ビジョンから問いをデザインする_#4 Xデザイン リフレクション
このnoteは、Xデザイン学校2024年マスターコースのリフレクション(振り返り)投稿です。毎回の授業で得た学びを1回ずつ振り返ります。
今回は、ユーザー調査がテーマです。
が、その前に。#3の復習から。
体験を構築するのに、「ヒトの視点」と「ビジネスの視点」は対になっていて、どちらの視点も同じく重要です。
どちらかだけしか検討できていないと片手落ちになり、魅力的な体験を作ることはできません。
そして、それぞれの視点は、デザインのプロセスも異なります。
ブランド体験は、企業がお客様に提供したい価値という意味でインサイド・アウトから生み出され、ユーザー体験は、お客様の実際の体験つくるためにアウトサイド・インのアプローチで作られます。
ユーザー体験だけを考慮すると、どの企業も同じ商品・サービスの提供になってしまうため、企業や経営者のビジョンからブランド体験を構築する必要があります。
その際に、ブランド体験とユーザー体験のGAP=差を生めるための戦略が必要になります。ブランド体験と実際のユーザー体験はそもそもがずれているため、その間を繋ぐのが戦略というわけです。
UXデザイナーはユーザー体験、アートディレクターはブランド体験と、役割を分けて検討することもあります。
ユーザー調査の基本
調査はいくつかの切り口で分類することができます。
例えば、調査する「量」によって分ける場合。
定量調査
主にアンケートなどを活用し統計手法も使いながら調査分析する定性調査
主に質的調査などを活用し、行動や発話内容を調査分析する
調査する「目的」によっても分けることができます。
検証的調査
仮説が正しいかどうかを検証するための調査探索的調査
仮説やアイデアを作るための調査
以下はさまざまな調査手法の一例です。
実務のイメージでは、定量調査を検証目的で使用し、定性調査を探索的調査で使用することが私自身は多いです。
ただし、定量調査に使用するアンケート調査から、ユーザーの発話を大量に集めることで定性的に調査することもあり、上記の使い分けは一般的な考え方に留めたほうがいいと思っています。
どちらが大事、ではなく、どちらも大事。と考えており、定量と定性を往復しながら自分の仮説を広げて絞っていくことが大事であると考えています。
その中で授業では、トライアンギュレーション(三角測量)という考え方を授業で学び、とても参考になりました。定性調査は定量調査と異なり、調査を実施するサンプル数が少なくなります。
そのサンプルの少なさから「それって本当に多くの人に当てはまるの?」と問われがちなのですが、トライアンギュレーション(三角測量)は、質的調査の方法論や検証方法を複数化することで、調査の妥当性を高めるための手法です。
例えば、インタビューや文献調査、エスノグラフィーといった3つの手法を同じ対象に対して実施することで、3つの調査に共通する点は、当てはまりが良いと考えることができます。
ユーザー調査にはさまざまな手法がありますが、授業の中では、「外から観る」と「内から観る」の繰り返しが重要と触れられていました。
ユーザー調査の目的
ユーザー調査の大きな目的は以下の2つに集約されます。
対象ユーザーがどんな価値をもっているか?
対象ユーザーがどんな行動をしているか?
