そのGX投資はドブに捨てることにならないか? #グリーンウォッシュ
岸田文雄内閣総理大臣の一存でできたGX実行会議において、国民の参加がないまま、今後10年間で150兆円超の投資が左右される事態が進行しつつある。
GX実行会議が「実行」してきたこと
岸田文雄内閣総理大臣の一存で設置されたGX実行会議が5月13日に開催された。会議は非公開、議事録は後日公開、国民が参加できる機会は用意されていない(GX実行会議運営要領)。構成は以下の通り。
2022年内閣総理大臣決裁から2023年GX推進法成立まで
2022年7月、第1回GX実行会議が開催され、原発回帰の流れができた。その裏舞台で経産省は原子力規制委員会が持っていた原発の「運転期間」延長権限の奪取を画策していた。
2023年通常国会で、それを実現するGX脱炭素関連法(束ね法)と同時に、似た名前のGX推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)が成立した。今日は後者、GX推進法に沿って、何が起きているのかについてだ。
「GX推進機構」の設立認可
2024年4月19日、このGX推進法に基づいてGX推進機構(脱炭素成長型経済構造移行推進機構)の設立が経産大臣により認可された。GX推進法(第27条)では発起人は「専門的な知識と経験を有する者3人以上」とされた。
実行会議”有識者”が「GX推進機構」発起人
なんのことはない。内定した発起人4人のうち3人がGX実行会議メンバー。GX実行会議の地位と名誉を得てきた人々が、そのままGX推進機構の発起人となった。
次に8人以上の運営委員(法第33条)も決定していくが、それもまた利益相反甚だしい構成になるのかと訝る。7月1日の業務開始を目指すという。
今後10年間で150兆円超
このGX推進機構は、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行を推進」(法第20条)することになっている。「今後10年間で150兆円超のGX投資を実現」するための組織だ。問題は投資が「脱炭素成長型経済構造」(グリーン)への「移行」(トランスフォーメーション)を本当に促すことになるのかだ。
GX推進機構の業務の一つは金融支援=政府による借金肩代わり
GX推進機構は数々の業務(法第54条)が任される。問題視されている一つはGXを推進する事業への債務保証(法第57条)だ。
簡単にいえば、ある事業者が「GX投資」のために金融機関から借金をする際、返済不能となるリスクが伴う。リスク大となれば、金融機関は貸し渋る。そこで、失敗したら政府が借金を肩代わりしますよと政府保証(法第66条)すれば、事業者も銀行もハッピーで融資が進み、「150兆円超のGX投資」が進むかもしれない。
しかし問題がある。GX推進機構に金融支援業務をさせる基準(支援基準)は、7月1日の業務開始までに経産省が決めるが、経産省の説明や支援基準案(下記)を見聞する限り、グリーンへの移行を妨げるのではないかと危惧されるのだ。
支援対象となる脱炭素電源から、原子力も火力も排除されていない。
民間金融機関等が取り切れないリスクを補完するとされるが、たとえば、経済合理性を失った原発事業に投資することは本来、投資されるべき脱炭素産業への移行を遅らせる。
失敗すれば、政府(国民の税金)の負担となる。
温室効果ガスの削減効果が数値基準として示されておらず、石炭火力発電所などが水素やアンモニア混焼で推進され、脱炭素に寄与しない。
生物多様性など環境影響や住民参画なき社会影響の排除といった事柄も基準には見受けられない。
今後10年にわたる150兆円超の投資と国民の生活にかかわることでありながら、支援基準の策定過程に、国民の参加プロセスが皆無で、非公開の場で有識者に聞いてきく。パブコメすら行われない。
透明性の低い産官学の仲良しクラブが、グリーン・トランスフォーメーションの名前を冠して、前時代的な、護送船団方式で、経済合理性のない、旧態依然の産業構造を維持するグリーン・ウォッシュを展開する。国民の税金をドブに捨てて、脱炭素成長型経済構造への移行の妨げになるのではないか。そう指摘されている。
【タイトル写真】
GX実行会議(2024年5月13日総理の一日より)
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