ビジネス + クリエイティブ
雑誌Forbesと一緒に考えてみた
さまざまなご縁が重なり、雑誌Forbesでビジネスとクリエイティブについて特集するということをお聞きし、その企画や全体構成についてWhatever(←弊社サイト、デザインをリニューアルしたので覗いてみてあげてください🙇♂️)が微力ながらご協力させていただきました!さらには僕がナビゲーターを務める形で「VOICES FROM CREATORS」というコーナーも担当させていただいてます。
Whateverはヘンテコなものばかり作り続けているので、あんまりそうは見えないかもしれませんが、常々さらなるビジネスとクリエイティブの融合(正確にいうと、クリエイティブを駆使してどうやったら社会に新しい価値を生み出せるのかのR&Dと実践)ということに真剣に取り組んでいます。この二つの関係性がもっと近くなれば、世界がよりスピーディに便利なモノ・楽しいモノ・新しいモノを生み出せるようになると感じているからです。
そんな思いのもと、今回僕のコーナーではForbesというグローバルビジネス誌の特集ということもあり、せっかくなので世界でそういったビジネスとクリエイティブの融合に挑戦していたり成功していたりする事例(といっても世界的にもそういう企業はまだ少ない)や、そういう企業をドライブしている人の声を聞かせてもらえないだろうかと思ったのでした。そこでビジネスサイドに移籍しCEOの横で会社のクリエイティブディレクションをしているCCOや、クリエイティブ出身ながら自らCEOやVPをやっているような旧い仲間たちを紹介できないかと考えました。時間がなかったのでインタビューではなくQ&Aの形になってしまいましたが、普段なかなか聞けないような面白い話が聞けたかなと思ってます。詳しい内容については是非本誌をご覧いただきたいのですが、各回答のコンテキストがより理解しやすくなるように、noteに補足的に今回紹介したメンバーがどういったキャリアの人々で、彼らが今ビジネスとクリエイティブを融合すべくどのような挑戦をしているのかを書いておこうと思います。同様のチャレンジに挑んでいる方々へ、何がしかの参考となれば幸いです。
みんなの経歴と、それぞれのチャレンジ
Pelle SjoenellはBBHというクリエイティブエージェンシーに僕が在籍していた時の直属の上司で、僕は彼に誘われたからこそアムステルダムの180からBBH NYに移籍したのでした。(ちょうどその時彼は後にカンヌでTitanium Lionを受賞することになるOASISのプロモーションキャンペーンを作ってる最中でした。アイデアを聞いてクソくやしかったのを憶えてますw)その後PelleはBBH LAを立ち上げ、BBHグループ全体のグローバルCCOをJohn Hegartyから引き継ぎ、その後でActivision Blizzardに電撃移籍しました。グローバルエージェンシーとグローバルクライアント双方でCCOというクリエイティブのトップを経験しているめちゃくちゃ貴重な人間だと思います。先日久しぶりにキャッチアップして、なぜ広告業界の頂点のようなポジションから移動したのかと尋ねたら、「過去から存在するモデルを守りながら、その中で輝きを見つけているような仕事よりも、純粋に未来に向けて新しいものを生み出していく仕事をしたくなったから」と言ってて、相変わらずイケメン。Activision Blizzard的にも初のCCO採用らしく、今は社内でクリエイティブチームを組閣するなどして、どうやってクリエイティブを企業内のあらゆる場所で有用に生かせるようなプロセスを生み出すかにチャレンジしている最中のようでした。
David Leeと初めて会った時は確かアワードショーの審査の時で、まだ彼がエージェンシーに在籍していた頃でした。アジア系の審査員が少ない頃だったので、出会ってすぐ打ち解けたのを覚えていますw 彼が今クリエイティブをリードしているSquarespaceは、まだ日本では知名度が低いかもしれないですが、とても美しくデザインされたECサイトを作成できるプラットフォームです。彼が率いるインハウスクリエイティブチームには、実は僕の昔の仕事でパートナーだったBen Hughsという優秀なECDや、その時部下だったMathieu Zarbatanyというこれまた超優秀なADも在籍しています。こうしたエージェンシー出身の優れたクリエイティブスタッフたちを社内に取り入れることで、自社でスーパーボール級のCM(今年放送されたCMはLa La LandのDamien Chazelleを起用して制作してました。)まで作れてしまう環境を整え大成功させているのはすごい事例だと思います。このモデルが広まると、エージェンシーは完全に不要になると思います。
