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双極性障害【鉛くん】
この病気の症状で私を最も悩ませていること。
それは頭重感(ずじゅうかん)という症状です。
額に厚さ1センチくらいの鉛の板が張り付いたような感じになり、頭が重くて何もできなくなります。
ドス黒くて、光沢がなくて、見るからに重そうな鉛の板。
それが重くて重くて、うめき、布団の中でのたうち回ることもしばしばです。
特に朝。
起きてからうかうかしているとこの鉛の板が頭の中から湧き出てきて額を覆ってしまいます。
ですので、この鉛の板が出てこないうちに、急いで洗面を済ませてさっさと家を出る。
仕事に行くときでも遊びに行くときでも、目的に関係なく出てきます。
出かける用事がなくても出てくることがあります。
この頭重感を和らげるために薬を服用していますが、今のところ効き目は現れていません。
何故この「鉛くん」が出てくるのか。
鉛くんは私にどうしろというのか。
目的はなんだろう。
「鉛くん、君が出てきて私のおでこに張り付くと頭が重くて何もできなくなるんだよ。
頼むから出てこないで欲しいんだ。」
鉛くんは答えました。
「そんなこと言わないでよ。出てこなくちゃならないから、出てきてるんだよ。」
私:出てこなくちゃならない?
鉛:そう、出なくちゃならないんだよ。
私:?
鉛:僕が出てこないと、君はすぐに頑張ろうとするでしょ。
私:だって、私は頑張りたいんだよ。
鉛:そんなに頑張らなくたっていいんだよ。
私:頑張らないことは私にとって「悪」なんだもの。
鉛:そんなことないんじゃない?
私:頑張らなくてもいいの?
鉛:そんなに何でもかんでも頑張っていたら疲れない?
私:まぁ、確かに疲れるけど。
鉛:そうでしょ、だから君が頑張りすぎないように僕は出てくるんだよ。
私:私を守ろうとしているの?
鉛:そう。
私:頑張らなくてもいいの?
鉛:頑張らなくていい。
私:でも、頑張らないで、ダラダラしているとみっともないじゃない。
鉛:ダラダラと頑張らないこととは違うんじゃない?
私:そうかなぁ。
鉛:そうだよ、違うよ。
私:頑張っていないところを人に見られるのが嫌なんだよ。
鉛:嫌?
私:うん、恥ずかしい。
鉛:頑張り過ぎていないときのほうが周りの人たちは安心するんじゃない?
私:安心?
鉛:そう、安心すると思うよ、穏やかにしていたほうが。
私:そうさせるために君は出てくるの?
鉛:そう。
私:君は私の味方なの?
鉛:そうだよ。
私:頑張り過ぎないようにしたら、君は出てこない?
鉛:うん、出る必要ないからね。
私:じゃ、頑張り過ぎないようにしてみようかな。
鉛:うん、そうしてみて。
私:ありがとう、私を守ろうとしてくれて。
鉛:うん。いつも笑顔でね。
私:うん。
鉛:じゃぁね。
<完>