シェア
写真家 土屋 正英
2022年8月16日 04:39
この穴から覗くその先には、秋の宴が待っていた。夏を過ぎ、うっすらと秋の風が吹く中、トップシーズンに向けて訪れたのは、滑沢渓谷。何度来ただろうか?それでも年に何回も来てしまう場所の一つなのだ。丁度この秋から差す光も素晴らしく、新たな発見を求めて彷徨う。名前の通りに滑らかな岩肌は、水に濡れ艶々に輝き、妖美なラインが渓流を作り出す。その濡れた肌に足を置けば、そこはスケートリンクの様に足を奪われてスッテン
2022年8月16日 04:37
先日の台風15号は、沢山の被害を伊豆にもたらした。そして、私の中で、天城の象徴だと思っていた「ヘビブナ」がついに逝ってしまった。幾たびの脅威を乗り越え、命を全うするために変えた姿は、まさに情念という一言に尽きる。私は、このヘビブナの前に何度立っただろうか?訪れる度に、偶然の出合いをくれた。その偶然が重なるほどに疑念が確信に変わり、この日、私は、不思議な体験をしたのである。人は誰しも大きな悩みを抱え
2022年8月16日 04:41
この日、前日に見つけた”ツキヨタケ”を撮影したく夜の森を訪れた。ツキヨタケはブナなどの立ち枯れに寄生するキノコなのだが、名前から想像できる様に、夜になると蛍光色を放ち、闇夜に浮かび上がる面白い特性を持つ。例年9月中旬~10月中旬に天城で確認でき、毎年歩けばその辺に生えているのだが、今年、いざ撮影したいとなると全く見つからず、森のいたずらに遊ばれていた。やっとの思いで撮影できそうな立ち枯れを見つけた
2022年7月8日 11:04
8月の半ばも過ぎる頃になると、少しだけ森の空気が変わる気がする。香りでも温度でもない何か雰囲気が違うのだ。それは、小さな小さな兆し。きっと、季節の変わる合図を森が教えてくれているのだろう。そして、この季節の狭間は、なんとも言えない安堵感で満たされる。なぜなら、今年も無事に時が過ぎ回っていると思えるからだ。日常の中では、当たり前の様に思うかもしれないが、やはりこの自然の巡りに生かされているのだと考え
2022年7月8日 10:55
今回からは、視点をグッと寄せて小さな存在を追いかけてみたい。森を歩いていると、こぼれるほどの光が気になり、自然と空を仰いでしまう。そこからは、風に揺れて動く葉の隙間から、キラキラと光がこぼれ落ち、眩しくて薄目にしたその先は、真夏の色で溢れていた。濃い緑に染めた葉は、これでもかというほど生命力に溢れ、強い日差しなど苦にしていない。情けないことに私は、降り注ぐ陽に、「勘弁してくれ」と呟くのだから、森の
2022年7月8日 10:52
光に包まれた瞬間、すべての想いは見透かされた様に想いがあぶり出される。森で繰り広げられる光のドラマは、遭遇したくてもなかなか出合う事は出来ない。しかし、一度でもその光景を体験すると、もう虜となってしまうのだ。うっすらと霧が漂う中、急に何とも言えない温かさに包まれ、自分を包む空間が、ふわ~っと黄金色のオーラで埋め尽くされる。こんな瞬間が”光芒(こうぼう)”がそろそろ出るかもしれない合図なのだ。この黄