どの国が権力を持つのか?【中央銀行デジタル通貨(CBDC)覇権】
こんにちは。
今回は今ホットな冬季北京オリンピックで、解禁された「デジタル人民元」のデジタル通貨についてです。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは何?
デジタル通貨と聞けば、「LINE PayとかPayPay、Suicaとかもうあるじゃん」と思うかもしれません。
しかし、中央銀行デジタル通貨はそれとは1点大きく異なります。
国(中央銀行)が中心とる通貨です。
CBDCとは、Central Bank Digital Currency(中央銀行デジタル通貨)の略です。
今までのデジタル形態通貨とはどんなものだったでしょうか?
電子マネー
ここで言う電子マネーとは、QR・バーコード決済(PayPayなど)や銀行口座連結型決済(iDなど)、交通系IC(Suicaなど)を示します。
電子マネーとは、基本原則としてチャージをした額の利用になります。そこからiDなどの銀行口座連結型の決済が出てきました。また、さらに送金機能が付いたQR・バーコード決済のアプリが出てきました。
これらは、日常生活において非常に便利で多くの企業が進出してきました。
しかし、チャージ上限と送金上限、さらに加盟店のみの利用と限界があります。
仮想通貨(暗号資産)
仮想通貨(暗号資産)とは、有名なものでビットコインなどがあります。
ブロックチェーンによって安全性が高いもので、国家を超えて安価な手数料で送金することもできます。
しかし、支払い機能はありません。理由として、投機目的によって、価値の安定性が薄いのです(ボラリティーが高い)。
※ブロックチェーンとは、複数のブロック(データの管理場所)がチェーンのように繋がっています。
ステーブルコイン
ステーブルコインは、あまり聞いたことがない人が多いかと思います。しかし、多くの種類がすでにあります。一番有名なものでは、Facebookが発行している「diem」があります。
ステーブルコインは、仮想通貨の一種ですが、通貨を裏付けにした価値が安定している(ボラリティーが安定している)ものです。
「$1⇄1ステーブルコイン」のように
裏付けされた通貨によって、流通量で相場を安定させています。
Facebookで有名なのは、「Libra(リブラ)」だと思います。
リブラとは、Facebookという一般企業が発行するデジタル通貨です。
Facebookの利用者25億人に流通させようとしたが、アメリカ国家の権力によって、頓挫しました。
その結果、diemに変更となったのです。
これは、アメリカだけではありません。「アリペイ(支付宝:Alipay)」を展開しているアリババ傘下のアントグループの上場(IPO)を中国政府が中止に追い込み、中国政府はデジタル人民元を2022年冬季北京オリンピックで実現させると発表しました。
なぜ、デジタル通貨の発行は権力と利益に関わるのだろうか?
この答えは、最後に記述したいと思います。
CBDC(中央銀行デジタル通貨)
CBDCは、中央銀行が発行するステーブルコインです。
では、どんなメリットがあるのでしょうか?見ていきましょう。
銀行とは、金利が付くから預金をしていました。
しかし、今の金利はほとんど0%です。
では、なぜ人々は銀行に預金するのでしょうか?
保管・決済・送金(他への振込)という機能が便利であるからです。
電子マネーなどに比べて保管金額には上限もなく、送金も上限はありません。
現状何も不自由がないと思っていませんか?
