アイアンマン参戦記

お粥が7年ぶりに筆をとりました。

〜プロフィール〜
SoftBank勤務の53歳。デジタルマーケティング事業所属。トライアスロン歴30年。総合格闘技2段。ストイック派だが胃腸が弱い為『お粥』と呼ばれる。

〜プロローグ〜
参加者2000人のうち日本人がいないレースは初だった。レースから1週間が経ち余韻に浸っている。ロングディスタンスのレース直後は身体が悲鳴をあげているのでホッとしたという解放感しかない。それが時間が経って疲れが癒えてくると湧き水のように達成感と歓びが沸々とやってくる。そしてまた次のレース計画を立て始める不思議なスポーツである。 歳をとっても衰えは受け入れたくないしどこまで頑張れるか、これからの人生どこに向かうべきか分からないが常に進化し続けたいから挑戦を続けているのだと思う。

〜参戦記〜
1日目
自転車はデカい。空港カウンターの預入ではヒンシュクを買う事が分かった。シアトルからの乗継便に載せれるか分からないとか超過料金まで持ち出され焦る。一瞬不貞腐れて家に帰ろうかと思う。結局、小田急トラベルさんがフォローしてくれANAからもお詫び電話があり機上に。隣の席にはタイ人が座ってきてやたらとバナナチップを勧められた。バナナチップはあまり好きではない。
シアトルでアラスカ航空に乗り換え1時間でスポケーン着。緯度は北海道の旭川と同じくらい。カナダの国境沿いで自然が素晴らしいところです。子供の頃、自然の中で暮らした影響から都心で暮らすのが今でも嫌なのだ。

空港に兄と姉御が迎えに来てくれた。
※40年前のホストファミリー夫妻だが自分は兄と姉のように思っている。
空気は美味しくて家の中まで清潔でいい香りがする。「里帰り」した気分。

夕方から地元のマイナーリーグの試合へ。弟分も合流して賑やかになってきた。ビール飲んでピーナッツ食べて長旅の疲れからか5回を持たずにうたた寝してしまった。帰宅して一瞬にしてバタンキュー。

2日目
ダウンタウン散策。コレまたスゴいハンバーガー食べて胃が…。

夕方にお婆ちゃまが遊びにきた。電子ジャーと刺身包丁まで持ってきてオーガニック専門のお店に行ったのだが刺身が売ってないので魚を握るのは厳しい。次回は違う洋風ネタを開発しよう。お婆ちゃま、87歳でも綺麗な人はずっと美人です。

3日目
大会受付。レース説明会。
自分は米国協会の所属選手でなくエントリー名簿に名前が見つからなかったので焦ったが兄貴がサポートしてくれ手続き終了。日本から一人だったらスタート前に心折れてたと思う。いよいよ明日だ。緊張がマックスになってくる。

さあ冒険だ♬:和田アキ子
晴れた日は 出かけよう
どこか遠くへ
知らないとこ 目指して
歩いて行こう さあ冒険だ
昨日より 今日が好き
新しいから
ワクワクする この気持ち なんだろう
さあ冒険だ

4日目
当日。朝2時起きの予定が夜中のヘリコプターの音で目が覚めてしまい…寝れなかった。朝の気温は13℃、寒すぎて車の中で暖をとった。
スタートは朝6時。スイムで大変なミスを冒した。水温が低いのは事前に分かっていてウエットスーツの下に着るインナーを新調したのだが、これが大失敗。スタートして身体が沈んでいく。溺れそうになる。パニックになりいつものフォームで泳げない。リタイヤが頭によぎる。兄貴と姉御のことを思う、きっと「仕方ないね」と言うだろうけど本当はガッカリするだろうなと。
トライアスロンは自分自身との闘い。リタイヤはいつでも出来るし言い訳はあとからいくらでも作れる。止まらず進み続けられるかどうか、どこまでやれるか、コレが自分自身の棚卸しである。タイムが悪くても進もう。遅いなりでもペースをつかもう、下半身が沈んでキックが打てないから腕だけで泳ぐ。どんどん抜かされる。いつもより水をたくさん飲んでしまう。折り返してゴールが見えてきてホッとした。タイムは最悪の49分。格好悪い。翌日水を吸ったインナーの重量を測ったら7キロだった。大会まで減量した意味が…。(T_T)

