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【感想】NHK新春特番『あたらしいテレビ』と超個人的コンテンツアワード2023
番組本編
今年は大きく二部構成。
1本目はコンテンツバトン。
トップバッターは子役の白山乃愛さん。
福田雄一作品の人気っぷりを見せつけて数多のシネフィルを刺しながら、話題はお笑い芸人の陣内智則のYouTube『陣内智則のネタジン』へ。
寝ている時にいつも聴いていて、それを聴いたらすぐ寝れちゃうっていう私にとって魔法のYouTubeです。
睡眠導入剤w
2本目はダイヤモンドトーク。
若手クリエイターを集めての、観る側ではなく作り手による座談会。
良くも悪くもテレビの話からは離れた縦横無尽なトークが面白かった。
Z世代と括られること
12歳の映像作家の今井環さんからまたしても福田雄一作品の名前
SNSの評価どこまで気にする?
いつまで仕事を続けますか?
などなど興味深い話題ばかり。
しかし宮崎駿の『君たちはどう生きるか』が表現者としてあんなにエネルギッシュに見える彼ら・彼女らを打ちのめしていたのは凄い。
「売れるって何?」「大スターになりたくないですか?」でのトーク内容は2023年末に放送されていた『令和ロマンの娯楽がたり』の「5年後天下を獲る芸人は?」で話されていた内容を思い出したり。
ただ、ここから福田雄一と山崎貴の対談に再度戻る構成は両者のアンチに体よく消費された感は否めないw
ここまでの番組の流れと北米圏での現在進行形の興行的ヒットを踏まえればこの2人の出演には特に違和感も無いかなぁ。
山崎貴がまさに「アート系」とか「産業」とかって言葉を口にしていたけど、その括り方や説明がちょっと雑とか「さすがに2人だけが抗ってるは言い過ぎでは?」とか隙はあれど言ってる内容自体はそこまでズレてない。
まぁダイヤモンドトークの後とか抜きにして2人がのんびりムードすぎたというのはあるかw
超個人的コンテンツアワード2023
番組内ではチラッと触れられる程度だったけど、ウェブで全編が公開。
いやはや読み応え十分。
TaiTanは自身のポッドキャスト『奇奇怪怪』でもここで挙げたコンテンツについて喋ってくれている。
この手の企画には常連っぽいのに珍しく不在の佐久間宣行プロデューサーは自身のラジオで映画・舞台・ドラマの年間ベスト10を発表。
映画とドラマの年間10選は昨年末にnoteに書いたので被ってるコンテンツもあるけど自分も挙げてみた。
①ゴジラ-1.0(映画)
山崎貴、よくやった。
どう考えても負け戦で爆死してもおかしくない「シン・ゴジラの次」にきちんと自身の作家性で応えてみせた。
ゴジラや特撮怪獣映画のファンとして本当に嬉しかった。
②ザ・キラー(Netflix)
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とにかく冒頭のパリのシークエンスから編集のリズム・テンポが最高!
撮影もバキバキに冴えている。
そして“あの”音響設計。
あの約30分間は今年映画を観ていて一番ワクワクしていた時間かも。
「ヤバい!ヤバい!ヤバい!ヤバい!これはすげぇ映画だ!」みたいなw
この物語は中身があるのか無いのか?
主人公は一流なのかドジっ子なのか?
Amazonではあんなものまで本当に買えるのか?
そんな疑問を隅に追いやるレベルで「映画ってのは洗練された画面と音があればそれで十分傑作になるんだよ。重厚なストーリー?それはテレビシリーズの得意領域だ。例えば『マインドハンター』とかね」と教えられた1本。
③メディア王 〜華麗なる一族〜(U-NEXT)
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もはや説明不要の金字塔のファイナルシーズン。
最後の最後まで全話ただただ感嘆。
観終わった後は呆然。
個人的に好きな回は第3話と第8話。
上半期にこんなんやられたら映画は全部霞むし、ドラマも下半期はあまり感動できなくなっちゃうじゃないかとw
名作の完結をリアルタイムで見届けたというのに留まらずピークTVの終焉と重なったのも印象的でした。
間違いなく歴史に残るシリーズ。
④一流シェフのファミリーレストラン(Disney+)
「今年の海外ドラマは『サクセッション/メディア王』のファイナルシーズンがピークになるのかなぁ〜」なんて油断してたところに現れた大傑作。
シーズン1も最高だったけど(自分はシーズン1も今年観ました)シーズン2は全てがパワーアップしている。
各キャラの成長を丁寧に描く群像劇脚本
猛烈にアガる音楽と編集
全てが一流(邦題以外w)
⑤窓際のスパイ(Apple TV+)
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昨年末から絶賛評ばかりだったので気にはなっていたわけです。
ただ、シーズン3&4も決定済みとのことなので新シーズン配信直前に観るかと思っていたら何と早くも年内にシーズン3が到着。
シーズン1・2をイッキ見した流れでそのまま毎週配信のシーズン3に突入したのだが、評判通り超面白い!
