見出し画像

東海第二 防潮堤は「やり直し」

東海第二原発の防潮堤の不良工事、その後について。
4月に長文を書いたが、6月18日から7月3日にかけて動きがあった。


3月26日、「調査の不足」指摘

先日書いたように、3月26日の審査では原子力規制庁が「調査の不足」を次々と指摘した(以下動画頭出し)。

6月18日、宿題をせずにきた小学生みたいな日本原電

6月18日の審査会合では、その規制庁に指摘に対する回答を事業者「日本原子力発電(以後、日本原電)」が行った。しかし、その回答では「信頼性が十分にできない」と規制庁は再指摘。これに対して、指摘されていることの重大さを日本原電が理解できていないのではないかと思う(例えると、宿題をせずに学校に来た小学生みたいな)やり取りが続いた(該当箇所を以下で動画頭出し)。

翌日の原子力規制委員会の後の記者会見では、このことに対する山中委員長の見解を問う質問があった。少し長いが抜粋する。

○記者 NHKのハシグチです。よろしくお願いします。ちょっと昨日の審査会合の案件であれなのですけれども、昨日、日本原電の東海第二の防潮壁の施工不良について、事業者から調査内容と対策説明ありましたが、事業者がやった音響探査とか、コア採取では不具合を全容解明するには信頼が足りないという指摘もありましたが、委員長としてはどういうふうな所感でしょうか。
○山中委員長 昨日の日本原電の東海第二の防潮堤の基礎部の施工不良についての審査会合の内容の報告を受けております。私自身も施工の不具合について調査が十分であったかというふうに言われますと、まだまだ不具合の調査は不十分であって、まだ今後、どういうふうに施工していったらいいかという、審査チームを判断できるような状況にはないというふうに考えておりますし、また審査チームからはそのつくり直しも含めた、設計の見直しについて検討するよう指示をしたという、そういう報告も受けております。(略)

○記者 最後、日本原電としては9月に、防潮壁含めて安全工事の完了を9月に目指していまして、なかなか厳しいかなと思うのですけれども、現状、委員長としては、工程優先はないと思うのですけれども、それにとらわれずにきちんとやってほしいとか、そういうのがありましたら。
○山中委員長 もちろん不具合の原因、あるいは不具合の程度についてきちんと調査をし ていただかないといけませんし、設計の見直しについても提案をしっかりとしていた だきたいという。その上で工事を進めていただきたいというふうに思っています。

○記者 フリーランス、マサノです。よろしくお願いします。今の点に引き続きなのですけれども、昨日の審査会合を見ていますと不具合の全容を確認できないのであればつくり直しということもすべきだという強いメッセージが何回も送られたのに対して、日本原電のほうでは、少しの補正で大丈夫じゃないかというような姿勢だったと思うのですけれども、実態としてその基礎のコンクリートが未充填とか、鉄筋が変形しているとか、一つの基礎のほうでは、鉄筋の籠が高止まりして根元まで届いていないとか、そういったことが明らかになっていて全容が分からないと言われているにもかかわらず、つくり直しをせずにいけると考えてしまう時点で、炉規法で求めている原子炉設置をするときに必要な技術的能力がないとみなすべきで はないかと思ったのですが、委員長としてはいかがでしょうか。
○山中委員長 本施工不良をもって日本原電の技術的能力がないという、そういう判断をするというふうには考えておりませんけれども、御指摘のように不具合の全容をきっちりと明らかにしていただく必要がございますし、つくり直しも含めて設計の変更ということについては検討していただく必要があるかなというふうに思っています。

○記者 規制庁のほうから、暗につくり直しということが何回も言われていたと思うのですけれども、そうした場合、さらに施工費がかさむということになるかと思うのですね。当初1,740億円とされていた対策費が、2019年の時点で3,500億円になるということも言われていたのですが、そうしますと、今度また経理的基礎という面でも、現在東電と東北電力から補償支援を受けて成り立っているものなのですけれども、今後の追加工事によっては、改めて経理的基礎はどうなのだということも検証してみる必要が出てくるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○山中委員長 現時点で経理的基礎について見直すということは考えておりませんけれども、この防潮堤の基礎についての基準への適合性については、今後も厳正に審査を続けていきたいというふうに思っています。

