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それまでの人生に存在すらしていなかったスペイン語を学ぶことでもたらされたもの

今日はスペイン語を学んでみてよかったな、と思ったことをご紹介していきます。 

まぁ一番良かったのは、スペイン巡礼の旅であるカミーノ・デ・サンティアゴを歩いた時に、地元の人と仲良くなれたことなんですが(カミーノについては前回の記事の中で少し触れています)、

今回はそれ以外のことについて。

                 

スペイン語を学ぶ際、最初に単語集を使って基本単語を覚えることから始めたんですが、その中で国名が出てきて、面白いと思ったのが

アメリカのことを Norteamérica(北アメリカ)と呼ぶんです。わざわざ norte(北の)を前に付ける。

それを見た時、「なるほど、そりゃそうだよな」と思いました。

僕らが「アメリカ」という時は、あの地図でいう北アメリカ(北米)を指していますが、このスペイン語を使う人達(中南米がその中心)だって同じアメリカ大陸にいるんだから

「アメリカ」だけでは自分たちも含んでしまうので、norte(北の)を前に付けなきゃ伝わらないと。

こんな小さなことでも、僕たちがアメリカからとてつもなく大きな影響を受けていることに気付かされます。それはよくも悪くも。

英語を学ぶことによっても、やはりその傾向は助長されますよね。彼らの価値観に沿った考え方を、すなわち彼らが中心のものの見方を知らない間に身に着けてしまっている、ということ。


このことを再確認したのが、これよりだいぶ後にニュージーランドを旅した時。

トレッキングの途中にメキシコ人と知り合って意気投合し、彼の車でいっしょに旅することに。

彼は車の中でずっと音楽をかけていましたが、自分が知っているものは一曲もありませんでした。

これは知ってるでしょ?と聞かれるたびに首を振る、そうすると彼はものすごく驚いた顔をする、の繰り返し。

というのは、自分が知っているスペイン語のヒット曲と言えば、

サッカーワールドカップのテーマソングとなったシャキーラの Waka Waka(まぁこれは英語バージョンで聞いていましたが)

エンリケ・イグレシアスの Bailando

そして世界的に大ヒットしたDespacito

ぐらいですから。でもこれぐらい大ヒットした曲でも知らない人は多いんじゃないでしょうか。

それでも、自分は昔から洋楽が好きで、海外の曲はかなり聞いている方だと思っていたんです。でも違っていた、僕が「外国の曲」だと思っていたのは、あくまでも欧米の世界でのヒット曲だったんだということ。

上の曲は、メガヒットしたためにスペイン語圏を飛び越えて欧米でも流行した、だから自分の耳にも届いたのでした。

元をたどれば、「全米トップ40」という音楽番組が、自分にとっての洋楽の入り口で、もうそこからアメリカの影響をどっぷりと受けていたわけです。

まったく生まれ育った環境が違う彼と旅して話を聞いて、広大なスペイン語圏には、自分がまったく知らない世界が広がっているんだ、ということに改めて気づきました。

だってスペイン語を公用語にする国って世界に21カ国もあって、特に中南米ではブラジル(ポルトガル語)を除くほぼすべての国で、スペイン語が通じるわけです(というより、多くの国では世界共通語であるはずの英語がむしろ通じない)。

それはそれだけ大きな商圏があるとも言える、だからその中でヒット曲ができれば、その21カ国もの人々によって聴かれることになる。売り上げだってとんでもないことになりますよね。 


そのメキシコ人の友達からは、それ以外にもいろんなことを教えてもらったんですが、

その中でももう一つ面白かったのが、タコスとナチョスの違いで

・タコスはトルティーヤの生地を焼いて作るのに対して、

・それを揚げて作るのがナチョス

でも食べるシチュエーションが違うんだそうです。

例えば映画館などではナチョスがつきもので、ナチョスをつまみながら映画を観るのが普通とか

僕はそれを聞いたときに、「なんでわざわざ映画館で音が出そうなナチョスの方を売るの?音がしないタコスを売ればいいのに

映画の最中に音を出したら、うるさいって怒る人いないの?」

と思わず聞いたんですね。日本で言えば、映画館で隣の客がパリパリ音立ててポテトチップ食べてるようなもんで、気になるんじゃないかな、と思って。

そうしたら彼はものすごく不思議そうな顔して

「そりゃ音は出るけど、映画は楽しいものだし、ナチョスを食べるのも楽しいことで、そんなハッピーなことに怒るだなんて、考えたこともなかったな」

と答えたんですが

それを聞いてハッとしました。

日本の感覚だと、いかに周りの人に迷惑をかけないか、ってことに常に意識があって、そういう空気の中で生きている自分には、そのことが一番に浮かんでしまった

日本で生きているだけの間はそれが当たり前ですから(まぁ自分は特に気を遣う方だということもあるとは思います)、これが他の国からすると特殊である、ということに気づかないんですよね。

