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#1 ビジョン経営 − ベンチャー起業家の経営学の活かし方 −

ビジョン経営に至るまで

私は、東北大学歯学部の学生時代に中小企業診断士を取得し、歯科医師として臨床を経験した後に、UCLAのビジネススクールに留学をしました。

診断士を取得したのは、日本の歯科医療を取り巻く環境・課題を客観視することで歯科医療のエコシステムとその本質を知り、そこから未来への糸口を見出そうという思いからでした。MBAを修学したのは、医療界を革新していく上で必要なのは、医療へのより高い視座での分析及びマネジメントの導入と、プロフェッショナル自身による関連ビジネスへの参入ではないかと考えたからです。

帰国して、歯科医療に専門特化したヘルスケアベンチャーのWHITE CROSS株式会社を創業して7年になります。起業して最初の数年は、診断士やビジネススクールで学んだ知識などより「吐きそうになっても前進し続ける精神的な強さ」「プロダクトとその先に作り上げられる社会イメージへの偏狂質的なパッション」「取り憑かれたようなコミットメント」など・・・生き残るために必要な、より泥臭く根源的な力が求められました。

起業して5年を越えた頃から「どうすればWHITE CROSSを京セラ、トヨタ、リクルート、ファーストリテイリングのような偉大な企業に育てることができるか」を考えるようになりました。きっかけは、私のメンターの一人であるベンチャーキャピタリストさんから「赤司さんには、一流の経営者になってもらいたいのです。」という言葉をいただいたことでした。明日のラーメン代を稼ぐことに必死になりながら、同時に再度インプットに立ち返り、自分が求める経営の知識がまとめられている実践的なビジネス書を読むようになりました。その中でも、強烈な影響を受けた一冊が「ビジョナリー・カンパニー ZERO」です。

偉大な企業を動かす要素について描かれているのが「ビジョナリー・カンパニー」だとすれば、生き残りをかけて必死にもがく小さな企業を偉大な企業へと成長させていく法則について描かれているのが「ビジョナリー・カンパニー ZERO」です。

実は今から十数年前、東北大学の学生時代に「ビジョナリー・カンパニー」を読んだ私は、頭を殴られたような衝撃を受けて経営者になりたいと思いました。そして実際に経営者となった今の私のバイブルが「ビジョナリー・カンパニー ZERO」である巡り合わせを面白く思います。

「ビジョナリー・カンパニー ZERO」に書き込みをしながら、何回も、何回も読み返しているためボロボロになっています。多分・・・もう7回は目を通しました。それに加えて、毎週行われている社内研修の指定図書に指定し、経営幹部のみならずユニットリーダー以上全員にひとり一冊配布し、WHITE CROSSのDNAに叩き込み、ZEROに忠実に従った経営を進めています。

「ZEROに書かれている通りに経営しているから、経営幹部との共通言語を持ちたいならまず読んでみて。」と言っていると、エンジニアさん(とても優秀で、ヒーローっぽいイケメンくん)が率先して読んでくれ、「会社の方針を理解できるようになりました。」と言ってくれました。

ZEROはWHITE CROSSの経営の基軸となっています。

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ちなみにWHITE CROSSでは、幹部研修・ユニットリーダー研修・メンバー研修・ロジカルシンキング研修などの様々な研修が、ほぼ毎日、社内のどこかで行われています。

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この記事を書いている2022年3月9日にも、オンサイトやウェブで会社の成長につながる研修が行われています。ちなみにこちらは、経営推進室 室長・CTOの後藤による「PR/FAQ」についての研修です。これは「Amazon Mechanism」という書籍が元になっています。社員の誰もが新規事業創出・イノベーションに関われるAmazon社のDNAをWHITE CROSSに移植するための研修です。一部の研修は再現性を持たせるため、動画として保存され、Notion上で誰もがアクセスできるようにアーカイブされていきます。


