「喫茶ランドリー」はやっぱりヤバい?コロナで来客3名!?になっても開け続けたら…地域に開くってそういうことだよ、と教わりました。
2018年1月5日にグランドオープンした「喫茶ランドリー」は、おかげさまで2年が経ち、3年目に突入しました。当時オープンしてまもなく書いた下の記事は、この2年間ずっと毎日誰かしかが読んでくださり、また、この記事をきかっけに全国各地からも来店してくださる方が絶えないので、本当に嬉しい限りです。
そして、ここをきっかけに喫茶ランドリーをつくり、運営しているグランドレベルという会社には、住宅や団地、マンションやスポーツジム、オフィスに市役所、広場や歩道など、さまざまな1階に人のいる光景をつくりたいとさまざまな依頼を受けるようになりました。
今でも、いろんな依頼ごとをいただいているのですが、数ヶ月前にあるクライアントさんと話している中で、「喫茶ランドリーのような場は、非常時にはどのように地域コミュニティの中で機能するのでしょうか?」という話題になりました。
でも、そういう質問をされても、私たちは具体的にどう機能するかなんて、ほとんど考えたことはありませんでした。
結果的に、喫茶ランドリーのような場があれば、非常時に有効に機能することは確実なことはわかっている。でも、それが具体的にどう機能するかはわからない。それは日々さまざまな使われ方がされるのと同じで、非常時もその延長上にただ在るものと考えていたからです。
そうこうして3月に入ったあたりから、世界では一気にコロナの感染者が増え、私は夜、喫茶で仕事をしているときは、CNNをつけっぱなしにするようになっていました。そして、コロナ禍に突入しつつある今の日本は大震災などとは違うけど、完全なる非常時だなぁ、とあの時の会話を思い出していたのです。
学校は休校となり、非常事態宣言の気運が少しずつ高まっていく中、
さぁ、喫茶ランドリーはどうしようかと。
周りの同業の方々は、次々と一時休業をされていきます。
でも、どうしてもそういう合理的な判断がサクっとできません。
何が引っかかっているかは、すぐにわかりました。
そう、喫茶ランドリーは、喫茶店でもランドリーでもない。
他の機能を圧倒的に持つからこそ、でした。
では、この2ヵ月に喫茶ランドリーで、私たちは何を考えたのか。何を判断し、行ったのか。そして、何が起きたのかを、今回はお伝えできればと思います。
1.正義は押しつけず、スタッフ一人ひとりと話して意志を尊重
世界のコロナ情報を観察し続けながら、すぐ3つのことを思いました。
【1】コロナは1年そこらでは消えるものではなく、コロナと共に歩んでいかなくてはならない。そのイメージを掴む必要性があるなぁ。
【2】日本は西欧とは状況が明らかに異なっているから参考にならない。独自にバランスを考える・哲学していく必要があるなぁ。
【3】1階づくりの基本において、数ヶ月まちの1階を閉め、無人になる状況はつくってはならない。最悪閉めるとしても最大限できることとは何かなぁ。
命か掛かってるんだから、一切外に出ないべきだ、飲食店も全て閉めるべき!という考え方もあれば、喫茶ランドリーの場合は、地域の人々のためにやっているからこそ、ひとりでも地域の人が来てくれるのであれば、あけておいてあげたいとう気持ちもある。ゼロでは無い感染する可能性を背負ってでも。
まずひとつ決めたことは、オーナーとしての価値感は、スタッフには何一つ押しつけないってこと。お店はいずれにしても大丈夫なので(別に大丈夫ではないけど笑)、素直な意見を聞かせてくださいと。すると、さすがの喫茶ランドリーのスタッフ。きちんと、まちや地域の人たちのことを想う気持ちを話してくれる。その上で、それぞれの事情を踏まえた正直な気持ちを話してくれました。
結果、4人のスタッフのうち2人は自宅待機に、2人は働き続けることにしたのです。
2.営業時間を短縮、最悪はフリースペースでええよ!
