub1OdDlCce6tHp3UA4.png?width=1200)
(2025年1月23日 環境省環境再生・資源循環局) を抜粋の上、青でハイライト
海外に除去土壌なんてないのに
「はて?」と思ったのは、韓国も英国もベルギーも、除去土壌なんてない。どういうことだろうか?上のハイライトした部分を抜き出すと以下の通り。
事業主体が自治体を公募し、応募した自治体の中から立地自治体を選定し決定する方式(例:韓国)
事業主体が関心を有する自治体を公募し、関心表明を行った自治体の全てと協議・調整の上、立地地点を決定する方式(例:英国(2008年~))
事業主体が自治体を抽出・選定し、立地を申し入れ、自治体の合意を得る方式(例:英国(~1997年))
事業主体が協議したい自治体を抽出し、協議を申し入れ、全ての自治体との協議・調整の上、選定された自治体の合意を得る方式(例:ベルギー)
こんなやり方で立地を決定しているというのだが、なんのことだろうか?
海外事例は「低レベル放射性廃棄物処分施設」の例だった
「埋設施設設置に関する検討結果のとりまとめ」(JAEA)を踏まえた、と書かれているので、検索するとJAEA(日本原子力研究開発機構)が2013年11月11日にまとめた検討結果と、それを2014年2月17日に文科省の審議会で報告した資料がヒットした。
目を通してビックリというか、やっぱりというか、それらは「低レベル放射性廃棄物処分施設」の立地の決定プロセスに関するものだった。JAEAは「低レベル放射性廃棄物」を以下のように定義してとりまとめている。
原子力機構の業務に伴って発生した放射性廃棄物(日本原子力研究所及び核燃料 サイクル開発機構から承継した放射性廃棄物を含む)
原子力機構以外の研究機関、大学、民間企業、医療機関等の原子力利用によって発生した低レベル放射性廃棄物であり、これらの発生者から原子力機構が埋設処分の委託を受けた放射性廃棄物
いずれにせよ、とりまとめるにあたって「先行事例」(1-47〜1-52)として出しているのが、先述の韓国、英国、ベルギーの例だ。以下は部分的な抜粋(ハイライトは筆者によるもの)。
![](https://assets.st-note.com/img/1737796913-ldG5Y2Ct9oZ613JaNxOpB0yT.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1737796704-W9xh2PNtaLS1sRHgz30k8bVX.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1737796598-E2kVGxr0PJcq1YaBuWwZ9Obf.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1737796832-G1HCtLypUMFsX6bQRTVeZW75.png?width=1200)
環境省が「除去土壌」と称しているものは、海外では「低・中レベル放射性廃棄物」として扱われているものであると、環境省は認識しているのだ。
「論点整理・論点に対する考え方(案)」では、「除去土壌」の復興再生利用と最終処分を社会に受容してもらうための留意事項は、海外の「低・中レベル放射性廃棄物」の処分場の事例を踏まえるというのだ。
地域参加の考え方は参考にせず、基準案にも盛り込まず
もう一つ、指摘しておきたいのは、JAEAのまとめは低レベル放射性廃棄物の埋設施設の立地基準と立地手順に関する事項の検討結果で、地域参加の考え方を取り入れた立地選定方策も含まれていることだ。
しかし、今回、パブコメにかかっている除去土壌を再利用する基準等を含む規則案や告示案には、この部分は活かされていない。
(こちらでも書いたが、環境省はIAEAの「地域住民や市町村などの利害関係者と協議して決定することを制度に明記する」も活かしていない)。
「言うだけならタダ」の感覚か?
環境省は、JAEAやIAEAの知見をパブコメ中の規則案や告示案に活かさない一方で、「論点整理・論点に対する考え方(案)」には、笑ってしまうほど「ステークホルダー」という言葉が連呼されている(以下、ハイライト部分は筆者による)。
![](https://assets.st-note.com/img/1737797632-lI3y7sZmYGFPRXNBCT8tqxkS.png?width=1200)
地域住民を含むステークホルダーの参加については、法的拘束力のある法律やこれから定めようとしている政省令(現在出している規則案や告示案)には含めず、具体的には「2025年度以降に議論する」(「論点整理・論点に対する考え方(案)」P.7、P10~13、P17など)としか書かれていない。考え方として言うだけならタダだという感覚なのか。地域住民の扱いをあまりにも軽んじている。
【タイトル画像】
2025年1月23日 13:30~15:30
中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会
2025年1月23日 16:00~18:00
除去土壌の処分に関する検討チーム会合
のサイトを筆者がコラージュ。