全く違う価値観を持った人と触れ合うことで初めて気づけることで。


そう、他にも彼はお菓子の工場で働いたことがあって、そこでは同じお菓子が、

他の国向けの商品は、大きな袋の中に沢山のお菓子を(はだかで)入れるのに対して、

日本向けの商品だけ、大きな袋の中に沢山のお菓子、そのひとつずつがすべてまた小袋で包装されている 

という形になっていたそうで(そういうのありますよね)、 

あれはクレイジーだろ、やりすぎだとは思わないか、と言われました。

似たようなことは、ドイツ人の知り合いからも言われたことがあります。日本は素晴らしいけれど、あの過剰包装だけは理解できない、

ビニールを開けるとビニールが、その中にまたビニールが、そしてまた...

日本ではそれが当たり前だとされていることが、海外から見ると不思議・異常に映るということ、こういうことも日本の中で日本語だけを使って生活していては、なかなか気づけないもの。


・アメリカのことを Norteamérica と呼ぶ

・全く知らないスペイン語圏のヒット曲の数々

・映画館で音を出しても怒られない

・袋の中にさらに袋に包まれたお菓子

これらのことでハッとした、それは自分にとっての当たり前が、彼らにとっては当たり前ではない、ということに気付かされたからです。

これに関しては、英語でも同様の経験をしたことがあります。英語を話せるようになるまでは日本語「だけ」の世界で生きていた

一つの言語しか使えない時は、その言語圏の中の世界がすべてだと思っているものですが、他の言語が使えるようになると、その外に自分が知っているものとはまったく別の、広大な世界が広がっていることに気づく

そうすると、それまでの自分の常識が通じなかったり、ということに沢山遭遇するんです。

それによって自分の価値観が相対化される

自分が絶対だと思いこんでいたものが、実はその「狭い世界」でしか通じないローカルルールに過ぎないということに気づく

僕はこれこそが外国語を学ぶ最大のメリットじゃないかと思うんです。


スペインを旅した時に、人に話しかける時、Excuse me? よりもPerdon?(「ペルドン」のように発音)とスペイン語を使うと

明らかに相手の反応が変わりました。みんな笑顔で迎えてくれるんです。

スペインだけでなく、ヨーロッパの他の国でも、若い人は結構な割合で英語が話せますが、年配者の中には英語が苦手な人も沢山いて、そういう人は英語で話されると怒ったり、まったく相手にしてくれない、ということもありました。

まぁわかりますよね。僕たちが日本で外国人に話しかけられる時だって

もちろん英語に自信がある人であればなんともありませんが、そうでなければ、外国人と話すというだけで緊張してしまう、という方も多いはず(僕もずっとそうでした)

自分が英語が使えないことが恥ずかしい、という気持ちも芽生えるかもしれません。それで「あーわかんないわかんない」と、ぶっきらぼうな振る舞いをすることもあるでしょう。

そんなときにいきなり当たり前のように英語で話しかけられるよりも、日本語で「すみません」と言われたら、どうですか?

こっちに歩み寄ろうとしてる、というのが感じられて、安心する、というか助けようという気になりますよね。

この経験を持って以来、他の国を旅する時も基本的なフレーズだけは覚えるようにしました

こんにちは、すみません(Excuse me?の方)、ありがとう、おいしかった、ごめんなさい、よい一日を!

これぐらいでも十分。(ただしその国の言葉で「すみません」と言っても、その後は Do you speak English? 「英語話せますか?」と聞くことになるのですが)

でもこれだけで相手の反応は大きく変わります。

「喋れるのか!」とすごく喜んでくれる

いきなり友好的になって、一緒に写真を撮ってくれと頼まれたことや、英語が話せる人を探してくれるなどの親切を受けたり、お酒をおごってもらったりしたことも一度や二度ではありません。

というのは、その国の言葉を話そう、とすることで、こちらから近づこうとしている、という姿勢が伝わるからです。

それで一気に心の距離が狭まる。それはGoogle翻訳にはできないこと。

言葉の力って凄いんです。


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その限られた文字数で必要なメッセージを過不足なく、しかも誤解がないよう伝えなくてはならなくて、これがまぁ難しい。

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