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【経済を詳しく見よう!】 財務諸表とは②〜財務諸表の解説(資産編)〜

 前回は、財務諸表の役割とどういった決まりで財務諸表が作られているのかといった基本的知識を解説してきました。

 今回は、財務諸表では一体何を書かれているのかを解説していけたらなと思います。

1. 貸借対照表とは

 貸借対照表(バランスシート)は、会社の財務状態を表します。

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 上側の図表は、右側が資金の調達源泉を示し、左側が調達した資金をどの資産にどれくらい投下しているかを表し、全ての資産を指しています。

 下側の図表は、右側を見ると資金の調達は負債と資本の2通りの方式があることを示します。

 負債の代表例として「借入金」です。これに対して、資本の代表例は「資本金」です。

 負債と資本の違いは、負債は期日までに返済しなければいけませんが、資本は株式などによって調達したもので返済不要です。

 負債や資本で調達した資金は、左側の資産で運用します。資本はいわゆる会社の財産です。

 企業が調達した資金は資産に投下していることから、資産は負債と資本の合計に等しく次の式が成り立ちます。

資産=負債+資本

 この式を貸借対照表等式と言います。

例えば資本金100万円で会社を設立して、商品を20万円で仕入れて、商品を25万円で売り現金を回収した例を見てみると

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 このように常に、資産(左側)=負債+資本(右側)が成り立っています。

2. 貸借対照表の形式

 貸借対照表には勘定式と報告式の2つの形式があります。

 勘定式は株主総会の資料や決算公告などで見受けられます。T字型の表に資産、負債・資本を左右に並べたものです。(下の図表参考)

 これに対して、報告式は盾に資産、負債、資本の順に記した形式で、有価証券報告書、新株発行に関する目論見書などで使われます。

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 次に配列方法のルールを説明に入ります。流動性配列法と固定性配列法の2つがあります。流動性とは、お金に換えやすい、換金性が高いものということです。

 流動性配列法とは、換金性の高い項目から並べます。すなわち[借方]では、流動資産→固定資産、[貸方]では流動負債→固定負債、資本の順で並んでいきます。多くの企業がこの流動性配列法で作成します。

 固定性配列とは、固定性の大きい順番に記されていきます。[借方]では、固定資産→流動資産、[貸方]では固定負債→流動負債、資本の順で並びます。この方式は、電力会社などの固定資産が大きい企業が使います。

