EV化と日本の葛藤
こんにちは。
最近、自動車のEV化が話題になっています。
ところで、自動車の話題では、「EV」、「HV」、「PHV」、「FCV」とか様々な用語が飛び交っています。
それぞれ意味を知っていますか?
EV (Electric Vehicle)
自宅や充電スタンドなどで車載バッテリーに充電を行い、モーターを動力として走行します。エンジンを使用しないので、走行中に二酸化炭素を排出せず、環境性能においてはエコカーの中でもトップクラスといえます。
HV (Hybrid Vehicle)
「パラレル方式」、「シリーズ・パラレル(スプリット)方式」、「シリーズ方式」に分類可能です。
パラレル方式はエンジン駆動が主体のシステムで、発進・低速時などのエンジンが苦手とする領域でモーターによる補助を行います。
シリーズ・パラレル方式は、エンジンとモーターの動力を使い分けられるタイプです。発進・低速時はモーターのみ、通常走行時はエンジン主体、急加速時はエンジン+モーターなどと、走行シーンに合わせてエネルギー効率の最大化を図ります。
シリーズ方式はエンジンを発電のためだけに使用し、駆動にはモーターを使用するシステムです。方式によってそれぞれ走行特性が異なるので覚えておくとよいでしょう。
PHV (Plug-in Hybrid Vehicle)
HVのモーターを動かすバッテリーは、走行時、減速時のエネルギーを利用して自動的に充電する仕組みになっており、自由に充電することはできません。
これを自宅などで自分の好きなときに充電できるようにしたものと考えればよいでしょう。ちなみにメーカーによっては「PHEV」という呼称を使用するケースもあります。
FCV (Fuel Cell Vehicle)
燃料電池は水素と酸素の化学反応から電力を取り出す発電機構で、これで得られた電力をモーターへと送り、動力として使用するのがFCVです。
エンジンを使用しないので、二酸化炭素の排出量はもちろんゼロです。水素という新たな燃料を使用する点などを踏まえ、「MIRAI」というFCVを販売しているトヨタは、究極のエコカーとも称しています。
EV化によるエンジン不要
日本の99.7%が中小企業です。
日本の中小企業の多くが自動車の部品など自動車産業の一員です。
ここに問題があるのです。
EVは、エンジンを搭載していません。蓄電池に電気をため、電気でモーターを動かして自動車を動かします。
エンジン部品の企業は数百から数千まであります。
エンジンを搭載しないEVが世の中を席巻すれば、エンジン部品だけしか取り扱っていない中小企業は倒産してしまいます。
これは雇用面と経済面で大きな打撃を受けます。
蓄電池の問題
蓄電池は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池を使います。
ニッケル水素電池の原料であるニッケル(Ni)は地球上で5番目に多いもの安価です。しかし、リチウムイオン電池と比べて大きくて重たく、充電に時間がかかります。
一方で、リチウムイオン電池の原料となるリチウム(Li)やコバルト(Co)の原料不足によってとても高価なものになります。
その中でも、コバルトは紛争鉱物と呼ばれます。
一番多く取れるのは、コンゴ民主共和国です。
コンゴではコバルトを巡り紛争が多く起きています。
さらに、コバルトは危険な鉱物であり、防護服などが必要です。
しかし、発展途上国であるコンゴ民主共和国ではそのような設備がなく、
日当200円程度で子供が採掘しているのが現状です。
また、蓄電池の日本市場は、中国によってすでに奪われています。
そこに新規参入する日系企業はすでに手遅れな状態にあります。
電力問題
日本の電力構成の割合は次のようになっています。
多くの電力は火力発電によって賄われています。
自動車を電力で動かすとなると、さらに電力が必要となってきます。
トヨタの会長が次のように述べています。
原子力や火力発電は、共に世界はやめていく方針を立てています。
例えば、2011年福島原発事故を受けて、ドイツ、スイス、韓国、台湾では脱原発の方針を立てました。
さらに火力発電は、脱炭素実現に向けて、石炭火力発電の割合を下げていくことを欧米側が進めています。さらにG7での合意をまとめさせようと動きを加速化させています。(日本だけ反対)
日本政府が進めるEV化の実現に向けて、どのように電力を賄っていくのかが今後のポイントになるでしょ。
【参考文献】
・アスエネメディア「【2022年最新】日本における発電の割合は?再エネ発電普及のポイントを解説」
・ウィキペディア「コバルト」「リチウム」
・KEYENCE「電気自動車(EV)普及の鍵を握るバッテリー生産とリサイクルの課題(1/2)」
・経済産業省資源エネルギー庁「集計結果又は推計結果『時系列表』」
・自工会 豊田会長「すべてEV化ならピーク発電10~15%増必要」…性急な電動化論に危機感
・日本経済新聞「「脱石炭」孤立深まる日本 G7、米独が歩み寄り 「全廃」削除要求は1カ国」 2022/05/22
・三井ダイレクト損保「「HV」「EV」「PHV」「FCV」とは? いまさら聞けないエコカー用語」