用心深い
小学校の教師をしていた母は、私を産んで六ヶ月で仕事に戻った。私の面倒は祖母が見ていたことになる。
私も子供を産んでわかったことだけれど、祖母は大変だっただろう。
張ったばかりの障子を破って回ったり、卵を割って滑って遊んだり、こっそり梅酒に浸かった梅を食べたりして祖母を困らせていた。
祖母は大らかな性格ではなかった。むしろ神経質で用心深いタイプだったと思う。
家計簿はきっちりつけて、家の細かなこともしっかりやっていた。亡くなってから日記が出てきて、その細かさに恐ろしさのようなものすら感じた。
私は家計簿はつけられないし、計算も苦手、細々したことは苦手だ。
かといって大らかなタイプかといえば、そうでもないのだけれど。
冷たい布団の中で聞いた、祖母の足踏みミシンの音がまだ耳に残っている。ミシンが終わると昔話のカセットテープを聞きながら眠ろうとしたけれど、なかなか眠れなかった。
ときどき単調なメロディを歌う祖母はどこか淋しげだった。
祖母との記憶はどうしてかいつも秋なのだ。
花言葉 フジバカマ 用心深い
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