英語を習得したいけれど、なかなか上達しない、自分にはセンスがないんじゃないか、と思っている方へ
英語からの距離が遠い日本語を母語として育った私達日本人は、英語の習得のために、他の国の人達よりも時間をかける必要があります。
(恐らく3000時間程度、ここから学生時代の勉強の「貯金」を引いた時間が必要な時間。でもどれほど貯金額が高い人でも、リスニングに500時間、スピーキングに500時間で、最低でも1000時間は必要なはずです)
ただし文字でのコミニケーション(読む・書く)でよしとするならその限りではなくて、
音でのコミニケーションを取りたい、つまり英語を聞き取って、そして話せるようになりたい、と思った瞬間に必要な時間は跳ね上がるのです。
そしてそこに到るためには、はそれなりの取り組みが必要になります。
これは会話という、時間的な余裕がない中で沢山の作業をこなさなきゃならない場面に対応出来るようになるためには、
「自動化」← いちいち考えなくても体が勝手に動くまで高めること
させなきゃいけないスキルがたくさんあるからです。
会話で必要な作業
だって、英語で会話をする際に頭の中で何をおこなっているか、その作業を分解すると
・相手の質問を聞き取って(これ「だけ」だって大変なのに!)
・どう返答しようかと考え
・それをどう英語で言おうか考え(主語は何する目的語は?など)
・必要な単語を記憶から引っ張り出して
・英語のルールに沿って、それらを並べる
・さらに文法的なことにも当然頭を使わなくちゃいけなくて(動詞の形を適切に変化させるなど)、
・で、ようやくできた英文を口から出す時には、今度は発音についても気をつけなくちゃ、
のように、こなすべき「処理」はたくさんあります。
※ ここでは便宜上、「聞き取る」と書きましたが、本当はこれだっていくつもの細かい作業に分解できる、とても複雑な作業です。
しかも相手の話を聞き終わって「から」、これらの作業を始めるのでは、話し出すまでにどんだけ時間がかかるかわかりませんよね。
その間相手をずっと待たせることになってしまい、その焦りで頭はもっと動かなくなっていきます。
つまり、状況はもっときつくなる、ということですから、できれば相手の話を聞き「ながら」、なんと返答しようか、ぐらいは考えたいところ。
つまり、集中して一つの作業に集中することができないわけですよね、その忙しい中で色んな作業をこなすことが必要になる、
これが会話を難しくする「双方向性」です。
リスニングならリスニング「だけ」に集中できない。そうなると、リスニングだけに集中できる時と比べると、どうしても力が落ちちゃうわけです。普段の力が出せなくなる。
カタカナ発音に逆戻りした理由
自分のケースでは、やり直して3ヶ月集中して勉強してTOEICで920点を取り、それまでの自分へのご褒美としてオーストラリアに行きましたが、
その当時の自分の力ではネイティブとの会話なんてとてもできない、だから「質問わんこそば」という作戦を取りました。
これは、まずこちらから質問を投げかけ、相手の話なんかほとんど聞かずに、次の質問を考え、それを頭の中で何度も練習しておいて、
よきタイミングで それを口にする
これによって、まるで「スムーズに会話ができている」かのように見せるという、
恐ろしく姑息な方法ですが
あれも、あの当時はネイティブの話を聞き取ろうと思ったら、脳の100をそれに使わなくてはならなくなり、そうなるとあちらから何か聞き返されたらそこで脳がフリーズして、ゲームオーバーになってしまう、
それを回避するための苦肉の策でした。
そして実際、相手に質問される段になると、その答えのために必要な単語を思い出すのに苦労し、ようやく口から出た英語はカタカナ発音に戻っていた
そこまで「シンクロ読み」という、ネイティブの音声に自分の声を重ねるように音読するトレーニングで、発音に関してはメチャクチャ鍛えて、すでに自動化していたと思っていましたが、
その、「自分の言いたいことを伝えるために必要な単語を思い出す」
という慣れていない作業に頭の大部分を使うことになり
発音に対して一切意識を回せなくなった結果、普段できるはずのことができなくなってしまった
これが、一つのことに集中できる時はできることが、色んなことに頭を使わなくちゃいけなくなるとできなくなる、ということの例です。
だからこれぐらいではびくともしないぐらいのレベルにまで、それぞれのスキルを「自動化」させなければ、会話の場面では対応できないのです。
日本語での会話の分解
これが日本語での会話なら
・相手の質問を聞き取って
・どう返答しようかと考え
・答える
のように至ってシンプル。というのは、相手の話を聞き取る、言いたいことを話す、という上で説明した作業のすべてが完全に「自動化」されているから。
私達は日本語のプロですからね。
これを言おう、と決めた瞬間に口から適切な言葉が出てくるわけです。
だから日本語の場合は、「何を話そうか」っていうところだけに頭を使えるわけです(まぁそれを「どう言おうか」もですね)。
だって、ここが一番大切なとこですもんね。
でも外国語である英語はそうはいかない。
上記した、それ以外のたくさんの作業に頭をとられてしまって、肝心の「何を言おうか」と考えるところに頭を使えなくなる、
そうなるとまた言葉は出なくなる、という悪循環。
レベルの向上=自動化に近づく
