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shift innovation #64 (METAVERSE hack)

今回、東京大学メタバース工学部の「デザイン×工学ワークショップ」にオンライ参加しました。



【東京大学メタバース工学部】

年齢、ジェンダー、立場、住んでいる場所などに関わらず、すべての人が工学や情報を学び、その先のキャリアを考える学び舎、それがメタバース工学部が目指す未来です。


【デザイン×工学ワークショップ】

デザインの範囲は、モノの機能だけではなく、使いやすさ、美しさ、五感や感情に訴える良さ、共感といった感性を含みます。工学×デザインワークショップでは、こうした感性への科学的・工学的アプローチを知るとともに、「思い」をカタチにして工学的に創り出すワークショップを行い、右脳と左脳を使ったデザインのプロセスを体験します。


【「意味のイノベーション」に関する質疑】

ワークショップの講義の中で、「意味のイノベーション」に関する話がある中で
、「意味のイノベーション」×「感性設計学」の対談の記事の紹介がありました。

記事の中にあった騒音を不快と感じる「掃除機」に関して、「意味のイノベーション」による視点を踏まえ、「騒音」を「存在を示すことができる」という意味に転換した場合における「感性設計学」的アプローチについて質問させていただきました。


質問

ワークショップで「意味のイノベーション」の事例としてお話しされていた「キャンドル」の場合、「明るい」という便益があるものの、キャンドルの明かりには「揺らぎ」があるため、一定しないという不便益がある中で、この不便益を「癒し(便益)」というコンテクストで捉え直す、つまりは、意味を変えることにより、同じ機能のキャンドルであっても、明かりとは異なる「アロマ」キャンドルができたと捉えるとします。

そうしますと、「掃除機」の場合、「騒音」という不便益があり、この不便益を便益に捉え直す、例えば、「他の音を打ち消すことができる」「存在を示すことができる」などのコンテクストで捉え直すと、どのような解決策ができるのでしょうか。
(例えば、「不在時にロボット掃除機を稼働させ、在宅であると思わせる防犯対策」など)

回答

おもしろい意味の展開だと思います。展開した意味で、新たな機能を考えてみてください。それが、意味のイノベーションにつながります。答えは一つではありません。

我々の事例では、音を快音にする技術や方法を開発することで、製品音のデザインという新たな分野を拓きました。


【「意味のイノベーション」に関する解釈】

「展開した意味で、新たな機能を考えてみてください。」という回答をいただきましたので、「存在を示すことができる」という転換した意味に基づき検討した内容について返答させていただきました。

返答

騒音という「不便益」を「便益」に捉え直すことにより、解決できないかと考えたものとなります。

一般的には家庭内において、「大きな音(騒音)は不快である」という意味で捉えられますが、災害発生時においては、「大きな音で助けを求める」など、「大きな音(騒音)は役立つ」という意味で捉えられる場合もあるのではないかと思いました。

そうしますと、家庭内において、大きな音(騒音)が役立つ場面として、昨今、窃盗などが増加している中で、不在にしている家の中から音がすると、泥棒は家に侵入することを諦めるなど、大きな音(騒音)が役立つのではないかと思いました。

そうしますと、ロボット掃除機に防犯モード(機能)を付加し、不在時に大きな音で自動稼働させることにより、泥棒はこの家は在宅であると勘違いして、家に侵入することを諦めるのではないかと思いました。

そうしますと、「消音する」「快音にする」のではなく、逆に「音を大きくする」ことにより、課題を解決することができる場合もあるのかなと思いました。

意味の捉え方には様々あり、技術的視点から意味を捉えることにより、課題を解決することができれば、マーケティング的視点から意味を捉えることにより、課題を解決することもできる、その中でも、意味をそのまま捉えて解決することができれば、意味を逆に捉えて解決することもできるなど、捉えるべき視点の幅が広がったように思いました。


【意味のイノベーションの概念】

「意味のイノベーション」の概念を「キャンドル」の事例で説明すると、かつては明かりを灯す道具としてキャンドルを使用していましたが、現在では照明器具が普及したため、キャンドルは非常時に使用するための道具となっています。

一方で、キャンドルの明かりは、炎が揺らぐ動きがあり、暗がりの中でキャンドルの炎の揺らぎを見ていると心が癒されるという感情になることがあります。

そこで、キャンドルを使用する状況として、「夜中の家の暗い部屋」というコンテクストを「仕事で落ち込んだ時の暗い部屋」というコンテクストへ転換することにより、「灯り」から「癒す」へ意味を転換することによって、「アロマキャンドル」という新たな意味のキャンドルを創造することとなりました。


【「掃除機」における「意味のイノベーション」の構造】

「掃除機」の構造を目的・機能・物理というレイヤーで捉えることとし、目的を「綺麗にする」、機能を「ゴミを吸う」「音を出す(音が出る)」など、物理を「吸引口」「モーター」「排気口」などとした場合、「掃除機」を使用する時の課題として、「騒音が不快である」という課題があり、一般的には「機能」に焦点を当てることによって、「騒音」から「静音」「消音」へ「機能」を転換することとなります。

一方で、「意味のイノベーション」においては、物理や機能ではなく、目的(意味)に焦点を当てるものであり、目的(意味)はコンテクストにより変わる場合もあるため、目的(意味)を転換する、もしくはコンテクストを転換することにより、新たなプロダクトやサービスを創造することができます。

