【BATH】アリババ(阿里巴巴集団)の強さ
こんにちは。アクセスありがとうございます。
今回は、前回のAmazonと対比される中国企業、アリババについてみていきましょう。その前にアリババと対比されるAmazonについての記事もぜひ読んで見てください。
中国の新たなインフラ社会
アリババの事業の柱は、もちろんECサイトですが、BtoB取引(企業間取引)の「アリババドットコム」、CtoC(顧客間取引)の「淘宝網市場(タオバオマーケットプレイス)」、中国国内のBtoC(企業顧客取引)の「天猫(Tモール)」その国際版「天猫国際(Tモールグローバル)」など複数の事業を展開しています。アリババは、これだけではなく、物流事業やリアル店舗、クラウドサービス、金融事業などに事業拡大しています。そして、GAFA・BATHの中で、最も情報公開が進んでいる企業として評価できます。
ECサイトの「タオバオ」・「Tモール」
アリババのECサイト事業のイメージは、タオバオは、ヤフオクやメルカリのようなフリマのようなもので、Tモールは、楽天市場のようなものと考えてください。Amazonと比べると、Amazonは直販型(仕入れと販売両方自社で行う)が主体ですが、アリババはマーケットプレイス型が主体です。Tモールに出店する企業やタオバオを利用する個人をサポートするビジネスモデルと言えます。
タオバオは、ビッグデータ分析によってユーザーごとに最適されたショッピング体験ができるというのがウリで、Amazonよりも新しいサービスを提供しています。通販ライブ動画は、アリババのタオバオで初めて開始したものです。ECサイトの累計流通額は4兆8200億人民元(約78兆円)に達し世界のEC企業の中でも突出した数字を出しています。
スーパーマーケット「フーマー」
アリババは、AmazonよりもOMO(Online Merges Offline:オンラインとオフラインの融合)が推進されています。アリババが展開するスーパーマーケット「盒馬生鮮(フーマーフレッシュ)」は、リアル店舗ですが、アリババの財務諸表ではEC事業と位置づけされています。フーマーの特徴は、会員制でスマホアプリでの会員登録が必要になります。つまり、アプリを通じて来店履歴や商品購入履歴などのデータを獲得できます。
データを集め、解析することによって仕入れを最適化し、常に新鮮な生鮮食品を扱うことができます。さらに全ての商品にQRコードがついており、スキャンすると商品流通経路などを全て確認することができます。このような徹底したトレーサビリティーに注力することで消費者から高い支持を得ています。
支払いは、アリババグループのモバイル決済「アリペイ」を使うことが主流です。テクノロジーの活用はこれだけでなく、スマホから商品を注文して宅配することもできます。このサービスは、店舗から3kmまでの圏内ならば30分以内に店頭にある商品は無料配達できます。
1店舗あたり平均日販は約1360万円に上り、年間50億近い売り上げを叩き出しています。そして、驚くことに売り上げの6割はオンライン経由です。
フーマーは、新しいEX(顧客体験価値)を提供する点でユニークなサービスを提供しています。店頭で買った商品をその場で料理してもらい、店内で食事することができます。このサービスは「グローサラント」と呼ばれ、グローサラントは、鮮度などを確かめる機会や街中のレストランでは高い価格ですが、フーまーではリーズナブルな価格で提供でき消費者に人気なサービスとなっています。
地域活性化事業「農村タオバオ」
中国はご存知の通り、広大な国土を持っているため、物流ネットワークが整備されていない地域も多く、それらの地域の人々は、質の高いサービスや製品を購入するために都会に出る必要がありました。また、これらの地域は低所得で貧しい暮らしを強いられていました。この問題を解決するものが、地域活性化事業「農村タオバオ」です。
農村タオバオは、ネット普及率の低い農村部で買い手と売り手の両方を対象としたサービスを提供する拠点で1万6500の村(27省333郡)に農村タオバオの拠点があります(2016年)。