Mark Pytlikは彼がStinkdigital(現Stink Studios)をスタートした当初からの仲で、前職のPARTY NYを立ち上げた最初のジリ貧の頃は、当時DumboにあったStinkのスタジオに一年くらい間借りさせてもらってたりもした大恩人です。一度Stinkを辞めてSpotifyにしばらくいた後にStink StudiosのCEOとして戻ってきました。プロダクションからクライアントサイドに行き、今度はプロダクション内にダイレクトクライアントワークをする専門のクリエイティブスタジオを立ち上げるというキャリアはとても今っぽい。世界ではStink StudiosとMedia Monkが、こうした「プロダクションがダイレクトでクライアントワークをする」というモデルのツートップだと思います。世界の大手クライアントも、AORといった契約でエージェンシーを雇う安心感にお金を捨てるよりも、クリエイティブ・ブティックやこうした「実際に作れる」チームと一緒に効率よくブランドを作っていく方向へとシフトし始めており、今後さらにこういった組織は増えてくるんだろうなと感じています。
川島優志さんとは彼がGoogleにいた時代からの知り合いで、誌面にも書きましたが、名前がとにかくソックリ(Masashi Kawashima ⇄ Masashi Kawamura)なのでお互いよく間違って相手のメールが届いて「誰だこいつ!?」と気になってる存在でしたw。その後ちゃんとお会いしてからというもの、名前が似てる人の会をやったり、海外クリエイティブ情報を交換させていただいたりと、仲良くさせてもらっています。海外エージェンシーなどで活躍する日本人自体もまだまだ少ない中、Nianticという海外グローバル企業の中でファウンダーの一人として経営者に寄り添いながらクリエイティブを牽引されている稀有な日本人としてめちゃリスペクトしてます。地球規模のARプラットフォームというビジネス的にもクリエイティブ的にも新たな領域を、どのように開拓していくのかとても楽しみです。
Andrew DietchmanはクリエイティブエージェンシーMother New YorkでCEOを務めてから、2016年にNew Stand(ニュースタンド)というスタートアップを創業しました。ニューヨークにあるNew IncというNew Museumが運営するnewだらけなインキュベーターで一緒にメンターをしていた縁で知り合い、それからはさまざまなR&Dプロジェクトを一緒に進めたりする仲でした。そして昨年、彼らの初海外出店となるNew Stand Tokyoを六本木にオープンし、Whatever / Fermata / WTFCでその共同経営をさせてもらっています。New Standが非常にクリエイティブなリテール体験と、活発なブランドコミュニティを作り出せているビジネスの裏には、クリエイティブへの理解とバランスのよいプロダクトへのインプットがなされているように感じます。それを実現するスタートアップの経営とかつてのエージェンシー経営、その両方におけるクリエイティブのハマり方の違いなどを聞けたらと思って声をかけました。
上記のような素晴らしいCCO/CEO/VPたちへのQ&Aは、是非誌面で読んでみてもらえたらと思います。今回大きく心残りなのは、女性のクリエイティブリーダー/ビジネスリーダーをご紹介できなかった点。MoMAのPaola Antonelliとか、Story(Macy'sに買収)創業者のRachel Shechtman、PentagramのPaula Scherなど、知り合いには連絡してみたのですが、いかんせん締め切りがタイト(連絡から回答まで一週間程度...)だったので、残念ながら誌面ではご紹介することができませんでした。僕も今回の「ビジネス+クリエイティブ」のコンテキストで話を聞いてみたい方たちがまだまだたくさんいるので、再びこういった機会をいただけたら是非取材してみたいなと思っています。どうでしょう、Forbesさん👀
4つの質問への、僕なりの回答
最後に、みんなにも回答してもらってるのに僕が回答しないのはズルいかもと思ったので、同じ4問を僕なりに答えてみました。自社のプロセスでも、他社とのプロジェクトでも、今後もどんどんビジネス領域にクリエイティブをインストールするようなサポートをしていけたら嬉しいです。
Q1. What are your perspectives from the creatives side, in terms of running a business or supporting a business? Is "creativity" a necessity for a brand to flourish? What do you think is its role within your organization?