バイク90キロは最高に美しい景色。でもスイムの借金があるので景色を楽しむ余裕はない。集中することだけを考えて走る。路面だけを見て進む。3箇所のエゲツない峠の登りも心折れずに終えた。3時間45分。こんなに集中出来たのは久しぶり。

ラン20キロ。集中集中。日本と違い空気がカラッとしているのでスタミナは奪われない。脱水にならないよう水分とエネルギー補給には気をつけながら走る。ラスト3マイルだけ流石に膝に痛みがあり少し歩いてしまった。『最後は気持ちですよ』という後輩の言葉を思い出してまた走り出す。
余談ではあるがアメリカのトライアスリート女性はスタイル抜群でノーブラが多かったので目のやり場に困ったことも追記しておく。

それが大事:大事MANブラザーズオーケストラ ♬
負けないこと 投げ出さないこと 逃げ出さないこと 信じ抜くことダメになりそうなとき それが一番大事

ゴール前はスゴい人でビックリ。気持ちよくゴール出来た。ゴール後、皆が待っててくれてありがたかった。ゴール後はお決まりのビール一気。全身に沁み渡る。おいしい。

マイレボリューション:渡辺美里♪
わかり始めた My Revolution
明日を乱すことさ
誰かに伝えたいよ
My Tears My Dreams 今すぐ
夢を追いかけるなら たやすく泣いちゃダメさ
君が教えてくれた
My Fears My Dreams 走り出せる

走っていていつも自問自答する。何のために走るのか?自分は何が変わりたいのか?答えはない。きっと答えが見つからないのがいいのかもしれない。ギリギリの自分を感じフィニッシュラインを越えれば自分の今が分かる。達成感からもっともっと出来そうな気持ちになってくる。トライアスロンでなくても年齢の衰えを感じてるミドルシニアには挑戦できる目標がたくさんあるはずだと思う。

5日目
湖のリゾートでグダグダする日。楽園です。
https://www.priestlake.org/
クルーザーにはキッチンとベッドとダイニングがあり水の上はフワフワしていて心から癒される。朝ビール、昼はクルーズしながらデッキで寝転がりスナックを食べながらビール(ずっとこれがやりたかった)、午後はクルーザーでBARまで出掛けてカクテル。夕方は食事の支度をしながらワイン。日没を見にクルーザーで出掛けピンクに染まっていく夕焼けにまた心が洗われる。クルーザーの静かな夜は心地よく爆睡。

♬歩いて帰ろう:斉藤和義 ♬
嘘でごまかして 過ごしてしまえば
たのみもしないのに 同じ様な風が吹く
急ぐ人にあやつられ 言いたい事は胸の中
寄り道なんかしてたら 置いてかれるよ いつも
走る街を見下ろして のんびり雲が泳いでく
僕は歩いて帰ろう 今日は歩いて帰ろう

最後になったが自分を支え続けてくれる優しいアメリカの兄と姉夫婦には心から感謝している。中学2年の時から40年。海外旅行ではなく、もう帰省なんだよね。
ビジネスは厳しく周りを打ち負かして自分をPRする事も時には大事だ。でも自分のことだけ考え都合が悪くなると逃げ回ってしまう『小さい人』が世の中いかに多いことか。お粥は優しい兄姉とこの地の美しい自然から大人になっていく過程で沢山の影響を受けた。そして間違いなく正しく今の自分につながっている。

日本に戻ったら、こんなにゆっくり出来る機会はお正月までないのだろう。会社、農園、陶芸、トレーニング。また戻ってこよう。See you soon.

今回お世話になった皆様にに御礼を申し上げます。
Dick Malsom
Marsha Malsom
Michael Malsom
Jessica Malsom
& The Malsoms

小田急トラベル様
Yue 鍼灸院 様
タキサイクル様

その他励ましの言葉を下さった皆々様
ありがとうございました!