【ビジョンで舵をきった企業成長】 20~100店舗の飲食店経営で学んだ大切なあれこれ#2
【ビジョンが必要だった理由】
前職株式会社ゴリップでもビジョンは数回変わっている。
振り返れば、
ビジョンが変わる時=事業として、組織として転換点だった。
価値観を整える。一人一人が向き合うことができる旗印を差し直す。
そんなタイミングだと思う。
大きく舵を切る時は
TOPからの指示命令では動けない
ビジョンに共感した仲間が動き出す。
これが
ビジョンが組織を成長させてくれたということ。
①5店舗から10店舗への舵
まず、ビジョンなんて言葉を使い始めたのは
店舗数は5店舗、ブランドはベジテジや1つだけ、社員は20名規模
「2015年サムギョプサルを世界に」を掲げた。
当時は、徹底したローカルのいい店づくり。
店長がこだわり、責任を持って自分の店を運営する。
そんな中、店舗展開するという転換点。
出店を進める=既存の安定は崩れる
この現実とどう向き合うかだった。
「2015年サムギョプサルを世界に」は、全員が燃える野望だった。
当時はビジョンを設定したというか
自分たちのロマン的な合言葉を作った感覚。
ただその裏側は
現実としっかり向き合い、今までの価値観を絶対に崩さない。
既存を崩さずに、野望に向かって突き進む。
自分たちは
険しい道を選択する
そんな覚悟を全員で結んだ感じ。
②全国展開への舵
次の転換点は
10店舗から先の店舗展開を描いた時
社長とNo2の中でぶつかり合いの議論が起きた。
《人物像おさらい》
【TOP】ぶっちぎったカリスマ性の創業者:ボス《現状分析力/未来を描く力/決断力/勘》
【No2】全てに妥協なく全力でぶつかる漢 営業部長:テギさん《TOPの意向を120%で浸透させる力/チーム一人一人への愛/店・会社への愛/1対多勢でも全員を巻き込む統率力》
二人の信頼関係は絶大。創業から一緒に店舗を作ってきた関係なので細かな議論はたくさんしている。
ただこの時の大激論は
意見が真っ向からぶつかったレベル。
ただし、この激論のおかげで
この先の方向を鮮明に描くことができた。
【店舗展開することが本当に全員の幸せなのか】
テギさんの主張
「今まで1店舗1店舗、目の前のお客様の為、一緒に働く仲間の為に全部の時間を使って店舗づくりをしてきた。「2015年サムギョプサルを世界に」のビジョンにはなんの異論ない、燃えている。ただ、このまま出店を加速していくことが本当にお客様、仲間にとって一番幸せな選択なのか」
当時出店することには、社員にも相当なパワー (負荷も)が必要だった、既存の常連さんからも「店長変わってお店変わったね」と言われる回数も増えて、お店を出すことが本当に幸せ数を増やしていることなのか。
ボスもこのような現実はもちろんわかっていた。
事業=お客様/仲間の幸せの数を増やすが自分たちのものさし。
それを変えるつもりもない。
だからこそ
120%のクオリティを作りにいくテギさんからの問題提起だった。
「店舗展開をすることが関わる全員を幸せすることになっているのか」
組織としても全国展開という転換を迎えたタイミングで
テギさんのマネジメント自体にも物理的距離が出てきた時だった。
この結論で生まれたのが
《目の前の人を幸せにする》
二人の話の終着点はこうだった
「食を通じて幸せの絶対数を増やす」についてはなんのブレもない。
ボスは
自分が直接的に関与して、影響できる人数なんてみんなたかが知れてる。
自分が直接的に関わって“全員”を幸せにしようなんて自分を買いかぶりすぎ。
自分は
「世界中の人を幸せにしたい」とは思わない。だってできないと思ってる。
「自分が直接世界中の人々を幸せにする」なんて嘘はつけない。
地球の裏側の人の顔なんて見たことないし、そんな人の為に本気にはなれるわけがない。
ただ、
自分の見える範囲、目の前のお客様、仲間には本気で思える。
だから、自分たちが
「目の前の人を幸せにする」なら
店舗が増えて、仲間が増えて
それぞれが「目の前の人を幸せにする」を体現する。
その輪を拡大していくことが
「幸せの絶対数を増やすこと」ということではないか。
組織として一つステージが上がった瞬間だったと感じている。
個人の力では影響が及ばないステージ。
仲間全員が《目の前の人を幸せにする》を体現する。
全員が行動するから到達できる旗に向かっていると改めて気が付いた。
③マルチブランドへの舵
次はマルチブランド展開が始まった頃
それまでは
ゴリップ=サムギョプサルのリーディングカンパニー
今までのサムギョプサル一筋をやめマルチブランド展開する。
次に掲げられたのは
食文化に新しい風を。
世の中に大きなインパクトを。
人々にパワーを。
現状に満足することなく目の前の人を幸せにし、
常に社会に役立つ新しい価値を創造し、
食の未来を創るレボリューションカンパニー
GOLIP人たるものイノベーターであれ
経営理念として据えられた。
創業からの軌跡も汲まれながら、自分たちのバリューも表現する。
マルチブランド展開になり
社員がどのブランドの所属になろうと
ゴリップに所属する全員が心にすべき内容になった。
これらの
ビジョンや理念の発信は従業員だけでなく、
業者様/関係者をも巻き込み、新たなチャンスが生まれる要因ともなった。
【ビジョンの成長が全員の成長】
ビジョンは常に変化するし、成長するもの(させるもの)
これらの設定は経営陣だけなく
多くのメンバーと囲んで決めた方がいい。
ゴリップでも、ビジョンの設定には丸二日かけたり
かなりの時間を要した。
今後の未来を担う(可能性のある)メンバーとのビジョン設定をする。
「これは優先度高い。絶対大切にしたい。」
「この表現はなんか違う」etc.
議論に参加できなくても
メンバーの議論のプロセスを知ることが何よりの理念浸透。
ビジョンを主体的に語れるメンバーが増えていく。
何の為に、誰の為に。
事業も組織も行き詰まる前に、次の展開の前に
全員で登る山を見る(見直す)。
これがビジョンの成長だと思う。
視点が変わればメンバーの中でも
自分のなりたい像、すべきことが見えて、
自身の課題が見つかる。
自主的にチャンスを取りに来るメンバーが出てくる。
そして、組織が動き出す。
採用も育成も労働条件だけでなく
ビジョンで繋がったメンバーは強い。
ビジョンで繋がった強いメンバーが
会社を動かし始めると成長は加速する。