
仔犬の下痢~パルボウイルス感染症~
桜が咲き誇り陽気な季節になってきました。
春に仔犬を迎えて新年度を迎える家庭も多いのではないのでしょうか?
一緒に散歩に行ったり、レジャーに行ったりと心躍るイベントが控えているのに…
なんか、すごく下痢している?!!
今回は仔犬の下痢の原因になる『パルボウイルス感染症』についてです。
原因や治療、対策などをご紹介します。
一緒にみていきましょう!!
原因
イヌパルボウイルス感染症の原因はその名の通り『イヌパルボウイルス』が原因となります。
このウイルス1978年に発見された比較的新しいウイルスなんです!
それまではネコ汎白血球減少症の原因のパルボウイルスが知られていましたが、ある報告ではこのウイルスが『変異』してイヌパルボウイルスが出現したといわれています。
パルボウイルスは強力なウイルスで、60℃に熱しても1時間は死滅せず、アルコール、クレゾール、逆性石鹸なども無効です。
次亜塩素酸ナトリウム、ホルマリンなどでようやく死滅します。
多くの仔犬が一緒にいる施設(保護施設や販売施設など)で感染がみられた場合は感染を拡大させない対応や対策がとても大変ですね。
こんな強力なウイルスですが、人に移ることはありません。
感染経路
感染源は犬の糞便の中に排泄されるウイルスです。
これが次の犬に口や鼻から感染します。また、人の手や衣服、靴などにウイルスが付着し感染することもあります。
感染したパルボウイルスは口腔咽頭のリンパ節で増殖し、血流に乗ります。
骨髄やリンパ組織、腸粘膜の上皮細胞、若齢の犬では心筋などの細胞分裂が盛んな組織に移行し攻撃します。
それにより様々な症状が発現します。
感染は2~4ヶ月齢の仔犬で多く、6ヶ月齢未満の仔犬での死亡率が67.6%といわれています。
症状
パルボウイルスの臨床症状は『胃腸炎』と『心筋炎』の2つがみられます。
胃腸炎の臨床症状は主に激しい下痢、血便です。それに伴い嘔吐や食欲不振などの症状がみられます。
病院を受診する仔犬で一番多いのはこの症状でしょう。

心筋炎は新生児期の若い犬で多く、急性心肺不全(肺水腫、チアノーゼなど)、進行性の心不全を伴う心筋壊死を起こします。
心筋炎を発症した場合は死亡率がとても高くなります。
また、骨髄やリンパ組織を攻撃するので、リンパ球の減少が感染初期にみられることがあります。
これが血液検査で白血球減少の原因となります。
診断
仔犬が上記のような臨床症状と白血球減少を伴っていた場合はパルボウイルス感染症が疑わしいです。
現在はパルボウイルスを検出するキットも販売されています。

また、検査会社に便を送りPCR検査でパルボウイルスを検出することもできます。
しかし、検査結果が届くまで時間がかかることが多く、衰弱している仔犬には検査結果を待っている猶予はないかもしれません。
【PCR】
微量な検体/サンプル(血液、組織、細菌、ウイルス等)であっても、そこに含まれるわずかなDNAから、目的の微生物や遺伝子配列が存在しているかを知ることができる検査です。
治療
パルボウイルス感染症の特効薬は今のところありません。
よって、治療は臨床症状に対する支持療法(対症療法)がメインとなります。
①静脈点滴(リンゲル液など)
②抗生物質
③制吐剤
④食べれる様であれば栄養管理
臨床症状が改善し、自力での採食が可能になれば退院です!
対策
現在動物病院で接種できる混合ワクチンの中にはパルボウイルスも含まれています。
ワクチンを接種することで万が一感染したとしても、身体に免疫ができているので重症化のリスクを軽減することができます。
上記でも示したように、パルボウイルスは感染力が強く、なかなか死滅しないので集団のなかで感染がみつかった場合は管理がとても大変です。
感染している仔犬を集団から隔離し、その仔犬がいた部屋や使用した食器などは塩素系の消毒薬で消毒しなければなりません。
参考論文は以下になります。
今回は以上です。
パルボウイルス感染症は現在、多い病気ではなくなりましたが、
集団発生すると感染力が強いのでとても大変です。
予防や対策を徹底したいですね。
みなさんのお役に立てれば幸いです。
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