3. 資産の主な項目

 資産は流動資産、固定資産、繰延資産の3つに大きく分けられます。

 まず流動資産は、製造した製品やサービスの対価として発生した受取手形、売掛金、現金などの残高を示します。

 流動資産は、大きく分けて当座預金と棚卸資産、繰延税金資産があります。

当座預金・・・現金預金、受取手形、売掛金、有価証券
棚卸資産・・・商品、製品、原材料、仕掛品

 次に固定資産は、工場の機械などの生産設備や店舗など長く続けるもので長期に固定した資産のことを指します。

 また、流動資産と固定資産の区別法には、「営業循環基準」「1年基準」等位尺度で区別します。

 営業循環基準とは、原材料を購入し、製品を製造、販売して代金を回収するという、企業の営業活動の循環過程に入っている資産は、流動資産とする基準です。

 1年基準とは、決算日の翌日から1年以内に現金化する資産を流動資産とし、それ以外を固定資産とする基準です。

 つまり、営業循環に入っている資産は流動資産になり、営業循環に入っていない資産は、1年基準で流動化固定に分類します。

 繰延資産は、支出した時に一度に費用処理せず、数期に分けて費用とするものです。正確に損益を計算するという狙いがあります。

 株式交付費、社債発行費、創立費、開業費、開発費があります。そして、繰延税金資産は流動資産、固定資産にそれぞれ記載されていますが、税効果会計で扱います。

 資産を大別して貨幣性資産費用性資産に分ける考え方も重要です。

 貨幣性資産・・・現金、預金、売掛金、受取手形など
 費用性資産・・・棚卸資産、建物

 棚卸資産は売上原価、建物は減価償却費として将来は費用になるからです。

 このように資産とは「現在と将来の現金」「将来の費用」と二面性があります。

4. 当座資産

 当座資産のと特徴は、短い期間で現金に変えられる点です。

 当座資産・・・現金、預金、受取手形、売掛金、有価証券

 換金性が高い特徴があり、会社の短期の支払い能力の大きさを示します。債権者の立場からすると当座資産が充足しているかどうかという点に関心を払います。

現金・・・会社の手元にある現金のこと。通貨及び当座小切手、郵便為替証書、配当金領収書、期限到来後の公社債利札など
預金・・・金融機関に対する預金、貯金など。最も一般的なものは当座預金
受取手形・・・取引先との営業取引に基づいて発生した、手形法上の債権を指します。
売掛金・・・これも取引先との間で発生した営業上の未収金です。商品を販売した際、一般的には代金をすぐに受け取らず、掛け売りにしておいて、後日回収します。
有価証券・・・流動資産に記載する有価証券には販売目的として保有する株式、債券などのほかに決算日1年以内に満期が来る債券も含みます。これら以外の有価証券は固定資産の「投資その他の資産」に記載します。

