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高浜3、4号機の運転期間延長が意味するところ
高浜原発3、4号機(関西電力)の延命を2024年5月29日、原子力規制委員会は認めた。
1つのサイトに4基の老朽原発
これで、福島第一原発事故後に「原則40年」と規制した運転期間を超える原発が、高浜原発では、1号 49歳、2号 48歳、3号 39歳、4号 38歳と、1つのサイトに4基の老朽原発が集中立地することになる。
全国の原発で運転期間延長が認可された原発はこれで8基。延長申請に対する認可率は「100%」(5月29日会見録)だ。
2025年6月以降は「延長認可」は経産省の仕事に
この運転期間延長の「認可」の手続きは、昨年、国会が成立させたGX脱炭素電源法(以後、GX束ね法)で、2025年6月以降、原発推進官庁である経産省に移る。認可要件は「非化石エネルギー源」の促進や「電気の安定供給」(改正電気事業法第27条の29の2(GX束ね法の新旧対照表P6)といった却下されるわけのない形式的なものだ。また、新規制基準の審査などで止まっていた期間は除外され、60年超の運転が可能となる。
2025年6月以降は「劣化の管理」が原子力規制委の仕事に
2025年6月以降は原発事業者が「長期施設管理計画」を作り、原子力規制委員会の認可を受ける(GX束ね法の新旧対照表P25)。運転開始から30年超の運転をするなら10年以内毎に「劣化に関する技術的な評価」を受ける。
今回、高浜原発3、4号機が受けた運転延長認可は、現在の原子炉等規制法に基づくもの。2025年6月以降には今の制度でとったデータを「そのまま利用することができる」(山中伸介原子力規制委員長、5月29日会見録)という。メディアや国民が監視しなければスルスルといく。
劣化が管理される劣化6事象とは
GX束ね法は法案審議の前に、内部告発も起きて世論が大きく盛り上がった(一例はこちら)こともあり、原子力規制庁は、わかりやすく説明する資料「長期施設管理計画の認可制度に関するQ&A」(2023年7月13日)を作った。
その中で、老朽原発の長期施設管理計画を作る上で「必ず評価を行う」6事象についての説明がある。この説明は「わかりやすく説明する」と原子力規制庁の前総務課長が率先して作ったが、まだ「わかりにくい」と言わざるを得ない。
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高浜原発3、4号機の老朽化6事象
今回、それと横並びでわかりにくい言葉が、高浜原発3、4号機の延長認可を認める文書の中で以下のように使われている。(2024年5月29日資料2「関西電力株式会社高浜発電所3号炉及び4号炉の運転期間延長認可及び高経年化技術評価等に係る原子炉施設保安規定変更認可 」P1~2)
低サイクル疲労、
中性子照射脆化、
照射誘起型応力腐食割れ、
2相ステンレス鋼の熱時効、
電気・計装設備の絶縁低下、
コンクリート構造物の強度低下
これらを、以前つくられた資料も合わせて(順不同だが)、少しだけ分かりやすく言えば、以下の通り。
原子炉容器が中性子照射で脆くなっていないか、
繰り返し力がかかり金属疲労していないか、
腐食環境下でボルトなどにひび割れが生じ易い状態か、
配管が水流などによる侵食やさびが発生し破断が起きないか、
ケーブルなどの電気設備で絶縁低下は起きていないか、
コンクリート強度が低下していないか
そして、関西電力は、これらについて高浜3号機で次のように、高浜4号機はそのコピペで施設管理方針が定め、原子力規制委員会は5月29日にそれをよしとした。
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5月29日会見で、「この6事象だけで大丈夫なのでしょうか」と聞くと、質問がわかりにくいと聞き返され、聞き直した。
○記者 高経年化技術評価への影響を確認するとか、蒸気発生器については取替計画に基づき取替えを実施する、これを中長期にわたって行うとかいうことが例えば書いてあるのですけれども、それをよしということで今回延長を認められたと思うのですが、この蒸気発生器だけではなく、同様の高経年化、経年劣化というものが、ほかのこの6事象以外のものについても進むのではないかというふうに危惧をするのですが、そういった不安、疑念の声についてはどのように答えられますでしょうか。
○山中委員長 高経年化の6事象については、これまでの技術的、あるいは科学的な知見に基づいてこの6事象でよかろうということで規制委員会としては判定をしているわけです。加えて、今日幾つか取り替えるというお話もございましたけれども、取替えが可能なものについてはその6事象から外すというものもあってはいいかなというふうに思っています。
○記者 もう一点だけ。最近、例えば東海第二などでも電気系統の火災が多数起きていますが、この6事象の中で見ますと、電気系統関係だと難燃ケーブルに特化していると思うのですが、それで十分なのでしょうか。
○山中委員長ケーブルの問題というのは火災防護の問題も含めて、経年化、高経年化の事象の中でも取り上げておりますし、ただ、取り替えられるものについてはどんどん取り替えていく、問題があれば取り替えていくという、そういうものについてはそういう方針で管理計画を出していただければ、私は結構だというふうに考えています。
高浜原発:点検見落としや技術力低下
しかし、高浜原発の場合、「取り替えられないものや確認ができないもの」があったことやその他の問題は、この地味な取材ノートをざっと遡っても多々あった。
関西電力が3、4号機で4200機器を点検した2ヶ月後に4号機が緊急停止した理由は、ケーブルのたわみによる接触不良だとわかったり(既報)
「蒸気発生器は傷だらけ」だったり(既報)
「運転上の制限からの逸脱」が起きた根本原因は「社員の技術力低下」だったり(既報)
さらに、前回書いたように、志賀原発(北陸電力)の変圧器のように地震の繰り返しによって金属に「疲労破壊」や「延性破壊」起きた例もある(既報)。
だから、くれぐれも老朽原発の安全性が確認されたわけでも原子力規制委員会が保障するわけでもなく、原子力規制が緩和される中で、原子力規制委員会が定めた法令に従った基準をクリアしただけだ、ということを忘れてはならない。
【タイトル画像】
「高浜発電所4号炉 施設管理に関する方針」(原子力規制委員会2024年5月29日 資料2「関西電力株式会社高浜発電所3号炉及び4号炉の運転期間延長認可及び高経年化技術評価等に係る原子炉施設保安規定変更認可」 P5)にマーカーを筆者加筆。見ての通り上記の「高浜発電所3号炉施設管理に関する方針」(P4)のコピペだ。