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敦賀原発はゾンビだ(感想)

敦賀原発2号機は事実上、死んだ。再稼働はできない。

ところが、息を吹き返すこと(設置許可の変更の再申請)が可能であるという考え方を、事業者である日本原電発電(以後、原電)も原子力規制委員会も取るのだ。

敦賀原発はゾンビだ。

今日の「地味な取材ノート」は、昨日(2024年8月2日)の原子力規制委員会臨時会と、直後に行われた原電の村松衛社長会見と、その後の原子力規制庁への質問後に、電車の中で「X(旧ツイッター)」で呟いた感想を補足したものだ。


新規制基準に適合していると認められない

8月2日の原子力規制委員会は、松村社長との意見交換会を受けて、委員間で合議した結果を、事務方(原子力規制庁)が審査書案にまとめて、改めて原子力規制委員会にかけるというところで終わった。

審査書案とは原電が、福島第一原発事故後に策定された新規制基準(実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則)に対応するために行った設置許可の変更申請の補正に対する審査の結果(いわば合否)の案だ。

内容は不合格。つまり、新規制基準の「第3条第3項(耐震重要施設及び兼用キャスクは、変位が生ずるおそれがない地盤に設けなければならない)に適合していると認められない」というもの。

これで敦賀原発は終わりだ、廃炉だと思った。

意見交換で不審なやり取り

ところが、村松社長と原子力規制委員会の意見交換の中では、不思議なやりとりもあった。

村松社長は新たに行う調査(原子炉の下を通る断層に活動性はないという証拠を見つけるための、これまでとは違った調査)をしたい、その調査結果をもとに、再補正をお願いしたいと述べ、その調査の概念を述べた。調査計画を作るのには2ヶ月かかり、調査自体には1年以上かかると、見通しを問われて、答えた。

これに対して、原子力規制委員の石渡明委員が、調査のやり方について注文をつけた(調査することで堆積物を破壊して無くしてしまうことがないようにと)。

この注文に松村社長は「ありがとうございます」と嬉しそうに応じた。

何だこのやりとりは? 再補正を認めるのか? と思ったが、意見交換が終わり、村山社長が退室すると、原子力規制委員会は合議で、再補正には応じず、審査はこれで終わりだということになったのだ。打ち切りだ。

原子力規制委員会との意見交換を終えて退室する日本原電村松社長(2024年8月2日筆者撮影)

村松社長会見でわかったこと

では、石渡委員と村松社長のやりとりはなんだったのか。それが分かったのは、村松社長のぶら下がり会見でのやり取りだ。

  • 新規制基準の「第3条第3項適合していると認められない」と判断された認識はあるかと問うと、あると社長は答えた。

  • では、原子炉等規正法第43条の3の6で、原子力規制委員会は、基準にも適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならないとされていることは認識しているかと問うと、しているという。

  • では、第43条の3の5で、発電用原子炉を設置しようとする者(つまり日本原電)は原子力規制委員会の許可を受けなければならない。つまり、許可を受けられないから、敦賀原発は設置できないという認識はあるかを問うと、村松社長は「それは違う」と述べた。

記者質問に応じる村松社長(2024年8月2日筆者撮影)

今回の手続は、新規制基準に対応するための設置許可「変更」申請(補正)であり、もとの設置許可が不許可となるわけではないというのだ。

そして、他の記者の質問に対して「廃炉にはしない」と明言した。

適合性審査で不合格になった敦賀原発2号機を「廃炉にしない」と
答えた日本原電村松社長(2024年8月2日筆者撮影)

規制庁も同じ考え

  • だから、変更許可ができないと原子力規制委員会が最終結論を出した状態は、新規制基準に不適合な原発が設置されているという状態になるだけだ、と。

  • だから、原電は新たな調査を行なって設置許可変更の再申請をするといのだ。

驚いたことに、規制庁もそういう考えなのだ。

  • 新規制基準に適合していないので、運転(再稼働)はできない。

  • しかし、その敦賀原発2号の状態は、新規制基準に基づく設置許可の申請が「未申請」の柏崎刈羽原発1〜5号機や女川3号機など他の9基と同じ状態になるだけだ、というのだ。

しかし、本当にそうか。原子炉の下に活断層があることを否定できない状態で、どうして元の「設置許可」があるという状態だ、という考え方ができるのか。

経産省(2024年4月19日時点) 経産省はこの資料をどう更新するのか?
初の「設置変更不許可1基」と書くべきだが、規制庁と歩調を合わせ「未申請10基」と書くのか?

屁理屈ではないか

新規制基準に「適合していると認められない」と判断されたものが、「未申請」と同じ状態なのか。

ちょっとムカムカするのは、原子力規制委員会で公開された合議を見ただけでは、こうした彼らの考え方がよく分からないことだ。

村松社長に会見と「屁理屈ではありませんか」とキレながら質問し、その後に規制庁幹部に聞かなければわからなかった。

バックフィット制度はこれでいいのか

「バックフィット制度とはそういうものだ」と規制庁はいうが、納得できない。
これでは新規制基準にした意味がないではないか。

新規制基準は、適合するまで、事業者がカネと時間をかけ続けて、いつか適合できる夢を追うためにあるのか。

それが、敦賀原発2号機で原電がやろうとしていることなのだ。
それが、原子力規制委員会が認めようとしていることなのだ。

ゾンビのように

新規制基準に適合するまで、何度でもゾンビのように申請し続けることができる。そんな前例を、活断層という人間では変えることができない事柄で、事実上、認めてしまった。変だ。

【タイトル写真】

2024年8月2日原子力規制委員会臨時会合 筆者撮影

動画はこちら

「残念です」と社長がコメントした原電のプレスリリース「敦賀発電所2号機の新規制基準適合性審査に係る原子力規制委員会の方針について」はこちら


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