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融資による資金調達が実現する財務説明資料[サンプル有り]


1.融資獲得の可能性を広げる財務説明資料

(当記事は、中小企業向けに作成されています)
 融資を受けるために金融機関に相談すると、決算書や試算表などの提出が求められます。
 金融機関から言われた通りにそれらの書類を提出するだけでは、十分ではない場合もあります。融資の可能性を少しでも広げるために「財務説明資料」のような資料の作成・提出をおススメしています。
 当記事でサンプル(最下部でサンプルを閲覧できます)として紹介している財務説明資料では、説明文を簡略化したり墨消ししていますが、実際に融資交渉の際に使用した資料です。
 この資料を用いて、年間売上高の約40%に相当する金額の融資を受けることができました。もちろんこの財務説明資料が融資獲得の全ての成功要因ではなく、債務者区分・各財務指標・金融機関との日常取引・これまでの実績など複合的に判断されての結果だと思います。

2.財務説明資料の構成

財務説明資料は大きく分けて以下で構成されています。

(1)前期通期実績
(2)今期実績と通期財務計画
(3)融資対象となる事業の財務計画
それぞれの概要を以下で説明します。

(1)前期通期実績

ここでは、前期の財務状況について記載します。
主な内容は以下の通りです。

  • PLサマリー

  • 売上高推移(過去3期~5期程度)

  • 売上高構成比(複数事業行っている場合)

  • キャッシュフローの状況

今回のサンプルでは記載していませんが、BSサマリー・PLに影響した大きな事業トピック・予実とその差異説明・資金調達の状況などを記載してもいいと思います。

[サンプル_前期通期実績]
[サンプル_前期通期実績]

(2)今期実績と通期財務計画

ここでは、金融機関に融資相談・交渉する時までに確定している今期の財務実績と、期末までの通期財務計画(決算着地見込み)を記載します。
主な内容は以下の通りです。

  • PLサマリー

  • 売上高推移(前期比・予算比)

  • 営業利益推移(前期比・予算比)

  • 売上高・営業利益通期着地見込み(前期比・予算比)

  • 資金繰り実績・計画

ここでの主なポイントは以下の点です。

[月次決算を翌月末までには完成させる]

  • 金融機関に融資相談・交渉する日が属する月の前月又は前々月の月次決算が完了していること。例えば、以下のような日付関係だと、金融機関はどう思うでしょか。2024年5月に相談に来たのに、最新の月次決算が2023年12月だと財務管理が甘く、故に事業計画・財務計画についても信頼性・蓋然性があるのか心配になるのではないでしょうか。こう思われないためにも、月次決算は、遅くとも翌月末には完成させるのがいいと思います。財務管理の強化という意味では、翌月10日以内が理想であると考えています。(上場企業などはもっと早いのが通常ですが)

    • 金融機関へ相談した年月:2024年5月

    • 提出できる最新の月次決算年月:2023年12月度

[財務計画に基づく予実管理ができている]

財務計画を作成している会社は多いと思いますが、それを予実管理として運用できている会社は少ないのではないでしょうか。
月次決算を早めに終わらせて、予実管理を毎月行うことで財務コントロールが行いやすくなったり、決算着地が毎月確認できるようになるため、事業を行う上での意思決定や資金調達タイミングも把握し易くなります。
財務コントロールによる予実差異のブレが小さくなることは、財務計画と事業運営の信頼性が高まり、利害関係者(今回は金融機関を想定)に対しても財務信頼性が増すと考えています。そうすることにより、融資申込・交渉の際に提出する事業計画・財務計画の信頼性も高まり、融資可能性が拡大すると思います。

[サンプル_今期実績と通期財務計画]
[サンプル_今期実績と通期財務計画]

(3)融資対象となる事業の財務計画

ここでは、融資対象となる事業の財務計画などを記載します。
主な内容は以下の通りです。

  • 損益計画・収支計画サマリー

  • 売上高計画(年間推移)

  • 蓋然性の説明(売上高・利益額・利益率)

  • 資金使途・必要額

ここでの主なポイントは以下の点です。

[損益計画・収支計画サマリー]
財務計画(PL・BS・CF)の詳細は別途作成した上で、そのサマリーを表形式で記載します。財務説明資料のサンプルでは、簡易CFを用いていますが、これとは別に、PL計画・BS計画に基づいたCF計画も作成して金融機関に提出しています。
損益計画では、利益がでていて利益率も問題ないかを確認します。
簡易収支計画では、営業利益に減価償却費を加算した「簡易営業CF」と今回の融資の返済額のバランスを確認します。当たり前ですが、借入返済ができる収支計画になっている必要があります。

[蓋然性の説明(売上高・利益額・利益率)]
損益計画の売上高・利益額・利益率について蓋然性がある旨を説明します。
今回のサンプルにはありませんが、売上高・利益額などを構成するKPI計画もあるといいと思います。融資対象事業が既存事業の拡大であれば、その既存事業のKPI実績も重要な資料となります。
蓋然性の説明では、既存事業の拡大であれば既存事業との比較、当社にとって新規事業であれば、その事業を行っている同業他社との比較など様々な手法によってその説明をしていきます。

[その他ポイント]
次の3点を意識しながらそれらを財務説明資料に落とし込みます。

  • 何のために借入するのか:目的

  • 何に使うのか:資金使途

  • 返済できるのか:返済原資

[サンプル_融資対象となる事業の財務計画]
[サンプル_融資対象となる事業の財務計画]

3.融資獲得の可能性を広げるために行う財務管理(管理会計)

財務説明資料を作成するためには、精緻な財務計画の作成とその計画と実績の予実管理による過去実績が重要なデータとなります。
融資を受けようと思ってから財務説明資料を作ろうと思っても過去実績の重要なデータが無いと作成できません。つまり、いずれ必要となる融資のために、

  • 蓋然性がある精緻な財務計画の作成

  • 管理会計による月次決算の早期化

  • 予実管理の運用

  • 金融機関への定期的なレポーティング(試算表を送るだけではダメ)

などを作成・運用しておく必要があります。これらを日々行うことで、融資が必要になった際に、すぐに財務説明資料の作成が可能になり、融資獲得の可能性が広がると考えています。

4.財務説明資料のサンプル


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