○記者 最後の質問なのですけれども、今回の工事の施工者は安藤ハザマ組であるという ことなのですけれども、こういったずさんな工事をしている業者について、原子力規制委員会として記録に残していく、そういったことというのはやられているのでしょうか。もし御存じであれば。
○山中委員長 業者がどこかということについては、私自身把握はしておりませんけれども、大手の建設会社であるということは聞いておりますので、このような、いわゆる 立坑の工事というのは、これまでも大手であれば実績のある工事だというふうに思っ ておりますので、今回の施工不良の原因についても、きちんと調べていただいた上で 対処していただきたいなというふうに思っています。

○記者 すみません、最後と言ったのですが、私が理解しているところによると、今回の南基礎、北基礎があって、凱旋門のような形の防潮堤というのは今回が初めてのことの、前例のない施工方法だということだったのですね。ですので、これはやはり施工そのものを根本からの見直しというのを求められると思うのですが、その辺についてもいずれは議論されていくと考えてよろしいでしょうか。すみません。
○山中委員長これもあくまでも防潮堤そのものの構造というのは非常に特殊な構造だというのは、御指摘のとおりだというふうに思っております。ただ、今回の問題については、基礎部の施工不良の問題でございますので、この施工不良については、施工不良の度合いをきっちりと確かめていただいた上で、つくり直しも含めて設計変更をきちんとしていただくという、そういうふうな方針で臨みたいというふうに考えています。

原子力規制委員会記者会見録2024年6月19日

6月28日、日本原電が宿題を提出

そして6月28日、この会合を踏まえて日本原電と規制庁で面談が行われた。

面談の議事要旨によれば、日本原電の方から、東海第二の防潮堤(鋼製防護壁)について、規制庁の指摘を踏まえ、「不確かさが残る地中連続壁部を上部の鋼製防護壁を支持する構造としては使用しない設計に変更」を検討する旨の説明があり、「7月上中旬」に決めたいという方針は「見極めたい」(事実上の先延ばし)との説明があった、ということを、これを書きながら、今、確認した!

7月3日、防潮堤工事か設計からの見直し決定

果たして次の7月3日の原子力規制委員会。全国の原発の新規制基準の適合性審査の進捗を報告する中で、以下の通り、規制庁が「既工事計画どおりに建設し直すか、又は防潮堤の設計を見直すことを検討するよう求めた」とはっきり書いてあったので(6月28日の面談があったことに気づいていなかったので)、驚いた。

原子力発電所の新規制基準適合性審査等の状況(令和6年7月3日原子力規制庁) P31

7月3日 山中委員長による念押し

驚きとは別に、気になったことがあった。委員会の中で、審査担当者に山中委員長が尋ねたことだ。

○渡邉原子力規制部審査グループ安全規制管理官(実用炉審査担当) 実用炉審査部門の渡邉です。こちらの防潮壁については、二つ大きなロの字型の土木構造物で支えて、その上に防潮壁を設置するという格好になっているのですけれども、こちらの基礎の部分が再使用ができない。調査はやっているのですけれども、どの程度不具合があるかという中の方までしっかり見ることができないという状況になってございますので、ここを再使用しない前提で設計を変更するあるいは全部壊して作り直すとかも含めてなのですけれども、そういったところの検討を指示しているところでございます。
○山中委員長 基礎の部分が使用できないということを前提に構造物の設計を見直す、取り除くということも含めてということですね。

2024年7月3日原子力規制委員会 議事録

そこで、この日の会見では山中委員長の質問の趣旨を尋ねてみた。

○記者 フリーランスのマサノです。よろしくお願いします。 議題1で出た東海第二の防潮堤についてなのですけれども、今日ペーパーではっきり、既工事計画どおりに建設し直すか、設計を見直すかと書かれました。審査会合のほうでは、強く、駄目だというメッセージは発していたと思うのです。よりはっきりしたと思うのですけれども、委員長はその上で、今日は、基礎は使用できないことが前提かと質問されましたが、そう聞かれた意図についてお聞かせください。

○山中委員長 念のためでございますけれども、設計の見直しということについて具体的にどういう意味なのかということを確かめたかったので、その点について確認をさせていただきました。基礎は使えないという、そういう審査チームからの答えでしたので、それに見合った設計の方針を立案してもらえればというふうに思っています。

2024年7月3日 原子力規制委員長 会見録

そんなわけで、「東海第二原発の防潮堤不良施工について:県議は、市議は、村議は、規制庁は」で報告したことについては、一定の決着がついた(やっぱり自治体議員の存在は大きく大切!規制庁の審査官の能力はもちろん)が、東海第二原発の問題は、このことだけにはとどまらない。

【タイトル画像】

原子力発電所の新規制基準適合性審査等の状況(令和6年7月3日原子力規制庁) P31 を抜粋


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?