未適合炉を対象外にしようとするわけ
現在の制度のままでは原子力規制委員会が運転期間の延長を許可しない限りは、原発は廃炉になる。延長しても最長でも60年を経過すれば廃炉となる。
そして、今、原子力規制委員会が考えている新しい制度案でも、30年及びその後10年以内ごとに「長期施設管理計画(仮称)」を作って原子力規制委員会の許可を得ない限りは運転ができないことになる。
ところが、「未適合炉:言い出したのは原子力規制委員長」で記録したように、原子力規制委員会は、「未適合炉」は新制度案の対象外にするつもりだ。
老朽原発の廃炉回避策
「運転期間」の規制をなくし、「未適合炉」を新制度案の対象外とすれば、現在ズサンだと指摘されている高経年化技術評価などだけが適用され、法律上の許可なく60年以上の運転がズルズルと可能となる。
例を挙げると、東京電力は、柏崎刈羽原発に「未申請」の「未適合炉」を5基も抱えている。37歳1基、32歳2基、29歳1基、28歳1基だ。このまま申請しなければ、現制度でも新制度案でも、2、3年のうちに5基は廃炉になる。しかし、新制度案でこれらが対象外になれば、申請せずに放置していても廃炉を回避できることになる。
これは1月11日の原子力規制委員長会見で確かめた。委員長が答えきれずに総務課長が回答した。
「40年で運転できないというくびきはなくなる」
このおかしさには地元紙記者が早くから気づき、昨年12月の会見でも、なぜかと理由を質していた。
こう繰り返し聞かれても、山中委員長は話をそらして回答しなかった。しかし、新制度案に12番の「対象とせず」を設けた理由は、期限が来たら自動的に原子炉が廃炉になる「くびき」を外す策だったのだ。
未申請の未適合炉9基のうち未完成の2基(大間原発と島根原発)および、新規制基準の適合審査中の10基は、新しい制度案を適用するつもりであることは会見で確かめた。
整理をしてみると、上記12番に位置付け新制度案の対象外にするのは、未申請の7基(柏崎刈羽1、2、3、4、5号機と、志賀1号機、女川3号機)だ。では、この7基は「運転開始後30年を超えるが運転しようとしていない発電用原子炉」なのか?
条文に入れるものと入れないものを並列
「運転しようとしていないなら直ちに廃炉とするべきだし、運転するなら対象外にできない。こんな主観でどうにでもなる文言を法律の条文にすることはできないでしょう?」と昨年12月27日の内部資料に関する記者ブリーフィング後に金城課長に理詰めで聞いたら、「規制庁内部でもそういう議論があって、12は条文には入れないことにした」と白状した。
規制の概要案と謳って意見募集している中に、条文に入れるものと入れないものを並列している。絶句して、ここに吐き出すまでになんと3週間もかかった。
やや余談だが本質
以下はやや余談だが、このような議論が規制庁内であった上で、高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案) に
「1. 運転開始後30年を超えて発電用原子炉を運転しようとするときは」と
「12. なお、運転開始後30年を超えるが運転しようとしていない発電用原子炉」
が並んでいることを規制委員長は知っているのだろうか、と思い、1月11日の会見で聞いてみたことも、記録しておく。
この解答を聞いて、山中委員長は12番で「対象とせず」と書くことで7基もの原発の廃炉を回避する策を法律の枠外に設けることになる、それが規制庁内で議論された上での表現だ、ということを知らないのかもしれないと思った。しかし、知った上でこのように答えたのであれば、残念すぎる。
パブリックコメントは、一人でも多くの人に出してもらいたい。
■高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)に対する科学的・技術的意見の募集の実施について 締切:2023年1月20日夜中(21日0時0分)
タイトル写真 【原子力発電所の現状】
出典:経産省
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