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原子力業界2年前の提案通り?

原子力規制委員会が原発の規制政策を放棄しようとしている話の続き。

おさらい

GX実行会議で岸田内閣総理大臣が8月に、原発回帰3点セット(再稼働総力結集、次世代革新炉の開発・建設、運転期間の延長)の検討を年内にせよと指示以来11月2日までの動き(*)を、運転期間の延長に絞ってまとめてきた。原子力規制委員会は10月5日に経産省から聞いた話を受け、11月2日、原子炉等規制法で定めた運転期間に関する条文に「抜けが出る」場合に先んじて「高経年化した発電用電子炉に関する安全規制の検討」を始めた。その続きの流れは以下の通りだ。

□経産省
11月8日総合資源エネルギー調査会原子力小委員会
11月15日総合資源エネルギー調査会基本政策分科会
11月28日総合資源エネルギー調査会原子力小委員会
□原子力規制委員会
11月16日高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の検討(第2回)
11月30日高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の検討(第3回)

経産省:運転期間案3択から1択へ

11月8日、経産省は原子力小委員会で、運転期間について3つの選択肢を提示した(資料5の24頁)。①現状維持、②上限撤廃、③運転期間から停止期間(審査や判決によって稼働できなかった期間)を除外するという3択だが、委員のほとんどが原発を礼賛、②に賛意を示した。

11月15日、経産省は基本政策分科会で、ゲスト(拙速議論や②③の反対論者3人を含む)招いて話をさせたが、正規の委員がゲスト3人への異論を散りばめながら、原発を礼賛。

11月28日には①②③の比較表を出し、事故を踏まえた制限など5つの観点から○×△をつけて「全体のバランスを勘案」して案③(運転期間から停止期間を除外)を推してきた。

出典:資源エネルギー庁「原子力政策に関する今後の検討事項について」(64頁)

一方、原子力資料情報室の松久保肇事務局長は、経産省の考えは原発事故の教訓を放棄するものであり、全く賛同しかねるとし、意見書で経産省の視点のブレを突いた。経産省は、案①は「原子力を選択肢として否定」するとして電力を安定供給できない「×」評価にした。しかし、経産省は新増設も推しているので本来は「◯」である等、①が最もデメリットが少ない選択肢となると解説した。

出典: 原子力小委員会への意見書(松久保肇委員)

原子力規制委員会:暦年「運転開始後30年」で認可

原子力規制委員会は経産省の動きに阿吽の呼応で動き、11月16日には2回目、11月30日には3回目の「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の検討」を行った。

2回目の16日には山中委員長が「我々の安全規制についてはカレンダーイヤーでやります」、「利用政策側がどのような暦を使ってくるかに全然依存しないですよ」(議事録)と、複数の委員と原子力規制企画課長に何度も確認した。11月2日記者会見では、「現行制度よりもはるかに厳しい高経年化した原子炉に対する規制である」「いわゆる認可制度を10年ごとに取り入れて、30年からずっと評価をしていく」「これまでよりはるかに厳しい規制制度になっている」と、「はるか厳しい」と2回も述べた。

11月30日の3回目の資料でも「運転開始後30年」で認可。「10年以内ごとに審査・認可」、「10年以内ごとに審査・認可」と繰り返すことになっている。これなら山中委員長が述べたように、厳しくなる印象を与える。

出典:11月30日原子力規制庁「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の検討(第3回)」25頁

ところが、実際は厳しくならずに、2年前に原子力業界からリクエスト(「事業者側から、運転期間延長認可の審査に関し(略)一定の期間を運転期間から除外してはどうかとの提案がなされた」ことへの原子力規制委員会の見解)に沿うだけの骨抜き制度になってしまうのではないかという疑念が出てきた。

業界2年前の提案通りの疑念1

一つは、1回目の検討案が出た時からの疑念だ。この手続は、事業者による自己評価と管理計画の書類さえ整っていればOKとなってしまう疑念。今のままなら、審査の体をなしていない。

業界2年前の提案通りの疑念2

今後の政策形成プロセスの中で、原子力規制委員会側が「検討案」としている「運転開始後30年」で認可し、「10年以内ごとに審査・認可」を繰り返していくという「イメージ」(上図)が骨抜きになる兆しが、原子力規制委員会の事務局側の発言に見えてきたからだ。次回以降で、そのことを取材ノートとして書き留めておきたい。

*11月2日までの動き
8月24日 総理の一日 GX実行会議
9月22日 経産省総合資源エネルギー調査会原子力小委員会 
10月5日 原子力規制委員会
10月13日 経産省原子力小委員会
11月2日 原子力規制委員会 高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の検討

タイトル写真【誤嚥性肺炎からの復活】

脳神経系の症状に加えて6月にアキは誤嚥性肺炎で一度は寝たきりになったが、7月からのリハビリで、なんとかここまでは復活している。

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