しかし、世界には銀行口座を持っていない人は17億人いると言われています。
17億人の中で、スマホを持っている人は、10億人と言われています。
貧困層は、海外に出稼ぎに行き、スマホ1台で仕事を獲得しています。
しかし、本国にいる家族に送金したいと思っていも銀行口座を持っていないため、お金を送ることができないのです。
また、口座を持っている貧困層でも銀行を介した海外送金は多くの手数料が取られます。そして、振り込まれるのに日数間の日数も掛かります。
ここで、出てくるのがCBDCです。
CBDCは、スマホ一台で手数料が一切かからずに、即日に送金できるのです。
CBDCは、貧困層にとって便利なだけではありません。
企業は、日常的に海外送金をしますが、CBDCは手数料がかからないためコスト削減ができます。
また、裕福層・銀行は一国の銀行に預けるのはリスクがあります。
例えば、経済危機が起きた時、預金から数十%を取り押さえられます。さらに、節税対策として海外の銀行を利用している人も多くいます。
これらを資産逃避と言います。
そこで、便利なのがCBDCです。
預金の取り押さえが発表された瞬間に、CBDCは送金できるのです。
現状、大々的にCBDCを実装開始したのは中国のみです。
では、なぜ他の国はやらないのでしょうか?
銀行問題とCBDCの導入の危険性
銀行問題
CBDCを実現すると、市中銀行(メガバンクや都市銀行、地方銀行など)の意義性がなくなると言われています。
銀行はお金貸し業で利益を得ています。しかし、国民や企業の預金を全て引き出されCBDCに換えられると銀行は貸すお金がなくなり、巨額な利益を失います。
なぜ、中国が成功したかは、中国の一党政治の権力があるからです。
例えば、デジタル円が開発された時を考えてください。
銀行を守るために、デジタル円の送金上限を決めると、デジタル円を使うメリットはあるのだろうか?
答えはメリットが薄いと言えます。上限があるんだったら、他のデジタル通貨を使う人が多いでしょう。
そこで、銀行は今後どうすべきなのか?
・銀行の数行と中央銀行が手を組みCBDCのアプリを開発する。
しかし、それは本当に銀行が儲かるのでしょうか?
→手数料を取ると国際的に負けたCBDCになる。
→つまり、利子や決済手数料で儲けられなくなります。
では、銀行はどのような形態で生き残るのか?
→自己資本でお金を貸す(ナローバンク)になるのではないか。
CBDCの導入の危険性 〜情報の匿名性〜
ブロックチェーンは、匿名で送金ができるという特徴があります。
しかし、CBDCで匿名性を使うと危険があります。
犯罪に利用することができます。
デジタルで匿名で多額な資金を送ることができるため、マネーロンダリングが可能になります。
暴力団の資金調達にもなり得ます。
CBDCは、ある程度のお金の流れを確認する必要があります。本人確認や個人情報をどれだけ必要になるのかが検討する必要があるのかもしれません。
CBDCの恩恵
さて、先ほどアメリカや中国がFacebookやアントグループを止めた理由を紐解いていきましょう。
CBDCの恩恵は大きく分けて3つあります。
①金融政策(権力)
②利用データ(情報)
③経済圏(市場)
①金融政策(権力)
現状政府は、金利や通貨供給量を調整する金融政策によって物価の安定・経済の安定を図っています。
企業が発行したデジタル通貨がその国に普及すると、政府が金融政策をすることができなくなります。すなわち、政府主体で物価や経済を動かすことができなくなるのです。
では、中央銀行が発行するCBDCには、その金融政策がどう恩恵を得られるのでしょうか。
例えば、デジタル人民元が東南アジアに普及した場合、中国はその普及した東南アジアにも金融政策をすることができるのです。
すなわち、普及しているエリアの物価・経済をCBDCの発行国によって、動かすことができるのです。
②利用データ(情報)
現状、GAFAなどのメガテック企業によって、莫大な顧客情報を持っていかれています。
国家がCBDCを発行して流通すると、お金の流れや個人情報を持つということになります。
国家がその情報を持つと、犯罪者の資金の流れを断つことやアプリを通じて誰がどこにいるのかを確認することができるようになる可能性があります。
③経済圏(市場)
例えば、デジタル人民元が東南アジアの人々に普及した場合、東南アジアでもデジタル人民元を使えるようになるでしょう。
その場合、中国(人口約14億人)+東南アジア(人口約6億人)の市場を獲得することになります。
現状、14億人にしかアプローチできなかった人民元が、20億人の人口にアプローチすることができるのです。