【感想】HDリマスター版『ゴースト トリック』
本作の存在を初めて知ったのは『勇者ああああ』の2019/6/20(木)放送回。
企画は『平成ベストゲームを決めよう!』
『逆転裁判』は大好きなシリーズだったので、その生みの親である巧舟がまた新たなミステリーゲームを手がけてきたとは!
(自分は2010年当時はゲームという趣味自体から完全に離れていたので全くアンテナに引っかかっていなかった)
とはいえその時点で即プレイしたわけではやく、3年半後に『ゲームゲノム』の2022/10/19(水)放送回で『逆転裁判』が取り上げられていた(スタジオには巧舟も出演)のがきっかけで「そういえば何か別のオリジナル作品もあったよな」程度に思い出す。
そして今年2月のNintendo Directでリメイクが発表!
この日は朝から嬉しかったなぁw
ちなみに巧舟は今回のリメイクには直接的には関わっていないそう。
フレーム単位でこだわっていた演出の完全再現は達成されていない旨もツイートしている。
今回が初プレイの自分としては少し残念。
それでも遊んでみたらやっぱりめちゃくちゃ面白かった。
まず目を見張るのは物語(ミステリー)としての秀逸さ。
あらすじはこんな感じ。
謎を解くとまた新たな謎が生まれ、最初は何が何だか分からなかった個々の事件が一点に収束していく快感。
主人公は記憶を失っているため持っている情報はプレイヤーと同等であり、そこがゲームというインタラクティブで能動的・積極的に遊ぶアートフォームに巻き込まれ方の受け身なストーリーを馴染ませることに寄与している。
時間的制約をゲームシステム内に取り込んでいることもあり、いわゆる“やらされてる感”のようなものは無い。
シナリオも2010年発売ながら昨今のトレンドであるタイムループやマルチバースを取り入れていて驚いた。
確かに2023年時点では斬新さは薄れてしまっているが、あれが13年前に書かれていたのは(しかも本職の作家ではなくゲームクリエイターの手で)凄い。
死の直前の4分間を繰り返すという設定は現在公開中の映画『リバー、流れないでよ』に通じる。
『ゴースト トリック』も『リバー、流れないでよ』も繰り返す中で手がかりを掴む=繰り返さないとゴールに辿り着けないというタイムループを活かしたゲーム性・作劇。
過去を変えた結果として新たな現在が生じるというのは古今東西様々な作品で描かれてきたが、直近なら『ザ・フラッシュ』
どちらも「誰かの死を回避するために過去に戻って奔走する」お話。
その死を回避するために挑むのがまるでピタゴラスイッチのように物を組み合わせて道筋を作るパズルゲームというのも実にユニーク。
指先以上に頭を使うゲームであり、ゼルダよろしく謎が解けた瞬間の「俺って天才?」感がたまらないw
前述の通り「4分が経つと目の前の人が死んでしまう」というタイムリミット制約も物語上の必然性を伴った上でゲーム性を高めて頭をフル回転させてくれる。
また、個人的に最も素晴らしいの感じたのは、ゲームをプレイしている目的がストーリーに直結している点。
ゲームでいえばプレイヤーを視聴者に後退させるムービーを退屈と感じる人もいるはず。
それを見ないと次に進まない一方でその間はコントローラーの操作は台詞を送るぐらいしか出来ないので。
映画やテレビシリーズでも「ドラマを描いているシーンでストーリーは停滞」というのはよく起こる。
恋愛や死など何らかの出来事がストーリーとして起こり、それを受けて主人公はじめ登場人物の葛藤や成長というドラマが描かれるからこれはある意味必然である。
重要なのは「何かストーリー進んでなくね?」と観客に思わせない作劇や演出。
本作はその命題を「流れているムービーの上でゲームを進行させる」という一種の荒技でクリアしている。
毎回のゲームをクリアするまでの4分間でムービーも同時進行(ゲームをクリアすると同時にムービーも終わる)なのでストレスは少ない。
もちろん操作できないムービーシーンもそれなりにあるのだが、どうしてもミステリー小説のように謎や伏線のためにプレイヤーに台詞を読ませる時間が長くなりがちなタイプの作品においてこのシステムは目から鱗だった。
あとやっぱり巧舟の作品といえば『逆転裁判』と同様にBGMが素晴らしい。
今回も局面が変わるタイミングでメロディも変わるから遊んでるこっちはどんどん乗せられてしまうw
どうやら今回のリメイク版はBGMもアレンジされた新バージョンらしい。
オリジナル版との比較は自分には出来ないけれど、良い曲ばかりだったなぁ。
『勇者ああああ』で本作の存在を知ってから4年、ようやく遊べて感無量である。