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赤いセーター

小学校のころ、どんな服を着たらいいのかわからず、毎日同じような服を着ていた。
中学校ではセーラー服だったけれど休みの日に友達と遊ぶとき、私服に困った。
どんな服を着たらいいのかわからない。自分に似合う服がわからない。自分だけ変な服を着ているのかも。
あまり信じてもらえないかもしれないけれど、割と最近までその恐怖感のようなものが消えなかった。
背も低いし、足も短い。今でもズボンは切らないと履けない。
これが着たい!というよりは、なるべく足が短く見えないように、とか太って見えないように、とか考えて服を選んでいる。
オシャレを楽しむ、ということにはほど遠いかもしれないけれど、自分の見せ方を考えるのは割と楽しいと気づいた。
タンスを開け、冬物の服を眺める。去年買った赤いセーターが目に付いた。少し暗めの赤。袖を通してみて鏡の前に立つ。
なんか違う。最近買った明るめの赤いセーターを眺める。こっちの方がいい。
少し迷ったが去年のセーターは処分しようと思った。多分、もう着ない。
去年の今頃、私は何をしていただろう。グレーばかり着ていた私は、思い切って赤いセーターを買ったはずだった。あのセーターを選んだ私はもうここにはいないんだろうか。
セーターを脱いで床に置いたら、抜け殻みたいだ、と思った。

#冬物 #抜け殻 #赤いセーター #エッセイ

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