5.棚卸資産と売上原価

 棚卸資産という名称は、その残高が棚卸し(倉庫にある商品、製品などの数量など)によって確認されることによります。

 棚卸資産の内容は、商業と製造業では異なります。商業では他の企業から仕入れた商品を販売するのに対して、製造業では原料を仕入れ、これを加工して製品として販売します。

 よって、棚卸資産の内容は、商業では商品などですが、製造業では製品、半製品、原材料、仕掛品などになります。

 半製品とは、製造過程で得られるもので、完成品ではありませんが販売できるものになります。仕掛品とは、加工中の段階にあるもので、半製品と違って販売できません。

 会社が仕入れた商品や生産した製品は、販売が実現した時に売上原価として費用計上します。期末に残った分は棚卸資産として時期に繰り越します。

 言い換えれば、次期以降の収益に対応する費用は、資産(棚卸資産)として時期に繰り越します。これを「原価配分の原則」と言います。

 企業会計では、棚卸資産の原価を「当期に配分する部分」と「次期以降に配分する部分」に分けることが重要です。

 次期以降分を増やせば、当期分が小さくなります。当期分が小さくなれば売上原価が小さくなるわけですから、売上総利益(粗利益)は大きくなります。

 逆に次期以降分を減らせば、当期の売り上げ原価が大きくなり売上総利益は減少します。つまり、棚卸資産の金額をいくらにするかで売上総利益は変わるのです。

 当期に払い出した棚卸資産及び期末に残った棚卸資産の金額は「数量×単価」で計算します。

 数量の計算方法には継続記録法と棚卸計算法があります。棚卸資産の受け入れと払い出しをその都度帳簿に記録するのが継続記録法

 期中では受け入れ数量だけを記録し、期末に実地棚卸を行なって在庫数量を確認するのが棚卸計算法です。

 実務では継続記録法と棚卸計算法を併用します。実地棚卸で紛失など商品の図雨量不足が生じると棚卸減耗損として計上します。

単価の計算方法には、個別法、先入先出法、総平均法などがあります。

個別法・・・異なる値段のものを区別して管理し、払い出すたびにそれぞれの取得原価を確認する方法です。宝石など高価でここに在庫管理ができるものに適した評価方法です。
先入先出法・・・先に取得した分から順に払い出されると考えて計算します。費用がものの流れと一致する他、期末の棚卸資産価格が時価に近くなり、期末の財政状態を適切に表す利点があります。価値上昇時には安値で取得した在庫から先に払い出されるため利益が大きくなり、逆に価格下落時には利益が小さくなります。
後入先出法・・・後から受け入れたものから順次払い出されるとして計算します。売上高に対応する費用が時価に近くなります。先入先出法に比べて、価格上昇時には利益が小さく、価格下落時には利益が大きくなり、損益計算から価格変動の影響を除くことができる利点があります。しかし、ものの流れが一致しない他、棚卸資産価額が時価と乖離する問題があります。
平均原価法・・・取得した棚卸資産の平均価格を計算し、その平均価格で期末の棚卸資産価額を決める方法です。総平均法(取得した合計金額を数量の合計で割って平均単価を計算)と移動平均法(取得の都度平均単価を計算し、その平均単価で次の払い出しを記録)があります。
売価還元法・・・扱い品目が多い小売業や卸業で使われる方法です。売価から逆算して期末の棚卸資産価額を計算します。商品をグループ分けして売価に一定の減価率を乗じて計算します。

 以下のような方法で、棚卸資産の原価を「当期に配分する部分」と「次期以降に配分する部分」に分けます。後者は末期の棚卸資産残高になります。

 しかし、この金額をそのまま貸借対照表の棚卸資産の評価額にするとは限りません。まず棚卸減耗があれば損失計上します。

 次に、時価が下がった時は評価額を修正し評価損を計上します。

 これを「収益性の低下による簿価切り下げの方法」と呼びます。

6. 設備投資と固定資産

 商業よりも、製造業では機械や装置などの固定資産の金額が大きくなります。

 固定資産に対する投資を設備投資と言います。

 企業にとって、設備投資は将来の収益を決める製麺制となる重要なものです。

 固定資産は、有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産の3つに分かれます。

有形固定資産・・・建物、構築物(橋、軌道、煙突など土地に定着した工作物)、機械装置(機械などの高額でないもので耐久年数が1年以上のもの)、車両運搬具、工具器具備品、土地、建設仮勘定(建設中の建物、完成すれば各資産に振り替え、工事前払金など)

 一定の方法で減価償却をし減価償却費を費用として各決算期に計上します。ただし、建設仮勘定は減価償却をしないといった特徴があります。

無形固定資産・・・法律上の権利(特許権、実用新案権、意匠権、商標権、工業圏、漁業権、借地権など)、のれん、ソフトウェア

 のれんは、ある会社が他の会社に比べて超過収益力を持つ場合、その超過収益力を資産として計上します。のれんを計上できるのは、有償で取得した場合や合併した場合に限ります。

 無形固定資産も有形固定資産と同様に償却しなければなりません。法律上の権利は、税法上の償却期間を上限に償却します。のれんは、20年以内に規則的に償却します。そして、無形固定資産の残存価額はゼロです。

投資その他の資産・・・関係会社株式、投資有価証券、出資金、長期貸付金、繰延税金資産など

7. 減価償却制度

 有形固定資産は、繰り返し受かったり時間が経ったりするにつれて価値が落ちてきます。この価値が下がった分を費用として認識するのが減価償却費です。

 減価償却費を計算するには、取得原価、残存価額、耐用年数の3つが必要です。

取得原価・・・その資産の購入代金に付随する費用を加えた金額
残存価額・・・有形固定資産が使用不能になった時の処分価格
耐用年数・・・会社が使用可能期間を予測し自主的に決めるのが原則。ただし、税法上に定められた法定耐用年数を多くの会社が使用