インタビューでは、対象者の価値観を把握し、観察法では対象者の行為を把握します。その人がどんなことに価値を感じていて、何をしているのか。それを把握することで、その価値観を満たすより良い行為をデザインすることができます。
大切なのは、人の行動と発言にはギャップが存在すること。環境問題が大事と言いながらゴミを平気で道に捨てたりするので、対象者の発言を鵜呑みにするのではなく、どちらも把握することが大切になります。
僕の尊敬するUXデザインの権威である千葉工業大学の安藤昌也さんは、UXデザインの3点セットとして、ユーザー調査から価値・行為・属性の3つの層を分類してモデリングすることを推奨されています。
調査の3ステップ
調査には3ステップがあります。
調査計画
調査を別の人が再現できるように詳細に記載する調査の実施(調査結果の整理)
ありのままの事実だけを整理する、分析しない、まとめない調査結果の分析
自分なりの解釈をする、調査結果からの繋がりを解説する
特に2.と3.の分類は大事だと感じていて、ついつい調査の実施中に、自分の元から持っている仮説から「まとめる視点」で、調査データを抽出することが起こってしまいます。
調査中にはまとめる視点を持ち込まずに、多様な行動や価値観をあるがままにデータ化できるようにする意識づけが必要だと感じています。
(事前に仮説を持つのは悪いことではありませんが、調査時には仮説に縛られない意識が必要です。)
調査は上記の3つが揃ってはじめて調査報告書になり、どれが欠けてもいけません。
また、調査では、見えるものだけでなく、価値や暗黙知を見つけることも重要です。
目に見えるものや体験を調査する方法には、インタビュー調査や観察調査、インタビュー分析(KJ法、SCAT)、ワークモデル分析、ジャーニーマップなどの手法を用います。
意識している価値観の分析には、上位下位価値分析やKA法などを用います。
そして、暗黙知の発見にはあまり手法的なものはなく、違和感をもとにしたり、本人が意識していない価値の分析など洞察が多分に含まれるアプローチが必要になります。
そして、ユーザー調査の基本は、調査目的と状況に応じて、どのような調査をするのか計画だ大事であり、最初にだけするのではなく、必要に応じて何度も適切な調査をするのが大切ということを学びました。
つい億劫になってしまうのですが、本当に調査は必要に応じて何度もすることで、プロジェクトが前進すると考えており、さまざまな手法理解や、調査できる組織体制(調査することのできるメンバー育成)などが重要であると考えています。
ビジョンから問いをデザインする
調査を行うために必要なのは、「問い」です。何を知りたいのか?何がわかればプロジェクトを前進させられるのか?をまずは具体化することが必要です。
ビジョンから問いを設計する方法として、こうなったら理想という世界を妄想し、どうすれば実現できるかな?を問いにしていきます。
例えば、小学生が、地域のキッチンで自分で料理を作る世界をビジョンとして実現したいと思った際、その世界を実現するための問いとして、以下の3つが考えられます。
地域のキッチンとはどんな場所や環境か?
小学生の好きなことはどんなことだろうか?
小学生はどのように料理を楽しむか?
上記の問いに対する答えを見つけられた時、ビジョンの実現に向けて具体的なアクションが明確になります。
問いの形で考えることが大切で、ビジョンを問いに落とし込むことで、「何がわかれば自分たちのビジョンをもとにプロジェクトが進みやすくなるか」を考えることができます。
違和感や疑問から問いをデザインする
他にも違和感や疑問から問いをデザインすることができます。
例えば、以下のような形です。
上司と一緒だと、楽しく働けないのはなぜか?
リモートで働く方はここちよいのはなぜか?不安なのはなぜか?
将来の生活に不安を感じるのはなぜか?
いずれも、問いの粒度設定が大事で、あまりに抽象的で大きすぎると、とりとめのないものになってしまい、あまりに目の前のことだと、単純な問題解決になってしまいます。
具体的なアクションを導きつつも、その問いを解くことで対象者の体験向上に意味のある粒度を設定することが大事かと思います。
調査を行うために「問い」を設定できたら、その問いに対する答えを見つけるための調査計画が必要になります。
調査計画は主に以下の3つの要素からなります。
調査目的(問いのデザインで明らかにしたいこと)
調査対象(人や施設など)
調査方法(インタビュー調査やエスノグラフィなど)
インタビュー調査
インタビュー法には、ユーザーの考え方、本質的な要望を背景情報も含めて引き出せるという利点があります。
代表的なインタビューには以下のものがあります。
半構造化インタビュー
あらかじめ、おおまかな質問項目を準備し、相手の答えによって、さらに詳細に尋ねていく。特徴としては、比較的簡単に言語データを得ることができる。一方で、潜在的なニーズを把握するにはスキルが必要となる。デプスインタビュー
質問項目は決めずに、相手の状況に合わせて質問をする。インタビューの前半は、質問者とのラポールに重点が置かれる。インタビュー時間は1.5時間から3時間に及ぶこともある。特徴としては、言語データが主体で、実務者が理解しやすいデータを得られる。一方で、得られるデータの質は質問者のスキルに依存する。エスノグラフィカルインタビュー
実際の現場で、対象となる製品やサービスを操作してもらいながら、回答者が師匠、質問者が弟子の関係を築き、教えを請うようにインタビューを行う。特徴として、実際のユーザの状況を言語と観察で把握できる。一方で、時間や費用がかかったり、専門的な知識が必要となる。
上記の手法を活用して、どのようなデータを把握するべきでしょうか?
