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技術力が低下した中で運転される高浜原発

関西電力の高浜原発1号機〜4号機は49歳、48歳、39歳、38歳と4基すべてが原則「40年」とされた運転期間を過ぎたか、1〜2年で達する「老朽原発」だ。その全ての再稼働が認められているが、3月27日に原子力規制庁が行った報告で、それらは、社員らの技術力が低下した中で運転されていると分かった。

上段の数字は出力(万kW)、下段が年数 。
経産省「原子力発電所の現状」2024年1月24日時点

十分安全が確保できない事案が1年で4件

3月27日の原子力規制委員会で行われた報告は、高浜原発3号機で2022年7月から2023年6月までに起きた「保安規定違反」まではいかないが、十分安全が確保できる設備や性能水準を満たしていない事案4件発生したことへの追加検査の報告だ。(原発業界ではそういう事案を「運転上の制限からの逸脱」略して「LCO(Limiting Condition of Operation)逸脱」と呼ぶ。)

追加検査の結果

このLCO逸脱を「事業者が行う安全活動に軽微な劣化がある」状態(第2区分)だとして、規制庁が「追加検査」を行ない、その結果、関西電力が自力で改善が見込める状態になったと結論し、原子力規制委員会がそれを了承した。

しかし、そもそもLCO逸脱があっても原発を止めていたわけでもない。書類上、「第2区分」から「第1区分」に変更となるだけだ。

2024年3月27日原子力規制庁「関西電力高浜発電所3号機における追加検査の結果及び対応区分の変更

なぜLCO逸脱が起きたのか、根本原因

問題は、なぜ4件のLCO逸脱が起きたのかだ。

報告書には、その「根本原因」として「組織におけるリスク管理の弱さ」、関西電力社員の技術力低下」、「協力会社員の技術力低下」など5つが書かれ、社員たちの技術力低下については、「4基の再稼働を通じて机上で資料を作成する能力は向上したが、現場に行くことができなかった」とか「ベテラン層の退職やプラント長期停止に伴い、現場の作業経験が不足していた」旨が書かれていた。

「士気が下がる」という内向きな問題か?

ところが、委員会では杉山委員が、「関西電力社員の技術力低下」、「協力会社員の技術力低下」について、「技術力低下が根本原因ではなく(略)、技術力の低下をもたらした状況が根本原因だった。(略)低下をもたらした状況とか書かないと(略)、頑張っている現場の人たちの士気が下がる」と指摘した。

実は12件

この追加検査報告には「同時期に」高浜原発で起きた他のLCO逸脱(重大事故等対処設備(SA)や設計基準事故対処設備(DB))12件が書かれている。緑(影響が限定的)と分類されたものが大半だが、4基で頻繁に起きていることが気になる。

2024年3月27日原子力規制庁
関西電力高浜発電所3号機における追加検査の結果及び対応区分の変更」P15

そこで会見では、老朽化した多号機サイトの規制の必要性について聞いた。

○記者 (略)今日は関西電力社員の技術力低下と協力会社社員の技術力低下というのが根本原因の五つのうちの二つに挙げられたということだと思いますが、これは一住民というか、国民としては不安を覚えましたが、委員長はどのように受け止めておられるでしょうか。
○山中委員長 今回の追加検査の中で確認できた事項として、関西電力社員の技術力低下、それと協力会社の社員の技術力低下というところが要因として上がってきたということでございまして、これは私自身も一要因だろうなというふうに思っております。
 ただ、その大本にあるところというのは、今日ちょっと議論の中で確認をさせていただきましたけれども、やはり高浜発電所の特有の事情といいますか、非常に作業自身が混み合っていた状況にあって、要員不足のところもあったかという、それが根本的な原因となって、技術力の低下というような部分も現れてきたという、そういう解釈でございます。

○記者 高浜原発は4基全てがもうすぐ40年超えになってしまうわけで、人間でいうと、例えば全員70歳の原発だと。あと20年オーケーで、90歳まで働けまっせと。さらに、止まっている間、眠っている間は老化しないでしょうといって100歳ぐらいまで使いたいみたいな話が今進行していると思うのですけれども、冗談抜きで原発の話になりますと、老朽原発4基を、技術力が低下した中で運転されているということが点検で分かったというのは非常によいことだとは思うのですね。
 点検の結果どうするかということが重要だと思うので、例えば4基同時に動かすということは禁止するとか、そういった、同じ敷地内でたくさん建っている原発を同時に動かすことに対する規制なども必要になってきているのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○山中委員長 マサノさんの御意見ですよね、それはね。あくまでも今回の検査の結果現れてきた原因として六つ挙げられてきた。そこについては、個別に改善をしていってもらう。(略)4基を、例えば2基にしなさいというような、そういうことを今指示しているわけではございませんし、そんなことは考えていないというところです。

○記者 前委員長の更田委員長の時代に、たしか一つの敷地内でたくさんの原発が建っていることについての規制というのを考えていくべきかもしれないというようなことを御発言にされていたことがあるのですが、ですので、私の意見ではあるのですけども、前委員長もそういった発言がありましたので聞いたのですが、山中委員長はそういった必要性は全くないとお考えでしょうか。
○山中委員長 前委員長が多号機サイトの問題点について、いろいろな発言をされているということは承知しておりますし、私も、多号機サイトというものは全く無条件に問題がないかというと、それについては検討しなければならない事項であるということは考えておりますし、審査の中で、いわゆる多号機サイトの条件というのは、きちんと見れているというふうには考えております。

原子力規制委員会委員長定例会見2024年3月27日

老朽原発の4基同時運転について

この日は、原子力災害対策指針の件他についても聞いたので、この件はここまでにした。しかし、高経年化が進行する「高浜原発」4基を、技術力が低下した中で運転することの問題意識は提起できた。

山中委員長もまた、多号機サイトが「無条件に問題がないか」は検討しなければならないとの認識があることは確かめられた。ただし、審査の中で、「多号機サイトの条件はきちんと見ている」ことについては、どういうことなのか、確認しなければと思っている。

折しも、高浜原発および美浜原発の差し止めを求めた住民の仮処分申請を、福井地裁が却下したニュースが入ってきた。

 【タイトル写真】

早咲きの桜越しに写した原子力規制委員会の入るビル(2024年3月27日撮影)


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