学校や義務教育はもういらない(ZATSUDANコラボ_堀江貴文&藤野英人④)
ビジネスのプロフェッショナルをお招きするFM番組「ビジプロ」は、今回、堀江貴文さんが運営する音声アプリ「ZATSUDAN」とのコラボ企画。
レオス・キャピタルワークスの創業者、藤野英人さんをゲストに迎え、堀江さんと三戸政和の 3 人で、日本経済の低迷の理由や、岸田首相が掲げる「新しい資本主義」への評価、今後の社会の見通しなどについて、縦横無尽に語り合いました。
前回は「岸田総理の『新しい資本主義』は失敗する」というお話をしましたが、今回は「学校や義務教育はもういらない」というお話をご紹介します。
この記事はFMラジオ、InterFMで毎週日曜20時30分からお送りしている番組「ビジプロ」で放送された内容と、未公開部分を併せて記事化しています。ビジプロは、「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」などの書籍や、個人M&A塾「サラリーマンが会社を買うサロン」で知られる事業投資家の三戸政和が、さまざまな分野の先駆者をゲストに招いて話を聞き、起業や個人M&Aなどで、新たな一歩を踏み出そうとしているサラリーマンを後押しする番組です。番組は三戸さんとの鼎談ですが、記事はゲストのひとり語り風に再構成しています。
音声アプリVoicyでは、ノーカット版の「ビジプロ」を聴けますので、こちらもお楽しみください。
生活の質を高めるために必要な考え方
(堀江)今後は、食べ物などの値段が上がって、生活コストは多少上がると思います。でもいま、エンタメはすごく安く楽しめるようになりました。ネットフリックスもありますし、YouTube は無料で見られるコンテンツが無数にあります。暇つぶしが非常に簡単になっているのです。
これからは、たぶん楽しみ方を変えていくんだと思います。リスクをとって大きな会社を作る人はめちゃくちゃ金持ちになりますから、そうでない人との格差は当然広がっていきます。しかしそれで不幸な社会になるかというとそうではありません。
僕は、モーニングという雑誌に連載されている「定額制夫のこずかい万歳」というマンガが好きなんです。主人公は僕と同い年くらいのマンガ家で、子どもが 2 人います。その主人公が、お小遣い 2 万 1 千円をどう節約するか、どうやりくりするかということを書いたマンガで、たとえば Ponta カードの活用法などが紹介されています。
その主人公が不幸かというと全然そうではないのです。主人公は 2 万 1 千円のお小遣いで満足しています。その主人公のように、人によって楽しみ方が多様化していくのが、今後の社会なのだと思います。
(藤野)たとえば家族旅行でも、ちょっといいキャンプ道具を買ってキャンプをすれば、お金はそれほどかかりません。そういう形で生活の質を高められるようになったのはいいことです。スノーピークなどのキャンプ関連の会社の株が、この 2 年くらいで何倍にもなったのは、楽しみ方が変わってきている証拠です。(※)
長生きするために一番必要なこと
(堀江)高校で金融を学ぶ教育プログラムが今年から始まりますが、僕はファイナンシャルリテラシーだけをつけてもあまり意味はないと思っています。FIRE という若くして大きな資産を作って引退しようという生き方についても疑問を感じます。
人生というのは基本、暇つぶしです。暇つぶしができなかったら、FIRE なんかしても暇に決まっています。たいていの人はやることがなくなって、仕事に戻っていくのです。
それから、老後は何千万円必要だというのも完全に嘘です。なにより、お金に頼る、お金で決まるというのは一番の愚策です。コスパから見ても一番悪い。お金ではなく、何をするかが大事です。
65 歳以上の高齢者で、偉い人は偉くない人よりも 8 年くらい長生きするというデータがあります。偉い人というのは、町内会長やマンションの管理組合長などの立場の人です。そういう立場になると、変な人やクレーマーみたいな人との調整もしなければいけませんから、頭を使いますし、やりがいも出てきます。だから長生きします。