登場人物はみんな魅力的だし、主要キャラでさえ容赦なく殺す脚本に震える。
だからサスペンスの緊張感が途切れない。
でもコメディ要素もあってちゃんと笑える。
逆に言えば笑えるからこそ「もうこいつら誰にも死んでほしくない!」となるわけで。
そんな極上の物語を各話40〜45分×6話のテンポでまとめてくる脚本。
もうね、マジで見事としか。
⑥メグとばけもの(ゲーム)
ゲームはそこまでやらないのだけど、これは運良く割と発売直後にプレイできた。
温かいドット絵×良質なシナリオで、ボリューム的にもアニメ映画を観たような気持ちに。
⑦地雷グリコ(小説)
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実は昨年はなかなか小説の個人的クリティカルヒットが出なかったのだけど、年末ギリギリにこれが来てくれた。
まぁ青崎有吾は元々ファンなのですが。
『カイジ』『イカゲーム』『今際の国のアリス』といった作品を彷彿とさせる、誰もが知るお馴染みの遊びに独自ルールをワンポイントだけ足した新ゲームが描かれた連作短編集。
例えば表題作『地雷グリコ』はこんな感じ。
じゃんけんをして先に階段を上り切った方が勝ちのグリコで、全46段のうち3つの段に、相手がその段で止まったら10段後退させられる「地雷」を仕掛けられるとしたら――。
その上で交わされる心理戦の攻防が面白すぎる。
グリコは普通に進んでる内は3の倍数の段にしか止まらない。
しかし一度地雷が発動して10段後退すると3の倍数の規則から外れる。
仮に相手が地雷を仕掛けた段が分かったとして、それを避けようとすると今度はじゃんけんの手が読まれやすくなる。
等々…
著者らしいゴリゴリにロジックを積み重ねる展開は本質的に時間芸術である映像作品では難しく、読者のペースで読み進められる小説ならでは。
個人的ベストは既に完成したゲームであるジャンケンを進化させた『自由律ジャンケン』
もちろん著者の過去作と同じく主人公のキャラクターも立っている。
シリーズ化されるかなぁ…?
⑧大脱出(DMM TV)
TBSから正式にコンプラNGを食らった(理由は「クロちゃんを埋めるのはダメ」w)企画を藤井健太郎がDMM TVで敢行。
わざわざネット配信でバラエティ番組をやるなら『水曜日のダウンタウン』では出来ないことをやるという志すら漂う。
それが単に「過激なことをやる」ではなくて、とことん作り込んでいるのが2020年代的。
(2010年代にはまだ地上波NG=ただ過激でも面白がれた牧歌的な時期はあった)
最後の脱出方法は信じられないものを目の当たりにしてる感があって笑ったなぁw
⑨SIX HACK(テレ東)
逆にこちらは「スポンサーのいる地上波でこんな仕掛けが可能だったのか!?」と度肝を抜かされた。
各エピソードの作り込みもさることながら、公式に「全6回」と発表していたものを3回で“打ち切り”にしてあの“検証番組”ってこれこそよくコンプライアンス審査を通ったと思うw
しかも枠を埋めたのは正真正銘の再放送番組だったし。
もちろん2023年も色んなバラエティ番組で笑ったけど、全体の構造として唸ったのはこれかなと。
⑩グレート・ムタvs.中邑真輔(ABEMA)
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グレート・ムタという存在を知ったのは2003年の1月。
全日本プロレスのリングでZERO-ONEの橋本真也に毒霧を吹く姿をテレビで見たのだが、当時まだプロレスとK-1とPRIDEの区別が(時代的にも)曖昧だったこともあり「は?」w
2003年というのはまさにプロレスが格闘技に押されていた暗黒期で、クネる前の中邑真輔が新日本プロレスで史上最年少IWGPヘビー級王者になりながら総合格闘技の試合を定期的にやっていたのも僕の混乱に拍車をかけていた。
(今思うと可哀想すぎる永田裕志はじめ当時は決して少なくないプロレスラーが格闘技をやらされていた)
あれから20年、プロレスと格闘技は似て非なるものという認識が僕だけでなく世間にも浸透した2023年の元日。
WWEがまさかのワンマッチで中邑を送り出す異例の措置から実現した試合。
お互いがリングを自分の色に染めるタイプのプロレスラーだけに全ての攻防が見応え抜群。
そしてあの想像の斜め上を行く決着…!
プロレスとは芸術作品である。
次点:とんぼとサカナ(Audible)
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ここまで挙げたところで音声コンテンツが無いことに気付いた。
極楽とんぼ加藤浩次×サカナクション山口一郎×佐久間宣行プロデューサーによるモキュメンタリーラジオコント。
BSスカパーやU-NEXTを渡り歩いてきた加藤浩次モキュメンタリーコントの新作。
第7話で山口一郎が「鯖と〜♪しめ鯖と〜♪」って歌い始めたときヤバかったw
ちなみに最も驚いたのは『霜降り明星のオールナイトニッポン』の8/11放送回
粗品が一人二役でやった回なのだけど、毎週熱心に聴いているリスナーというわけではない自分が「話題になった回は聴いたよ!」と挙げるのもどうなのかな…と自重。