このサービスでは、買い手がスマホなどで商品を注文すると近所の農村タオバオで受け取ることができます。地域の農民は売り手にもなります。農村タオバオを拠点として、農作物などの地元の特産物をネットを通じて全国に販売することができるのです。つまり、農村タオバオは、「ECの配送拠点」であり「地元のコンビニ」という立ち位置にいるのです。農村タオバオは、地元の若者によって運営されており、地域にとっては雇用の受け皿かつ若者の流出を防ぐものにもなっています。農村タオバオは、中国の地域活性化に欠くことができないインフラになっています。
物流サービス「ツァイニャオネットワーク」
アリババグループでの流通事業を担うのは「菜鳥(ツァイニャオ)ネットワーク」という会社です。ツァイニャオの倉庫の様子は動画で見ることができ、最先端のテクノロジーが投入されており、Amazonの倉庫よりもテクノロジーが進んで言えます。敷地内では、自動化が進んでおり無人運転ロボットが商品を運んだ理しています。ツァイニャオのビジョンは、「中国の国内はどこでも24時間以内、世界中どこでも72時間内に配達できる」物流ネットワークを構築するとしています。
モバイル決済「アリペイ」
モバイル決済サービス「アリペイ」は中国で浸透しきっており、大都市圏ではアリペイでなければ支払いできないショッピングが多くあります。アリペイのスマホサービスでは、直接的にアリババグループの銀行、証券、保険。投資信託などの金融サービスが使えるようになっており、かつEC事業のサービスもありペイのアプリから利用可能です。人々の生活になくてはならない決算手段となったアリペイのアプリがアリババグループのサービスなどへの入り口になっており、非常な強みとなっています。
そして、アリババはアリペイを介して蓄積した大量の購買データや決済データ、グループ内ビッグデータを活用し、個人の信用力を定量化・可視化する「芝麻信用(ジーマクレジット)」というサービスも生み出しています。
アリババクラウド
アリババクラウドは、中国市場でナンバーワンのシェアを持っています。アリババクラウドは、AWS(Amazon Web Service)と同等レベルのインフラを持ち、アリババクラウドを利用する企業はデータストレージとしてはもちろん、AIアプリケーション開発やAIによるディープラーニングといった機能も利用可能です。
自動車や都市をスマート化する「アリOS」
アリババには、Amazonのアレクサに匹敵するオープンプラットフォームもあります。モバイル機器やスピーカー、家電製品、自動車などにアリOSを搭載すると様々なモノをIoT(Internet of Things)化する基本ソフトです。今後アリOSが使われるものとして、自動運転に限らず、交通・水道・エネルギーといったインフラなど都市に関する全てを数値化し、ビッグデータで分析して渋滞の解消、警察や救急対応などに対して最適なソリューションを提供することに使われます。
アリババの経営者
アリババのビジョンとは、「2020年までにアリババの流通総額を1兆ドルにまで伸ばし、米国、中国、欧州、日本に次ぐ世界5位の経済プラットフォームを構築する」「2036年までに世界で1億人の雇用を創出し、20億人の消費者にサービスを提供し、100万社の中小企業がアリババのプラットフォーム上でビジネスができるようにする」というものです。そのビジョンの先にあるのは、「社会的問題をインフラ構築で解決する」というものです。経営者のジャック・マーは、「中国のため」「世界をより良い場所にするため」といった発言を繰り返しほとんどを実現させてきました。そして、ジャック・マーは、今後、従来のオンライビジネスが消滅し代わりにOMO(オンラインとオフラインの融合)したニューリテール(新しい小売)が台頭すると語り、実際にフーマーなどの新しいテクノロジーを使った「リアルワールド×サイバーワールド」を猛スピードで進めています。
アリババの売り上げ
アリババとAmazonの売上高営業利益率には大きく違いがあります。ここでは、Amazonについてはあまり触れません。アリババの売上高営業利益率を見ると、ECでは、47%と約半分の収益を上げています。他は、アリババクラウドはマイナス10%、デジタルメディア&エンターテイメントはマイナス52%、その他マイナス114%となっています。つまり、アリババは、ECで利益を上げ、その儲けをその他の事業に投資しているのです。これに対して、Amazonは、AWSで大きく利益を稼ぎ、そのほかの領域の利益率をカバーしているのです。