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彼は何故みずから手を下したのか?
認知症になったら安楽死を考えている人は多いと思う。私は、今まで認知症の事はチェックリストなどを見ていつ自分がそれになる事を漠然と考えてはいたが、それと安楽死を結びつけてはいなかった。スイスやオランダは国が安楽死を認めていた事は知っていたが、日本では無理かなと何となく思っていました。しかし、そんな悠長な事は言っておれない事がわかってきました。厚労省の推計によると2025年には認知症患者数は、約700万人(軽度認知症は除く)65歳以上の高齢者の5に1人に達する事が見込まれています。私達は、誰もが認知症になりうるし他人事では無いと言うことです。
今後老人は、更に増え続けそれを支える現役世代は減り続けると言う。必要になった人が誰でも手厚い介護を受けられ、且つ介護をする側に十分な報酬が支払われるーーーそんな未来はどんな制度を作ろうともたぶんやって来ないと思う。10年後、20年後の人々には更に厳しい未来予想図がまちうけているのです。
私が何故急に安楽死を考える様になったのかは、葉真中 顕原作「ロストケア」を読んだからなのです。ケアセンターの介護士、斯波宗典(シバムネノリ)は、かって認知症の父親の介護で20代でありながら見た目総白髪のお爺さんの様になってしまった。それ程、介護が過酷で地獄の様な毎日であった事が想像できるでしょう。認知症が比較的に安定した日に父は「もう十分だ、殺してくれ」と彼に言った。できる事なら誰かに代わって欲しかった、もし死神と言うものがどこかにいるなら父の命を奪って欲しかった。この本音は、斯波だけでなく認知症の親を抱えている家族みんなが思っているでしょう。
人間ならば守られるべき尊厳がある、生きながられるだけで尊厳が損なわれる状態に陥っているなら死を与えるべきだ。
斯波宗典は、聖書の『自らして欲しい事を人にせよ』をもとにケアセンターの要介護度が高く身体の不自由な老人41人を毒殺した。彼に容疑がかけられた時、あっさりと殺人をみとめた。
今の日本の法解釈は、積極的に患者を殺す「安楽死」については認めていないが、延命治療を行わない消極的安楽死ーーーーいわゆる尊厳死については事実上認められている。
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【出典】ロスト・ケア(光文社文庫 は 36-1)
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