例えば、「キャンドル」の場合、「夜中の家の暗い部屋」というコンテクストを「仕事で落ち込んだ時の暗い部屋」というコンテクストへ転換したことにより、「灯り」から「癒す」へ意味が転換したことによって、「アロマキャンドル」という新たなプロダクトを創造したものとなります。

一方で、「掃除機」の場合、「騒音」という意味を「存在を示す」という意味に転換したことにより、存在を示すコンテクストとして、「災害時に助けを求める(不在時の防犯対策)」を想起したことによって、「防犯モード(機能)が付いたロボット掃除機」という新たなプロダクトを創造(妄想)したものとなります。

これは、「キャンドル」の場合、「明かり」を「夜中の家の暗い部屋」という物理的に暗い(部屋が暗い)と捉えるのではなく、「仕事で落ち込んだ時の暗い部屋」という心理的に暗い(落ち込んで暗い)と捉えることにより、同じ「暗い部屋」を異なるコンテクストで捉えることによって、異なる意味で捉えることができることとなります。

一方で、「掃除機」の場合、「大きな音(騒音)」を「部屋を掃除する時の掃除機の大きな音」という不便益の視点で捉えるのではなく、「災害時に助けを求める大きな音」という便益の視点で捉えることにより、同じ「大きな音」を異なるコンテクストで捉えることによって、異なる意味で捉えることができることとなります。

これらのように、「物理」「心理」、「便益」「不便益」というように二項対立する事象を捉えるなど、今までとは異なるコンテクストを捉えた上で、今までとは異なる意味に転換する、または、今までとは異なる意味に転換した上で、今までとは異なるコンテクストを捉えることにより、「意味のイノベーション」による新たな創造ができるのではないかと考えます。

なお、「キャンドル」の事例の場合、事象を観察する中で、新たなコンテクストに気付き、意味を転換したもの(観察中心)であると想定されますが、一方で、「掃除機」の事例の場合は、「掃除機」の課題を解決するため思考する中で、意味を転換した上で、新たなコンテクストを類推したもの(思考中心)であります。


【まとめ】

はじめに、意味の転換を行おうとしたとき、「自宅の中の大きな音(騒音)を解消する」というコンテクストを維持しつつ、「騒音」から「静音」「消音」へ機能を転換しようとしたため、機能により解決するためのテクノロジーを連想することができず、課題を解決することができませんでした。

一方で、「自宅の中の大きな音(騒音)を解消する」というコンテクストを「自宅の中の大きな音(騒音)を役立てる」へ転換するなど、「騒音は不快」から「騒音は快(役立てる)」へ意味を転換したことにより、「大きい音(騒音)」という機能は維持しつつ、「自宅の中の大きな音(騒音)を防犯に役立てる」ことにより、課題を解決することができました。

これらのように、一般的には、「機能」や「物理」を転換させ、テクノロジーなどを活用することにより、課題を解決しますが、「意味のイノベーション」においては、「キャンドル」の「機能」や「物理」を転換させることなく、「灯り」から「癒し」へ「意味」を転換させることにより、課題を解決することとなります。



【ワークショップにおける講義内容】

デザインの範囲は、モノの機能だけではなく、使いやすさ、美しさ、五感や感情に訴える良さ、共感といった感性を含むものであり、感性デザインに関する講義がありました。

デザインにおけるアイコン・インデックス・シンボルの違いについて説明があり、例えば、風見鶏をアイコン(具象を抽象にする)と捉える人もいれば、インデックス(科学的に証明する)と捉える人もおり、これは、風見鶏の鶏自体に焦点を当てるとアイコン(モチーフ)になりますが、風見鶏の価値(意味・機能)に焦点を当てるとインデックス(方角を示す)となるなど、物理のレイヤーで捉えるのか、目的・機能のレイヤーで捉えるのか、捉えるレイヤーにより解釈が変わるというエクササイズがありました。

色相環に関するエクササイズがあり、流れた音を色で表すというエクササイズですが、金属音が流れたとき、寒色系をイメージしたことにより青色を支持し、柔らかい感じの音が流れたとき、暖色系をイメージしたことにより赤色を支持したのですが、「音」と「色」を抽象的に捉えた上で、共通する概念に基づき関係性を捉える必要があるというエクササイズがありました。

虹は国により捉える色の種類が異なるようであり、日本では7色ですが、アメリカは8色、ドイツは5色など、文化圏により異なるようであり、人は虹を色自体で認識しているのではなく、概念として認識しており、そこには言語が影響しているようです。ここでは、「ブーバ」と「キキ」という言葉から連想することを形にするというエクササイズがあり、参加者に共通した形状としては、「ブーバ」は緩いというイメージの形状となり、「キキ」は鋭いというイメージの形状となったようですが、もしかすると、国などの文化圏の違い、言語の違いにより、このような結果とは全く異なる結果になるのかもしれません


【ワークショップにおけるデザインの造形】

工学×デザインワークショップでは、感性への科学的・工学的アプローチを知るとともに、「思い」をカタチにして工学的に創り出すワークショップであり、個人の何らかの原体験に基づく「思い」を他の方にわかるよう紙粘土で表現した上で、デジタルデータに基づき3Dプリンターで再現するというものです。

私が紙粘土を使用し表現した「思い」とは、アイディエーションにおいて、考え抜いた時に相対する二つの事象が対立することにより、手詰まりの状態となった時の「思い」を表現しました。

紙粘土では、相対する事象を「四角」と「丸」により表現をし、考え抜いている状態を「四角と丸が捻れて繋がっている」ものとし表現をしました

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