私は、会社に何かを取り込む時は、中途半端なことはせずに、徹頭徹尾その本の通りにやってみます。これは星野リゾートの星野佳路社長からの学びです。星野リゾートといえば、あっと驚かされる事業展開や革新的なサービスを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。米国コーネル大学でホテル経営を学んでこられた星野社長は、「星野リゾートの教科書」という本において、星野リゾートの事業展開の背景には常に「教科書」が存在していることを記しています。星野社長は経営で何か壁に行き当たると本屋に行き、教科書となる本を探されます。そして、その本に書かれている「一流の経営学者が緻密な研究によって導き出した理論」に基づいて考え抜き、確信を持ってビジネスを実践されているとのことです。経営に関わる理論の多くは汎用的・普遍的であり具体を持ちませんが、経営者として自分に刺さった理論のひとつ一つを目の前の事業に重ねて、忠実に実践する愚直なまでの素直さから星野リゾートのような the One and Only が成長してきたのです。これこそが、実践者にとっての経営学の活かし方ではないかと私は感じています。

起業して7年が経ち、上場を真剣に目指し始め、私自身、学んできた経営学のありがたみを感じるようになりました。最初の数年のような1日15時間364日働きづつけるような全力ダッシュの時期を超えて、社員数が増加し始めた頃から、作業より考えることの比重が高まってきます。何かについて考え続けながら、オフィスの近くの青山ブックセンターにふらっと立ち寄り経営に関わる様々な情報を手にとって、自分に刺さる理論を持ち帰って理解することができる能力を身につけてきたことの価値は大きいと感じています。ちなみに、副社長の田代、先述の後藤や管理部 部長の永畑なども本をよく読むため、社内は小さな本屋さんみたいになっています。

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そんな経営陣の背中は、社員に影響をあたえます。WHITE CROSSでは週末が近くなると本棚の前で何を借りて行こうかを考えている社員や、上司が部下におすすめの本を手渡しているシーンがよく見られます。年内にオフィスを移転する予定ですが、壁一面を本棚にした「知の部屋」を作りたいと考えています。

数年前に「起業するのに、中小企業診断士やMBAは役に立ちますか?」という質問を受けたことがあります。「役立ったと思える日が来るように生きています。」と答えた記憶があります。実際の所、最初の数年は「自己紹介する時に、ちょっと役に立ちました」って位でした。ところが今になって、経営学を学んできたことが想像以上に活き始めていると感じています。歯科医師としての臨床経験のみで、診断士やMBAを修学せずにWHITE CROSSを起業していたとしたら、必要と感じる情報を理解するためのハードルがこの上なく高く、苦労していたのではないかと思います。

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この図は、UCLA時代に一番好きだった教授が言う所の、MBAの位置づけです。確かに、経営学って"浮き輪"だなって思います。私が尊敬する稲盛和夫さん、柳井正さん、藤田晋さんは経営学を学ぶことなく起業されています。浮き輪がなくても泳ぎ切る人は泳ぎ切ります。それがあっても、泳ぎきれない人もいます。大切なのは、Run & Learn の姿勢を崩さないことでしょう。

前置きが長くなりましたが、「ビジョナリー・カンパニー ZERO」に忠実な経営を行うために、WHITE CROSSでは以下の通りにビジョンを定めています。

WHITE CROSのビジョン

WHITE CROSSのビジョンは、①コアバリュー /② パーパス /③ ミッションで構成されます。

ビジョンをもとに、経営戦略が立てられ、中期経営計画が立てられます。そして、計画を達成した分だけ、組織成長計画が実行されていきます。

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① コアバリュー = 我々は、どういう集団であるか

WHITE CROSSにおける価値観の核(コア)であり、社員同士で共有される考え方・価値基準、つまり企業文化の源泉です。簡単にいうと、WHITE CROSSとは「こういう集団です。」ということです。高い犠牲を払っても堅持されるものであり、慣行や戦略は変わってもコアバリューは不変です。

真摯さを最重視する/質実剛健に成果を追求する/be nice

このコアバリューを社員の具体的な行動にまで練り込むため、WHITE CROSS 社員の行動指針が作り出されています。行動指針について、また別日に紹介します。



② パーパス = 我々は、どこに向かうか

 歯科医療の社会的価値を高め、大樹となり社員とその家族を支える。プラットフォームを活かせるDX事業を展開し、歯科業界を面で発展させることに貢献する

WHITE CROSSの存在理由であり、社員一丸となってパーパスを目指して歩み続けます。案内星のように、どこまで行っても到達することはありませんが、常に追い求め続ける対象です。