どんなビジネスの、どんな仕事であっても、クリエイティブは必要だと信じています。クリエイティブとは、ただ美しいポスターやCMを作るための力ではなく、課題を見つける力とそれを解決する力。だからビジネス戦略や、組織づくりといったエリアにもクリエイティブは発揮できるはずです。この事実が意識されることで、例えばより時代を捉えたプロダクト開発やメッセージの発信ができるようになったりと、ビジネスの成長をよりスムーズに加速することができるようになるはずです。こういったクリエイティブディレクションができる人材を社内で育成したり、社外から連れてきたり、パートナーとして提携してみたり、そういった場面がもっともっと増えるといいのになと思っています。
Q2. How are you recruiting/finding the right creatives for your company? And how do you nurture their creativity within your company?
オープンにいつでもだれでも採用しているのですが、実際今はほとんど知り合い経由で紹介された方や、以前に仕事したことあるメンバーが加入することの方が多い気がします。また育成に関しても僕らの会社は残念ながら丁寧に何かを教えるというよりは、現業を通して実践の中で学び成長する、というケースが多い気がします。というのも「Whatever = 何でも屋」の名の通り、毎回全然違うようなプロジェクトをやりすぎていて、あまりプロジェクトの進め方や考え方をマニュアル化できないのです。そのため、逆にヒエラルキーをなくして、いつでも誰でもなんでも質問ができて答えがもらえるようにし、なんでも手をあげてやってOKな環境を作ってます。そういった中で生まれたプロジェクトに携わりながら、みんなそれぞれやり慣れない領域では学びながら得意なジャンルを見つけて伸ばしていく道をみつけてるイメージでやってます。CEO富永の言葉を借りると、成長についても「管理しない管理」を主軸にしています。
Q3. How do you manage your organization from a creative standpoint? What do you do to let your employees become "creative".
上記と被りますが、ともかくみんなを自由にしておく。誰がいつ、どんなアイデアを出してもいい環境。あと、そういったアイデアをちゃんと評価できるような仕組みを考えるようにしています。IDEAというクレジットを作って誰のアイデアだったかを明記するようにしているのもそんな活動の一環です。個人的には、誰よりも面白い案を出してプロジェクトを引っ張ったり、誰よりも無茶なプロジェクトを立ち上げてクオリティ高く完成し切ることロールモデルとなれるよう心がけています(いるつもり)。僕がCCOとしてアホな無茶をしていたら、みんなもそのくらいの無茶してもいいんだな、と思えるはずなので。チームメンバーには、そういう姿をみて、悔しいから自分もやる!と思ってもらいたいです。
Q4. What do you do or try to do everyday, to nurture your own creativity?
世界の面白いアイデアをみつけるのが趣味みたいなところがあるので、日々自然とジャンル問わずネットから変なアイデアを見つけてきては会社のcool stuffっていうslackチャンネルに投稿するようにしています。あと、見つけるだけじゃなくて、そのアイデアのどこが面白いのかを自分の中で要素還元するよう心がけています。それが溜まっていくと、自分が面白いと思うアイデアの道筋が自然と浮かび上がってきて、クリエイティブの舵取りやスピードが鍛えられるような気がしてます。
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