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「喫茶ランドリー」はやっぱりヤバい?コロナ禍で結婚式も開催.全部受け入れたら、実はこんな感じでした.今だから伝えられるコロナ禍レポ.
今日の今日まで開け続けました
思えば、コロナがはじまったのは2019年12月ごろ。日を追うごとにただごとではない空気が増していったあの感触は、改めて今思い起こすと、やはり一度も体験したことない空気感でした。皆それぞれに振り回されました。
「喫茶ランドリー」とて同じだったわけですが、実は「喫茶ランドリー」(森下両国)は当時、まわりのお店がほとんどお休みとする中、開け続けていきました。今日の今日まで。下は当時、第1回の緊急事態宣言がはじまって、1ヶ月後のレポート。
それから2年以上が経ちました。その間、4回の緊急事態宣言と2回まん延防止等重点措置。おかげで、来店客が激減の中、開け続けていった先に何が起きていたのか!? 今回は、SNSで発信していなかったことも含めて、コロナ禍その後のレポートまとめです。
「ひと」は「ひと」を求めていた
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いやしかし。今でも思い出します。2020年4月、5月、最高に心地良い季節に誰もこない。むろん売上がとんでもないことになったことは言うまでもありません。自粛生活がうたわれるなか、僕は毎日通ってはこの光景を眺めながら仕事をしていました。
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それでも、ぽつぽつと。1日3人の日もあったけど、ぽつぽつと。
自粛警察なんて言葉もありました。席にバッテン貼ったり(今でもあるか)。そんなものはいらない。お互いに想い合いながら距離感取ろうねって秩序は「喫茶ランドリー」ではいつのまにか普通になっていました。それはきっとひととひとが会えるリアルな環境があったからでした。みんなリアルな身体的な体験を元に自分自身で考えていました。
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コロナ禍直後にはじまった軒先マルシェ。お家の近くで買えるからと、少しずつお客さんが増えていきました。ちょっとしたスモールトークで元気もらって帰る感じ。
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実は当時、ロケ撮影をされる皆さんが、場所に困られていました。コロナで貸してくれない場所が増えたと。「喫茶ランドリー」はむしろウェルカムで、どんどん使っていただきました。
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個人や企業のクリエイティブ、制作活動も、長引くコロナで窮屈な状態だったけど、どんどん使っていただいて。
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当時、学生たちもまた、本当に可愛そうな状況でした。大学生も同級生に会うことができず。ゼミも対面でできない状況で。先生も学生たちを集めたくても、大学の施設そのものが使えない。
だから、いくつかの大学の研究室が、ゼミの会場として使ってくださったり、ある建築科学科の卒業設計のエスキス会場として使われたこともありました。もちろん大学には内緒で。はじめてリアルで会って、コミュニケーションが取れることを喜び合う学生たち。その光景は素敵でした。
こっそり結婚式を開催
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1回目の緊急事態宣言が開けたころ、喫茶ランドリーのスタッフが結婚することになりました。めでたい!!!自粛警察の全盛期、世間では結婚式なんて全部中止でした。でも、迷わずみんなで、結婚式を企画。
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びっくりするほど、たくさんの地域の方々が、手分けをして、いろいろなものをつくってくださってりました。
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そして、こんな素敵な空間に設えられて
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レッドカーペットがランドリーから前面車道まで敷地いっぱいに敷かれて、最高でしょ?
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ランドリーの部屋が祭壇! まちの人たちみんなで祝いました!
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コロナと自分たちの人生のつじつまを合わせる。それぞれの考えを互いに尊重しあう空気が、そこにありました。
止まないコロナ「ひと」はたくましく
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おさまらないコロナ。やるか、やらないか、多くの人の迷いにいろいろと対面してきましたが、ほぼ100%いろいろなことがその後も行われていきました。
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はじめて個展をされる方も多かった。こちらは男性の写真展。
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ある女子大生は、コロナ禍でイラストを描きはじめて、その勢いで個展を開催。そんなこともあるんですよね。インスタつながりでたくさんの方が来店したり。
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あるときは、お店にたくさんの猫が出現!!