 減価償却方法には、定額法、定率法、級数法、生産高比例法などがあります。

 定額法で求めた減価償却費=(取得原価ー残存価額)÷耐用年数

 定額法は、機能的原価が安定的な資産に適します。

定率法で求めた減価償却費=(取得原価ー減価償却累計額)×償却率

 定率法は、初期に減価償却費が膨らんで利益を圧迫するが、利益が減る分節税につながります。

生産高比例法で求めた減価償却費=(取得原価ー残存価額)×当期利用高÷総利用可能高

 利用時間や生産量が予測できる固定資産(航空機、自動車など)に使います。

 定率法の式で出てきた償却率とは、現状の定率法「200%定率法」で使われており、償却率は次の式で求められます。

償却率=(1÷耐用年数)×2.0

減価償却は会社の損益を計算する上で費用配分を適切に行う役割があります。さらに、他の費用と違ってお金の支払いが生じない費用です。

減価償却の記載例として以下のようになります。

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8. 有価証券と金融商品会計

 2001年から金融商品会計基準が導入され、一部の金融商品は時価評価します。この基準を適用する金融商品は、有価証券だけでなく、金銭債権、金銭債務を含みます。

 貸借対照表で時価評価するのは「売買目的有価証券」「その他有価証券」「デリバティブ取引」などに限定します。

売買目的有価証券・・・時価の変動によって利益を得ることを目的とする有価証券。期末時に時価評価し、評価差額は損益として処理します。損益計算書の営業外損益に計上します。
満期保有目的の債券・・・満期まで所有する目的で保有する社債その他の債券です。時価評価せずに、取得原価で貸借対照表に計上します。ただし、債券を債券金額(額面)よりも低い・高い価額で取得したときは、その差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて貸借対照表価額を決めます。

 償却原価法とは、債券を額面金額より低い・高い価額で取得した場合、その差額を償還期限まで毎期一定の方法で取得価額に加減することを言います。

子会社株式・関連会社株式・・・時価評価せず、取得原価で貸借対照表に計上します。
その他有価証券(持ち合い株式)・・・売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式・関連会社株式以外の有価証券をいいます。

 その他有価証券は、全部純資産直入法で期末に時価評価します。全部純資産直入法とは次のように評価していきます。

 取得原価2000円の株式が期末に2500円になったとします(税率40%)。資産側の有価証券の貸借対照表価額を500円増やします。一方で評価差額の500円のうち40%の200円を繰延税金負債(将来の税負担)として負債計上し、残り300円をその他有価証券評価差額金として純資産の部に計上します。

 逆に期末に1500円に値下がりした場合は、資産側の有価証券の貸借対照表価額を500円減らします。同時に200円の繰延税金資産(将来の税負担の軽減)を資産計上し、その他有価証券評価差額金のー300円を純資産の部に計上します。

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※左図が値下がり場合、右図が値上がりした場合

時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券・・・その他有価証券に含まれ、市場価格がなく、時価を合理的に算出できない有価証券。取得原価または償却原価法に基づいて算定された価額で計上します。
時価が著しく下落した場合・・・満期保有目的の債券、子会社株式・関連会社株式、その他有価証券のうち時価が把握できるものについて、時価が著しく下落したときは回復する見込みがあると認められる時を除き、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損失として処理しなければいけません(「有価証券の減損処理」)。減損処理した場合、時価で簿価を付け替えて取得原価を修正します。
有価証券の表示区分・・・貸借対照表では売買目的有価証券、1年以内に満期の到来する社債その他債券は、流動資産に有価証券として表示します。それ以外の有価証券は固定資産の「投資その他の資産」に表示します。

9. 繰延資産

 繰延資産とは、支出額を全額当期の費用とせず、その他が及ぶ時期以降にも配分(繰り延べ)できる資産をいいます。

 企業会計基準委員会によると繰延資産には、株式交付費、社債発行費、創立費、開業費、開発費の5があります。

株式交付費・・・新株発行または自己株式の処分で支出した費用です。会社設立時に発行する株式の費用は創立費に含めます。3年以内に定額法で償却します。
社債発行費等・・・社債発行費は社債発行で支出した費用です。社債の償還までの期間にわたり利息法または定額法で償却します。新株予約権の発行費用は3年以内に定額法で償却します。
創立費・・・会社設立のために支出した費用です。5年以内に定額法で償却します。
開業費・・・会社の成立後、営業開始までに支出した費用です。開業から5年以内に定額法で償却します。
開発費・・・新技術または新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓等のために支出した費用、生産能率向上または生産計画の変更等により、設備の大規模な配置換えを行なった場合の費用です。5年以内に定額法その他の合理的な方法により規則的に償却します。

 次回は、「財務諸表の解説 負債・純資産の部」をしていきます。





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