③ ミッション = 我々が、登る山

パーパスを目指して歩んでいく中で、その時々に登るべき山のことをさします。言い換えるなら、全社員一丸となって、エネルギーを集中させるべき目標です。WHITE CROSSのミッションは、全社ミッションと営業部・HR事業部・メディア部・開発部・管理部・全社情報戦略室・経営推進室・IPO推進室の8部・室、それぞれのミッションがあります。

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こちらはWHITE CROSSの経営陣が集まって、全社ミッション2022、8つの部・室ミッション2022を協議するためのミーティングの様子です。中央のモニターには、私が絶大な信頼を寄せている女性部長もリモート参加しています。


ビジョン経営を登山に例えると

会社の成長の可否は、難易度の高い登山の成否と同じです。登山においても、ビジョンを明確にしなければいけません。

ビジョンを明確にするとは、「どのような集団(コアバリュー)で、どこに向かっており(パーパス)、まずどの山を登るのか(ミッション)を明確にする」ということです。

そのビジョンに従って、選んだ山(ミッション)の攻略法(経営戦略)を立てます。その攻略法に基づいて月・年単位でどのようなプラン(中期経営計画)で、どの地点(ゴール)まで登るかが決められます。そして、実際の日々の登山(戦術)が実行されます。

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計画に基づいて実際に登った分だけ、次のゴールに到るための物資や装備の充実(組織成長計画に基づいた組織体制/人事評価の充実)が行われます。

選んだ山(全社ミッション)を登り切るために、異なる機能を持つ幾つかのチーム(WHITE CROSSでいうところの部・室)で構成されます。そして各チームには、それぞれが果たすべき役割があります。

企業文化に基づいた規律ある思考・行動を守り、チーム同士が連携することで、一人では登ることができない山に登ることできます。

一つの山を登り切りミッションをクリアーしたら、次に登るより高い山を選び、また登り始めます。それを繰り返し続けながら、会社として脈々と成長していきます。

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その間、常に案内星(パーパス)を見つめ続けます。

WHITE CROSSの経営では、これを繰り返すことが仕組み化されています。


ベンチャー企業がビジョン経営を行った先にある姿

サイバーエージェント社の藤田晋社長は、起業する前に「ビジョナリー・カンパニー」を読み、強い影響を受けたとその著書で記しています。

そして、「21世紀を代表する会社を創る」というビジョンに基づいた経営を貫いてきた結果、創業から約20年で、日本を代表するIT企業に育っています。

私は経営者としてイメージを膨らませる時に、現地・実物を見にいくようにしており、昨年10月に渋谷にあるAbema Towersを訪れました。(もちろん、中には入っておりませんのでご安心ください。)

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多くのベンチャー企業が、このようなオフィスビルの1フロア。あるいは1フロアの一角に入ることを目指しています。その一方で、この全てのフロアがサイバーエージェント社であることから私が感じたのは、「サイバーエージェント社は、一人の天才が作った企業ではない」ということです。

20年間、サイバーエージェント社の社員が一丸となって、「藤田社長が描いたビジョンの元に、成長基盤の仕組み化を行い、一人の天才の頭脳を超えたビジネスをチームで創出し続けてきた結果」が今のサイバーエージェントなのではないでしょうか。偉大に見える企業も、現在のWHITE CROSSのような苗木のステージ経て、大樹へと育っていった。そのことを証明するような社屋でした。



WHITE CROSSはビジョン経営を行う企業であり、永続性のある偉大な企業を目指しています。小さく満足してはいけません。WHITE CROSSには、多様性に富んだ素晴らしい才能が揃っています。

社員の一人ひとりが自分の可能性を信じて、チームとして勇気ある挑戦を続けた先に、WHITE CROSSも大樹へと育っていくことが必ずできます。

WHITE CROSSは、社員に対して、人としての明るい部分に働きかけ、王道を行くように背中を押せる会社でありたいと願います。そして、社員の一人ひとりがうちに秘める優れた資質に訴えかけ、それを発揮するように迫る会社でありたいと願います。

その先に、社員一人ひとりが自分の色の葉花を美しく咲かせ、豊かで幸福な人生を歩んでくれることこそが、経営者としての私の最大の幸せです。

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WHITE CROSSにご興味をお持ちの方へ

WHITE CROSSでは、共感してくださる方からのご応募を、心よりお待ちしております。カジュアル面談も大歓迎です。気になられた方は、ぜひ採用ページを覗いてみてください。


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