別の視点として、直感で、たとえば数ヶ月休んで再開したとしても、お客さん取り戻す再開時の初速度を危惧しました。スタバのような大手チェーンであればまだしも、僕らのような小さなお店は、大きな広告も打てなければ、ましてや立地も住宅街のど真ん中です。継続的な経営を目指す点からも、たとえ赤字に突入するとしても、エンジンを吹かして、小さくともサービスとコミュニケーションを継続し続けていく利点は大きいと考えました。
(むろん、仮に西欧並の手厚い補助があれば、話は変わったかもとも思います)
そんなことを考えながら、開けていると、やはりポツポツとお客さんはいらっしゃる。手作りマスクを売ろうもんなら、意外とパパパっと売れたりもする。もちろん売上は前年や前月の半分以下です。それでもいらっしゃる。
そして、スタッフの人権費と照らし合わせながら、営業時間を【10時〜20時】から【11時〜18時】に。土日祝は17時閉店と変えました。
それでも、状況の進展次第では、その後のスタッフの考えも変わることが想定されたので、継続して働いてくれるスタッフには、こう伝えました。
「日々、状況は変わっていくだろうから、気持ちが変わったらすぐに言って下さい。もし誰も働かなくなったとしても、そのときは、毎日僕はここで仕事をするだろうから、引き戸を全開にして半屋外にして、地域の人たちにはコーヒー振る舞って自由に休んでもらうよ。それで乗り切るから大丈夫」と。
3.え!? こんな時に軒先で八百屋さん… それでも全力の応援を
同時進行で、ひとつアクティブなこともありました。
短縮営業がはじまろうとしていた矢先、知り合いのYさんから連絡が。何でも、最近八百屋をはじめたのだけど、もしよかったら喫茶ランドリーの軒先を貸してくれませんか?と。
これから自粛ムード満載の中のこの依頼。最初はマジか!?と思いましたが、喫茶ランドリーとしては、いつもマジか!?の先にさらなる発展が待っていました。
だから、いつものように1秒考えて決断を。
よし! 全力で応援しよう!
日々やってきた、”許可では無く、全力の応援”は、こういうときだからこそだと思ったのです。
しかし、前の通りを歩く人も少ない住宅街のど真ん中、ただでさえお客さんが減っているから申し訳ないなぁ。淡々と軒先八百屋さんをはじめたYさん。
1日目、2日目、3日目、とテスト。やはり本当に人は少ない。けど、少なくても野菜を買いに来てくれる人がいることに、素直に感動。入り組んだ住宅街、チラッと目に入ったら、何かな〜といらっしゃるわけです。チラシなんて1つも配ってないのにね。
でも、観察していてすぐにわかりました。マスク越しでも、野菜を買いにいらした皆さんは、スーパーリラックスしているのです!それが、ビシビシ伝わってきます。
そして、ぽろっと「スーパー混んでて、ここは近いから嬉しいわ」「次はこの野菜あるかしら」「この前のオススメ美味しかったから、またきちゃった」という言葉が溢れてきます。
その後迷い無く、毎週水木金で、やり続けましょう!ということになったのは言うまでもありません。
それから1ヵ月以上が過ぎました。毎週水木金をやり続けました。結果、喫茶ランドリーに来たことはなかったのに、軒先八百屋に来て下さる方が増えたのです。その流れで、お店に入る方もいれば、常連さんが帰りに野菜を買っていく姿ももちろん。
今では逆に、喫茶ランドリーが便乗して、軒先八百屋の中で、手作りマスクやテイクアウトフード(写真は人気の自家製鳥ハムオープンサンドをスタッフ自らサンドイッチにして販売!)を売らせていただいていたりもします。
こうして、喫茶ランドリーは、これまでになかった地域の皆さんとのチャンネルを、いただいたのでした。八百屋さんの方は、さらに地域の皆さんが欲しい野菜を事前にキャッチアップして、翌日仕入れるという新しいサービスを画策されています。本当にすべてが素晴らしい!
4.増えはじめた新しいタイプの常連さんとは!?