でもやることがなくて何もしない人は、すぐにボケて、足腰も弱って死んでしまいます。その差が 8 年という大きな差になるわけです。
(藤野)金融教育において一番柱にしなきゃいけないのは、「働くことは面白いよ」「社会と関わることは素敵なことだよ」と教えることだと思います。
日本人はどちらかというと、働くことが、辛くて暗くて苦しいことだと思い込んでいます。だから、30 カ国ぐらいを調べた中で、「企業に対する信頼度」の割合は、日本人は最低クラスで、「企業を信頼していない人」の割合が非常に高いという結果になります。
インドや中国で、自分の会社が好きだという人の割合は 70%台以上です。なぜそんなに高いかというと、会社が嫌だったら辞めるからですね。
日本人は変化することが悪だと思っているので、なかなか辞めません。嫌いな会社に居続けて、会社の体制や経営陣など、自社についての文句ばかりを言っています。本当はそっちの方がもっと悪です。
Twitter などで、「会社が嫌だったら辞めればいい」というと、「そんなことを言えるのは、お前が勝ち組だからだ」というリプライが必ず来ます。
でもそれは間違っていて、嫌だったら辞めた方がいいのです。辞めて、よりベターなところ、好きなところへ行くようにするだけで、人生は大きく変わっていくはずです。
日本人は好き嫌いを大事にすれば幸せになる
(藤野)日本人がなんとなく、苦しい感じ、暗い感じなのは、好き嫌いを大切にしないからだと僕は思っています。人間は好きなことをやればいいんです。そういうことをいうとまた、
「それは強者の論理だ」という話が出てくるでしょうが、それも全然違っていて、アメリカや中国では、貧乏な人でも、好き嫌いで行動しています。そっちの方がハッピーだからです。
嫌いな会社、嫌いな人、嫌いな上司、セクハラ、パワハラが容認されているようなところにいるから、嫌な思いをするし、セクハラやパワハラも受けてしまう。そうであれば、逃げてしまえばいいのです。
(堀江)でも日本には、逃げられないような、変化を選びづらいような仕組みがあったりします。マイホーム 35 年ローンがその典型です。
マイホーム 35 年ローンというのは、実は、(1960年池田内閣の)所得倍増計画のときに作られた、国を挙げたキャンペーンです。所得倍増計画というのは、建設業を日本経済のドライブにしようという政策です。
35 年ローンですから、35 年分の売上を一括で上げられます。いわば前借りですから、所得が倍増するのも当たり前なのです。
そこで前借りが行われ、その後バブルが崩壊して、いまそのツケが回ってきています。それは当たり前のことといえます。
義務教育がはらむ大きな社会問題
(堀江)義務教育がはらむ問題についても指摘しておきます。これは、国民国家全体が抱えている構造的な問題といえますが、義務教育というのは、同期の桜という言葉があるように、同じ世代とずっとつるみ続ける文化を生んでいます。
その文化は、変化を嫌い、社会の固定化をもたらし、監視社会や村社会につながるものだと僕は考えています。
やはり、同い年の友達とばかりつるむのはおかしいです。同期としかつながりがなければ、歳を取ったとき、当然、周りは歯が抜けるように死んでいきますから、どんどんつながりを失って、その孤独が死期を早めることにもなります。
でも若い世代とのつながりがあれば孤独になることはありません。それに、若い世代と交流することは、若さを保つことにもつながります。異世代交流が当たり前の小学校の先生なんて、ずっと若々しい。若い子と接していると全然違うのです。
僕が経営しているゼロ高(ゼロ高等学院)では、学校だけではなく、社会で学ぶことを意識していて、HIU(堀江貴文イノベーション大学校)のメンバーとの交流など、さまざまな世代の人たちと交流できるようになっています。
先日、ゼロ高と HIU でやった合宿は、17 才が実行委員長として仕切りました。実行委員の最年長は 54 歳で、親と孫くらいの年齢差でした。そんなふうに交流して、多様な価値観に触れることは、若者にとっても大人にとっても、すごく大事なことだと思います。