でも、英語の場合も、レベルが上がれば、自動化に近づけられます。
例えばオーストラリアに行った時点での自分は、英語のリスニングに頭の100を使わなければなりませんでしたが、今は恐らく5も必要ないぐらいでしょう。
YouTubeで英語の音声を流しっぱなしにしていても、集中していなくても耳から入ってきて、言っていることはわかる、という状態
だから他の作業に十分に頭を使うことができるわけです。
このように、スキルが向上すると、その作業に頭を使わなくて済むようになる分、他のことをやる余裕ができてくる
車の運転と一緒です。最初は一つの操作だけで頭がいっぱいいっぱいだったはずなのに、いつか勝手に体が動くレベルにまでなって、沢山のことを同時にできるようになる
「双方向」の作業である会話に対応できるようになるためには、頭を使わなくてもそれができる、というレベルにまで、各スキルを高める必要があるということ。少なくともそこに近づける必要が。
そしてそれを可能にするのが反復です。どれぐらい「量」を積んだか。
すなわち
・英語を聞いて意味を取る、という作業
・自分が言いたいことを英語で発話する、という作業
これらの「量」をどれだけ積んだか。
それはイコール、どれだけの時間を捧げたか、ということ。
「なんちゃって勉強」からの卒業
ただし、この自動化というのは簡単にいくものではなくて
ゲームの操作ですら、自動化を達成するには1000時間レベルをかけることが必要だと言われています。
英語の場合はこの自動化させなくちゃいけない要素が、車の運転、あるいはゲームの操作よりもはるかに複雑で、比較にならないほどたくさんあります。
だからその分だけ時間がかかるわけです。特に日本語から遠い言語である英語を習得しようとするなら尚更。それは数千時間レベル。
ですから、英語が本当に会話で使えるようになりたいなら、「なんちゃって勉強」を卒業して、本気の取り組みをする必要があるわけです。
それはすなわち「毎日」「数時間」。
届く勉強、届かない勉強
日本での英語の人気はもうずーっと高くて、本当にたくさんの方が英語の勉強をしています。
でもそのほとんどの方が、「使える」ところにまで届かない勉強を、知らないうちにやってしまっている。
もし英語学習そのものが趣味で、別に使えるようにならなくたっていい、それ自体が楽しいんだから、っていうなら別です。
(ただし、本当に好きで、それが楽しいなら、知らないうちに毎日何時間もかけてしまうはずですが)
でもそうじゃなくて、勉強の目的が「使える」ようになることなのであれば、それなりの取り組みをしなくてはいけなくて、
それは「毎日」「数時間」です(もちろん成果を決めるのは時間の他にも集中度・トレーニングの負荷などの要素もありますが、まずは時間です)。
こういうことって耳が痛いと思うんです。
でもこれを知らずに、使えるところまで「届かない」勉強を続け、結局一生英語が使えるようにならずに終わるのと
厳しいけれど、この現実を受け入れて、それに向けた取り組みを始め、
それを継続することで、本当に使えるようになる
どっちがいいですか?
修行時間を駆け抜ける
だって、楽しくなるのは、使えるようになって「から」なんです。
それまではその修行期間に過ぎません。
そして全ての挫折はこの修行期間で起こります。だって「使える」ようになってしまったら、後はもう楽しいだけですから。
だからそこまで行ってしまったら、もはや挫折のしようがないわけです。
ということは英語で成功するためのその最大の秘訣、それはこの修行時間をなるべく早く駆け抜けてしまうこと。
そのためには「毎日」「数時間」を当たり前にする。
ですが実際には多くの方が、辛くない程度の勉強(30分程度)をやって、しばらくしてはやる気がなくなってやめる、そしてまたやってみようかなと、ちょっとやってみる、
を繰り返している。
スキルの上達は「下りのエスカレーターを逆に上ろうとする」作業ですから、
せっかく得たものも、止まっている間に失われてしまいます。
ということは、これを繰り返していたって、同じ景色をずっと見るだけなんです。そんなの面白いわけがない。こんな無駄な人生の使い方はない、と僕は思うのです。
あなたがなかなか上達しないと思ってるなら、それはあなたにセンスがないからではなく、おそらくは時間が圧倒的に足りていないから。
英語を会話で使えるようになりたい、と思うなら、なんちゃって勉強を卒業して、本気の取り組みを始めること。
そうやって本気で取り組む人を一人でも増やしたくて、ここまで書いてきました。
よし、本気でやろう、と思われたらぜひ下の記事をご覧ください。一人で本当に「英語が使える」ようになるために、具体的にどうすればいいか、についてお伝えしています。
毎日数時間なんて無理だ、と思われる方はこちらを
下のマガジンでは、どうして日本人が英語でこれほど苦労するのかについてお伝えしています。
下の二本の記事では、「英語を諦めていた人間が、もう一度英語に挑戦し、その扉を開くまで」を、スティーブ・ジョブズが語った connecting the dots (点をつなげること)に重ねてお話しています。
こちらの取り組みも参考になるはず。それまでダメ人間だった男の、本気の取り組みの軌跡です。
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