これまでお客さんとして、一番少なかったのは、パソコン仕事をするような人たちでした。みんな急に在宅勤務を実践してみても、特に一人暮らしの人は、世界一狭いと言われているワンルームでなんてずっと過ごしていられません。
そんな方々が、お!ここは開いてるのか!と来てくださるように。そのうち、ZOOMで会議とかも、お互い気を使いながら、そこかしこでされています。普通の喫茶店やカフェではできないけど、さすがの喫茶ランドリーそのあたりは、勝手に気遣う秩序が生まれている。
あとは、おばあさんがひとりできてくださったり。お子さんとママが、ゆったり過ごしてくださる方。在宅になって、ふたりでいる時間が増えたのでしょう。カップルや夫婦の方も以前より来て下さり、また、犬の散歩の途中に立ち寄って下さる方も増えてきたように思います。
もちろん、以前のように満席になるようなことはありません。その中で、みんな気を使い合って、自分で考えて、判断して、距離をとって、その上で自由に過ごす。まちに住むさまざまな人が、自然とそうふるまえる。これもまた素晴らしい。
5.それでも出会いと会話は増幅し続ける
今世界中が、人が集まることに非常にネガティブな気持ちになりつつあります。しかし、それはあまりにも極論です。都市は終わりだ、郊外だ、田舎だということも、あまりにも極論です。
そうではない、今ここで大切なのは、人間らしい最高に心地良い距離感をもう一度考えようよということだと思うのです。人間らしく生きるってこと、まちに暮らすってことは、何のかをもう一度、考えるべきなのです。
もう、やってらんないよな〜!と言葉に出す。
相手がリアルに目の前にいる。
それが知らないはじめての人だったりする。
そして会話がはずむ。またね!となる。
そのことが、実は生きているということを実感できるということを、この期間中も喫茶ランドリーにアクセスしてくださる方々は、無意識にでも感じられていると思います。
でも、このことは非常時だけではありませn。これから少しずつ日常に戻りつつある過程でも、もし完全に戻ってしまったとしても、私たちは、個々にいろんな気持ちを抱えながら生きていくものです。
その中で、笑いたいことも、泣きたいことも、怒りたいことも、どんなことも、ちょっとはき出すことができたり。また、そんな気持ちは表現できなくても、窓越しに手を振り合ったり、軒先八百屋で鉢合わせた知らない人とスモールトークをしたりするだけで、少し癒されたりする。そんな場所が、まちの至るところに必要だということを改めて確信しました。
コロナ禍でも、喫茶ランドリーでは、人は人との新たな出会いを生み出し、コミュニケーションも関係も増幅させてきました。でもそこでは、コロナ予防のための”優しさの距離感”が常に保たれていたりもします。これもまた、人の生きるチカラなのだと思ったのでした。
6.次の時代を支える基盤はやっぱりコレ! 徒歩圏内には「喫ラ」的な場所を
もし、冒頭の「喫茶ランドリーのような場は、非常時にはどのように地域コミュニティの中で機能するのでしょうか?」ということを今、聞かれたら、この数ヶ月の体験をした自分は、自信を持って言えるでしょう。
確実に、このような「場」は、次の時代を、まちを支える基盤になる。
だって、ここまでの最悪な状況下で、売上減というネガティブなことはあっても、喫茶ランドリーという「場」を介した、人と人との関係性は、確実に高まってきたからです。
これって純粋にすごいことだなぁと思いました。
もしもし、今後、武漢や欧米のような状況になたっとしても、また、大災害によってこれまでにないような非常時になったとしても、喫茶ランドリーは、人々やまちがダメージを受け、また回復していく際に、大きい役割を果たしてく。ハード・ソフト・コミュニケーションの一体でデザインしてき喫茶ランドリースタイルの「場」は、どの「場」よりも、より柔らかく、しかし強く存在し続けられるでしょう。
ただ、ここに書き示したのは、あくまで喫茶ランドリーと、その周辺の話です。
非常時は人々の行動範囲が狭くなるからこそ、どこに暮らす人々にも、住まいのまわりの徒歩圏内に、喫茶ランドリーのような存在の場所があるべきだと、やはり思うのです。
たとえば喫茶ランドリーがある墨田区は、面積が13.77平方キロメートル。仮に1キロ(徒歩12分)四方に1つ、喫茶ランドリー的な「場」があるとすると、区内に約14箇所。
ちなみに公民館は7箇所あるので、役所関係も入れれば、優に14箇所はあるでしょうから、本当はそういう公的な施設が、日常的な市民の依りどころになるべきとも、考えられるでしょうか。
いや、同時に、マンションの1階や、その他の店舗なども、「喫ラ」のような存在になるべきだとも考えます。そこに賛同いただける方々との、面白い1階プロジェクトがいくつか進んでいますが、今回、コロナ禍で「喫茶ランドリー」が教えてくれたこと、投げかけてくれたことも大きな財産として活かしていかなくてはいけません。
最後に。といいつつも、喫茶ランドリーはギリギリの経営を保っております。だから、先日、書かせていただいた“楽しい支援”に協力をいただける方がいらしたら、嬉しいです。
ということで、今日はこの辺で。
また、喫茶ランドリーに興味を持っていただけた方がいらしたら、コロナが過ぎ去ったころに遊びにいらしてくださいね!
1階づくりはまちづくり
大西正紀(おおにしまさき)
ハード・ソフト・コミュニケーションを一体でデザインする「1階づくり」を軸に、さまざまな「建築」「施設」「まち」をスーパーアクティブに再生する株式会社グランドレベルのディレクター兼アーキテクト兼編集者。日々、グランドレベル、ベンチ、幸福について研究を行う。喫茶ランドリーオーナー。
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