マガジンのカバー画像

天城山からの手紙

60
伊豆新聞で2018年10月より連載スタートした、天城山からの手紙-自然が教えてくれたことのアーカイブ記事になります。加筆訂正をし、紙面では正確に見れなかった写真も掲載。
運営しているクリエイター

#時間

「天城山からの手紙 60話」

「天城山からの手紙 60話」

森には、過酷な場所へ命を宿した者、逆に最高な条件の場所に命授かる者がいる。それぞれに待ち受ける運命は、千差万別だが、命あるその場所で命繋ぐために生き抜かなければいけない事実は、変わらない。そして、命あるものは必ず終わりが来るという自然のルールを、すべての者が受け入れる。森を歩きながら、そんな事を考えていると、とても寂しくなる時がある。しかし、”時間”は流れ、決して止まらないのだから仕方がない。時間

もっとみる
「天城山からの手紙 52話」

「天城山からの手紙 52話」

森に生きる者達が命終わる時、誰が見送りしてくれるのだろうか?地に倒れ込み、まだ血の通うような姿でも、ただその場に居続ける。雨が降り雪が積もり、命始まる春が音を立てて過ぎて行っても、何もなく地に体を預けるしかないのだ。そして、時間が積もると共に新しい命が倒れた体に寄り添い、地に還る助けをし、その姿は、想いが形となり長い時間をかけて終わりまでの時間を巡らせる。寄り添う青い苔が体を覆うと、茶色い落ち葉の

もっとみる
「天城山からの手紙 51話」

「天城山からの手紙 51話」

また台風がやって来た情報が流れてくる度に、自然の脅威をまざまざと見せつけられ、平和に過ぎ行く日常の有難さを痛感したのではないだろうか?そして、人間も自然の一部であり、そのルールには逆らえないと再認識する。台風も過ぎ去ろうとしている中、やはり頭の隅っこには、天城の山は大丈夫だろうか?あの木は無事に立っているだろうか?どうしてもチラついてしまい、足が山へ向かってしまう。台風19号通過から迎えた13日、

もっとみる
「天城山からの手紙 37話」

「天城山からの手紙 37話」

天城というと東側の万三郎が頭に浮かぶが、私も、天城と言えばという事で東側からはいる事も多かった。春先には石楠花を求めて、沢山の人で登山道が埋め尽くされ、シーズンを過ぎると、ほぼ人と行きかう事もなくなる。少し寂しい気もするが、天城の良さは人が居ない故に、ゆっくりと満喫できる所にあるのかもしれない。この東側のルートは、撮影しながら一回りすると大体8時間位はかかってしまうのだが、いつも帰り道に三脚を捨て

もっとみる
「天城山からの手紙 35話」

「天城山からの手紙 35話」

森に流れる時間は、ゆっくりと過ぎてゆき、その時間に合わせて歩くと心がリセットされる。耳を澄ませば、小さな風に揺れる葉っぱの音さえ体に染みわたり、目を閉じれば、驚くほどの音が自分の周りを包んでいるのだと気付き、そんな時を過ごせば体から生きる力が溢れ出してくる。しかし、そんな幸せな時間は、もしかしたら直ぐ目の前で止まってしまうのかもしれない・・・。それはこの自然環境の変化が、じわりじわりと姿を確実に現

もっとみる