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東海第二原発中央制御室の火災 その後と今後
2025年2月5日の東海第二原発で4件火災の後「また」火災。意識で老朽化は防げない。の続き。「中央制御室で火災」というのは、すぐに消火されたとはいえ、衝撃的なことだ。
頭脳の火災
原発の原子炉が心臓部なら、中央制御室は頭脳にあたるからだ。
2月12日の原子力規制委員会で「原子力施設等におけるトピックス」で、この件が報告されたので、会見で、そもそも論を含めて尋ねておくことにした。質問の趣旨を先に書いておくと、以下の通り。
東海第二原発は、防潮堤の問題(既報)などもあり、再稼働に至っていないが、もし、稼働していたとしたら、どんな問題が起きていたのか?
1975年に起きた米国の原発火災で、一つの機器に火災が起きたために、他の機器に不具合が起きて、プラントの状態を確認できない事態に陥った事件がある。今回、火災になった機器は、他の機器に影響を与えうるのか?
そもそも、火災があれば、原発は止めるルールになっているのか?
○記者 続いて、今日のトピックスの件でお聞きしたいのですけれども、中央制御室での火災ですけれども、原電(日本原子力発電株式会社)が茨城県のほうに報告した調査結果を見ると、今日の移動式炉心内計装系(TIP)ですか、これは原子炉内の中性子を計測するモニタの校正に用いる装置なのだそうですが、これは原発が稼働中だった場合、何かどういった影響がある装置なのでしょうか。
○山中委員長 私自身、まだ原因を詳しく把握しておりませんので、その点についてはもう少し時間をいただければというふうに思いますけれども、非常に特殊な中性子計測のケーブルを切断してパスを閉じてしまうというような、非常に特殊なバルブです。
○記者 そもそもの質問なのですけれども、もし稼働中だった場合、中央制御室で火災が起きた場合というのは、そもそも原発は停止するというルールになっているのか、それとも、火災が起きていても原発は稼働されちゃうものなのか、そういったルール的にはどうなのでしょうか。
○山中委員長 現状で重要でない機器のいわゆる部分の制御盤の火災が起きたわけです。それで、消火がスムーズにいったということで、それをもって、すぐさま何か原子炉を止めない、稼働していた場合には止めないといけないというルールにはなっていないと思います。
○記者 なるほど。ちょっといろいろ、例えば日本原子力学会の2014年の資料によると、1975年に起きた米国のブランズフェリー1号機の火災では、一つの機器に火災が起きたのが、ほかの機器にも不具合を起こして、7時間ぐらい燃えてしまって、プラントの状態を確認できない事態に陥ったということなのですが、今回、日本原燃からは、このTIP以外の機器への影響については何か報告はありましたでしょうか。
○山中委員長 特に何か、ほかの計測機器への影響等については、今のところ報告は受けておりません。今後どういう影響がありそうなのか、あるいはないのかというところについては、その原因も含めて報告を受けることになろうかと思います。
○記者 有無も含めてですね。
○山中委員長 はい。
10年しても取り入れなしの原発火災に関する海外知見
続いて質問したのは、火災に関する海外の知見の取り入れ状況だ。
海外で新たな知見に基づく規制等ができた場合、日本も導入を検討することになっているからだ。結論から言えば、まだ研究段階で、取り入れは行っていない。このことについては、速記録から貼り付けるだけにする。一方で、東海原発で火災リスクとなりうる点においても、この機に聞いておいた。それも現時点では、貼り付けるだけにする。
○記者 ありがとうございます。同じ日本原子力学会の資料によると、火災を起因とする事故に関する確率論的リスク評価、火災PRA(確率論的リスク評価)というそうですが、そういう技術が開発されているそうなのですが、もうそれから10年たっているのですが、日本には、これは取り入れられているのでしょうか。
○山中委員長 海外でも決定論的な火災防護、あるいは火災PRA、両方用いられております。火災PRAというのは非常に高度なPRAですので、評価が難しいというところがあるようです。日本でも研究レベルでは火災PRAというのは実施されているというふうに思いますけれども、実際、火災防護には決定論的な火災防護を日本では採用しています。
○記者 まだ研究レベルということですね、日本では。関連してなのですけれども、東海第二は2018年に既に適合性審査合格しているのですけれども、ケーブルの難燃性に関しては、審査基準では難燃ケーブルを使用することとなっているのだけれども、1,400kmあるケーブルの中で、東海第二の場合は、燃えやすいケーブルの上に防火シートをかぶせただけのところとか、中央制御室に近づくにつれてケーブルがてんこ盛りの状態になっている場所があると。てんこ盛りの状態というのは、2016年の日本原電の資料に書いてある表現なのですけれども、この1本1本を区別、特定するのは不可能なのでとか、スペースがないという理由で、古いケーブル、46年物に今なっているわけですけども、それを切断するだけで、その上に新しいものを敷設するというやり方で審査を通ってしまっていますけれども、中央制御室に近いほど古いケーブルが絡まって密集している状態であることについて、委員長は不安をお感じになられませんでしょうか。
○山中委員長 火災防護対策については、設置変更許可の段階で、一定程度の審査はしているはずです。その上で設工認(設計及び工事の方法の認可)等で詳細を見ることになるかと思いますし、また日常の検査の中、あるいはチーム検査の中で、火災防護についてはこれは非常に重要な問題ですので、各発電所の火災防護については、かなり詳細に点検、検査をしておりますので、この点については、だから、今後も検査の中で見ていくことになろうかと思います。
○記者 1,400kmあるケーブルは、どの程度、設工認の段階で議論になるのでしょうか。もし分かればなのですが。
○山中委員長 重要なところは必ず検査の中で点検をしていくことになろうかと思います。