学校や義務教育はもういらない
(堀江)いま、不登校の子どもが増えています。僕自身は典型的な日本人マインドがあり、学校でも刑務所でもどこでも合わせられるので、不登校とは縁遠い人間なのですが、不登校の子どもの気持ちはわかります。
同じ場所に住んでいる同い年の子どもというだけで、ひとつのところに集められて、仲よくしろと言われるなんて、やっぱりおかしいです。絶対に合わない人、わかり合えないという人は必ずいます。みんな仲良くなんて不可能です。
最近は、不登校は悪いことというイメージも薄れていますから、そうなれば、学校に行きたくなくなるのは当たり前です。僕自身はもう、学校や義務教育はいらない、とさえ思っています。
学校がなぜ、いまのような仕組みになったかというと、国民国家の軍隊を作り、国民を集団行動させるためです。そのために教えることは 2 つで、1 つは国家に忠誠を誓わせること、もう 1 つは戦争で国家のために戦うことでした。
いま、学校にその役割が必要かというと、それはありません。学校も義務教育も、本当はもう、その役割を終えたということです。
でももうシステムとしてでき上がっていますから、だれもそれに疑問を抱きません。僕みたいに疑問を抱くと、「お前、変なやつだな」と思われてしまいます。でも本来は疑問を抱かない方が変なんです。なぜなら、フランス革命で近代の国民国家ができるまで、そういうシステムは存在しなかったのですから。
国民国家の軍隊というのは、フランスが共和制となり、王様や貴族が雇っていた傭兵がいなくなって、自分たちで国を守らなければならないという理由からできたものです。学校はその軍隊を作るために生まれました。
フランスの共和制下の軍隊が、それまでの傭兵と比べて大きく違ったのが、自分の家族を守るために必死に戦うようになったことです。仕事として戦っているふりをするだけだった傭兵と比べたら、国民国家の軍隊は圧倒的に強かった。
そうやってフランス軍が強くなったので、周りの国々も、「やばい、これからは封建主義じゃない、国民国家だ」となりました。
そこでイギリスも封建主義を脱するのですが、国王が辞めたくないので、立憲君主制という 変な制度を作りました。それを見た日本人は、立憲君主制なら日本にも導入できると考えて、日本も立憲君主制になったという流れなのです。
(藤野)学校も義務教育も、その本来の役割を失い、不登校というそれを拒否する子どもたちも増えています。そういう状況において、子どもたちが学ぶ場として生まれたのが、堀江さんのゼロ高等学院であり、川上量生さんのやっているネットの高校、N 高やS 高なんですね。
※当インタビューは個別銘柄を推奨するものではありません。またファンドへの組入等を必ずしも約束するものであり ません。
※この記事は、日曜20時30分からInterFMにて放送しているサラリーマンの挑戦を後押しするベンチャービジネス番組「ビジプロ」の内容をまとめています。
三戸政和(みとまさかず) 事業投資家、ラジオDJ
1978年兵庫県生まれ。同志社大学卒業後、2005年ソフトバンク・インベストメント(現SBIインベストメント)入社。ベンチャーキャピタリストとして日本やシンガポール、インドのファンドを担当し、ベンチャー投資や投資先でのM&A戦略、株式公開支援などを行う。2011年兵庫県議会議員に当選し、行政改革を推進。2014年地元の加古川市長選挙に出馬するも落選。2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行っている。また、ロケット開発会社インターステラテクノロジズの社外取締役も務める。
著書に『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』(講談社+α新書)、『資本家マインドセット』(幻冬舎NewsPicks)、『営業はいらない』(SB新書)、『サラリーマンがオーナー社長になるための企業買収完全ガイド』(ダイヤモンド)、『サラリーマン絶滅世界を君たちはどう生きるか?』(プレジデント)などがある。Twitterのアカウントは、@310JPN。