主に、以下の3つの観点で、対象ユーザーの現状を把握します。
人の価値観と、人物像の視点
その人がどのような価値観を持っていて、どのような人物であるか? (変化しない部分)人の行動の視点
どのような行動して、どのような課題や思いがあるか? (変化している部分)人と物や環境の視点
人と環境がどのように関わっているか? (対象物により変化する部分)
実際の実務でよくしてしまうのが、あまり文脈のない一問一答をひたすら行って、インタビュイーに回答させてしまうことです。相手が自身の行動や感情をしっかり思い出せるように、対話を導く必要があります。
決して、こちらが聞きたいことを聞く、という構造にならないように注意する必要があります。
また、より深くインタビューを行うために、ラダーダウン(より具体的なことを聞く=so what?)とラダーアップ(より概念的なことを聞く=why so?)を駆使することが効果的です。
個人的には、得にラダーダウン(具体的なことを聞く)が、本人も気づいてない行動や考えを掴めることが多いように思います。
その際には、相手の置かれている状況を4W1H(When / Where / Who / What)などを駆使して詳細に把握するようにしています。
インタビューは相手の回答に対して適切な質問を繰り返すことで本質に迫ることができます。まだまだ修行中の身ですが、インタビュー法をもっと実践の中で磨き上げていきたいと思います。
体験の視覚化
インタビュー等の調査を行った後にユーザの体験を視覚化することで以下のことを整理することができます。
現場の体験の把握、体験視点での発想、新しい体験の提案、プロトタイプの構想、体験視点の評価
アウトプットとしては、ユーザー体験の視覚化としてジャーニーマップ≒エクスペリエンスマップを作ったり、サービス(ユーザーと提供側の関係性)の視覚化としてサービスブループリントを作ったりします。
エクスペリエンスマップ作成のアプローチ
基本要件の確認
横軸の設定
縦軸の設定
プロットの設定と記入
1.基本要件の確認
インタビュー後すぐにマップ作成の入るのではなく、マップ作成の目的やテーマ設定が必要となります。
テーマとは、着眼点やマップを通して視覚化したい本質的な部分のことであり、例えば、 お年寄りの楽しみという視点、家族の楽しみ方という視点、ショッピングの楽しみ方という視点を指します。
そして視覚化のテーマ設定には、視座が必要になり、その視座を与えてくれるのが、「ビジョン」です。
2.横軸の設定
エクスペリエンスマップにおける横軸は時間軸です。時間軸にはマクロとミクロの視点があり、プロジェクトに応じてどのような時間軸の視点とするかを検討する必要があります。
例えば、建築であれば何十年という時間軸で体験を捉える必要がありますし、仕事上のタスクであればものの数分の体験を詳細に描く必要があるかもしれません。
よくテンプレートで落ちているカスタマージャーニーは、認知〜購買(もしくは、共有)までの時間の枠組みが決まっていますが、それを埋めることが大事なのではなく、自分のプロジェクト課題にとって、「いま何を視覚化する必要があるのか」をしっかり考える必要があります。
3.縦軸の設定
体験に対する多様な情報を記載したい場合は、縦軸を活用します。基本的にはユーザー体験の3つの軸である、時間軸、環境軸、人間軸の中から2つを活用することが多いです。
環境軸は、その時どのような環境に置かれているかを視覚化しますが、人間軸は、その時どのような感情であるかや、テーマに対する態度などを視覚化します。
授業では、環境を「家」と「職場」、「その他」の3つに分類して、それぞれの環境下で対象ユーザーの行動を視覚化することで、環境の違いにおけるギャップを見つけたりする事例が紹介されていました。
いずれにしても、出来合いの軸をそのまま援用するのではなく、自分たちのプロジェクトにふさわしい軸選びを考える必要があります。
4.プロットの記入
プロットとは、横軸と縦軸の中に描かれる内容のことです。どのような内容をどのように記入するかと言うプロットの設定が、エクスペリエンスマップの具体的な内容となります。
プロットの具体的な内容としては、どのような出来事か、出来事のコンテクスト(5W1Hなど)、出来事の重要度、出来事に関する気づきなどがあります。
私自身は、エクスペリエンスマップをメンバー間での提供価値の目線合わせや戦略の視覚化の観点で活用することが多かったのですが、今回は理想の体験を描くために気づきを得る視点で多くの気づきを得ることができました。
理想の体験を実装するには、まず現状を知り、自分たちの提供価値でその体験をどのようなものに変化させたいか、まだ理想の体験の発想についての勘所は掴めていませんが、地道に訓練して身につけていきたいと思います。