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いつもお子さんの送り迎えで店先を通るパパさんが写真家だと知ったのもコロナ禍でした。その後、鹿野貴司さんの写真展は数回開催され、その度に通りがかるひとの足を止めていました。これは新しい展示の発明でした。
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閉店後は、よく元子さんがズーム講演をまちの家事室からやっていたり。
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家事室に野木青依さんによる出張マリンバが登場すると、子供たちと自由に音を奏でて。
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そこにミュージシャンのシラフさんが、自宅からスティールパンを持ってきて、飛び入り参加。ふたりはじめて会うのにね。この光景も立ち会った皆さんはとても感動されていました。そして、この出会いがいろいろな活動事へと派生していくことに。
警察が飛んできたハワイアン誕生会
それでも収まる気配を見せないコロナ。そんな時に、誕生会をやりたい。しかもハワイアンのアコースティックライブを。なんて素敵だ!と思って、開催していただいたら、喫茶ランドリーはじまっていらいの高齢率で、それがまた素晴らしかったなぁ。
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より直接会う機会が減ったのは高齢の皆さんだったと思います。しかも、アクティブに生きてきたひとほど、そのギャップが大きかった。いろいろと限界に来ていて、おじさんたちはやるぞ!という感じで。
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前座のマジックショーも、何もかもが最高でした。
実はこの日は、けしからん!と思った近くに住むまちの方が、110番通報をして、警察の方が飛んでいらしゃいました。事情をきちんと説明したら、笑顔で「素敵ですね」と仰って帰られたのも印象的でした。
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そして、みんなで紅白を見たり。実は今は毎週金曜に営業している「夜の喫茶ランドリー」がイベントとして開催されたのも、1年以上前のことでした。お店の営業もコロナ禍でバージョンアップしていきました。
僕の席から見えていた光景
僕の指定席からは、いつもこのアングルでお店が見えています。レジ越しにスタッフと対面するお客さんたち。その光景もまたコロナ禍での印象的なシーンが無数にありました。
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新一年生の男の子。
お店に来たことはなかったのだけど、ある日から彼は下校途中、毎日立ち寄ってくれるように。ランドリーの勝手口を入ってくると、レジ前に立ち、ママスタッフと二言三言スモールトークをして、そして正面入口から帰って行く。
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高齢の方も、ママさんも、単身者の皆さんも。あの一番冷たい空気が漂っていた時期に、お店に立ち寄られて、ほっと一息ついて、ゆっくりとスタッフと話す光景が、僕には忘れられません。
レジで注文して、コーヒーが届き、あるいはビールを自分で注ぐ。一言二言スタッフと話しながら、涙を流し始めるお客さんを何人が見てきました。
あるとき、救急救命士の友人に、この地域のことを聞いてみたら、普通に自殺や孤独死、普通に多かったそうです。僕らには見えていないご近所の見えないリアルは堪えます。
もし開け続けてきたことが、一人でも、一ミリでも、支えになっていたら、それ以上の喜びはありません。
実は、写真を整理していたら、今回のコロナ禍レポで紹介したい写真はこの10倍ほどあったのですが、今日はこれくらいにしておきましょう。
「コロナ禍」と言いましたが、この状況は日々グラデーションで変化していきます。そんなことを感じながら、コロナが始まったときの異様な心苦しさと、それでも人間力で乗り越えようとする気持ちがぶつかり合っていたあの感じを、少しでもアーカイブとして残したいなと、2023年1月の今、少しだけ書き残してみました。
素晴らしき「まちの1階」の日常。また数年後、振り返ったときにどう見えるでしょうか。また、何らかの危機的な状況が起きたとき、何らかの指針になるでしょうか。そんなことを想いながら。
再訪の方も、はじめましての方も、そんな喫茶ランドリーへ、いつでも気軽にいらしてください。
それでは、今日はこの辺で。
1階づくりはまちづくり
『マイパブリックとグランドレベル』から、ちょうど5年。田中の新しい書籍『1階革命』が出版されました。喫茶ランドリー誕生、そしてさまざまなプロジェクトへの展開がまとめられています。ぜひご覧ください。
大西正紀(おおにしまさき)
ハード・ソフト・コミュニケーションを一体でデザインする「1階づくり」を軸に、さまざまな「建築」「施設」「まち」をスーパーアクティブに再生する株式会社グランドレベルのディレクター兼アーキテクト兼編集者。日々、グランドレベル、ベンチ、幸福について研究を行う。喫茶ランドリーオーナー。
*喫茶ランドリーの話、グランドレベルの話、まだまだ聞きたい方は、気軽にメッセージをください!
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