見出し画像

落とし噺の話【命日】

2001年10月1日。
大雨の降る日だった。
仕事を終えて、帰宅し、夕食を終えたところに友人から電話。
泣き声で「志ん朝さん、死んじゃったよぉ」。
頭の中が真っ白になり、「どうしよう」と。
どうしようにもどうにもならない。
住まいが「やらいちょう」というところだということは知っていたものの、それがどこにあるのかは知らなかった。
今ならインターネットですぐに場所がわかるけど、そのころはまだそこまで便利じゃない。
大雨だろうが何だろうが、飛んでゆきたい気持ちだった。
居ても立っても居られない思いだったが、何もできなかった。

床に入って、NHKラジオをつけるとちょうど追悼番組が始まった。
「堀之内」。
可笑しかった。
泣きながら、大笑いした。

あれから20年。
未だに喪失感をぬぐい切れていない。

合掌