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庇を貸して母屋を取られているー放射性物質汚染対処特措法と土壌汚染対策法

放射線審議会で起きていることを前々々回前々回と書いてきたが、何かシックリ来ない。悶々としていたが、夜中に目覚めてアレだと気づいた。庇(ひさし)を貸して母屋が取られたままで物事が進もうとしているからシックリこないのだ。

どういうことか。2012年の環境基本法改正から、現在の放射線審議会で起きていることをつなげて記録しておく。ここで言う庇(ひさし)とは放射性物質汚染対処特措法母屋とは土壌汚染対策法の喩えだと思っていただきたい。


環境基本法改正で放射性物質の除外規定を削除

2011年の福島第一原発事故の翌年(2012年)、国会は原子力規制委員会設置法の附則第23条で、環境基本法から第13条を削除した。「放射性物質による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染の防止のための措置については原子力基本法その他の関係法律で定める」旨の条文だ。つまり「放射性物質による汚染は、環境省の所管外ですよ」という条文を削除したのだ。

4つの環境法令から放射性物質の除外規定を削除

2012年11月、中央環境審議会は、以下4法からも放射性物質の適用除外を削除してはどうかと意見具申した。

  • 大気汚染防止法

  • 水質汚濁防止法

  • 海洋汚染防止法

  • 環境影響評価法

しかし、実際には、2013年「放射性物質による環境の汚染の防止のための関係法律の整備に関する法律」で、海洋汚染防止法以外の3つに加えて南極保護法の以下4つから、放射性物質を除外していた規定を削除(参考)。その他の環境法令については、放射性物質汚染対処特措法(以後、特措法)との関係を踏まえた検討が必要だとして、先延ばしした。

  • 大気汚染防止法

  • 水質汚濁防止法

  • 環境影響評価法

  • 南極保護法

中央環境審議会が意見

それから3年が経過。2015年2月の「中央環境審議会」で環境省は、2012年の中央環境審議会の意見具申後の状況を、以下のように報告している。

  1. 海洋汚染等防止法は、廃棄物処理法と一体的な検討が必要なので、適用除外規定を削除する改正を見送った。

  2. 廃棄物処理法土壌汚染対策法は、2012年時点では、適用除外規定の削除の適否を判断することは適当ではないとされた。

  3. 廃棄物処理法土壌汚染対策法は、特措法附則で施行後3年後に検討する約束なので検討したが、再び、特措法の施行状況を踏まえて検討するとした。

大事な法律の改正はすべて先延ばし。この頃、環境省は「最終処分場」を見つけるのが困難とし、「再生利用」すると言い始めていた。

現状

その結果、今でも、土壌汚染対策法第2条には「『特定有害物質』とは、鉛、砒ひ素、トリクロロエチレンその他の物質(放射性物質を除く。)」とされたままだ。

環境省は、全国一律に土壌汚染対策法で「放射性物質」を対象にして対策することがまだできないと考えているからだろう。

つまり、ALPS処理した汚染水が放出された海洋と同様、土壌においても、原発事故由来の放射性物質の汚染問題が解消していない。特措法による特別措置が必要だと環境省が考えていることを意味しているとも言える。

それならば、間違っても「放射線審議会」に全国を現存被ばく状況であることを勘案して、安易なレベル(原子炉等規制法のクリアランスレベルの80倍)で「復興再生利用」という言葉もその定義も拘束力もない中で、基準の諮問を行うべきではない。

全国で一律に公共事業で除去土壌(放射性物質に汚染されたので取り除かれた土壌)を利用させるために、特措法を全国に被せるような真似はすべきではない。

これは、まるで特措法に庇を貸して母屋(土壌汚染対策法)を取られているような状態ではないかと思ったわけだ。

明日金曜日の閣議後の記者会見で、環境大臣にこのことを聞こう!と思って問い合わせたが(環境記者クラブはフリーランスでも会見に参加できるのである)、国会会期中で衆議院内に入って短時間のぶら下がり式の会見となることがわかり、今回は断念した。

しかし、この件は、引き続き書いていく。

【タイトル写真】
2024年12月10日の放射線審議会にて筆者撮影。


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