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【茨城戦】充実した2日間。敗因は1Qではなく4Qにある。-第21節-

第21節。富山vs茨城の対戦。
GAME1は96-88で富山の勝利し、GAME2は79-85で茨城の勝利となった。

この2日間で最もインパクトがあったのがGAME2の1Q、10-35といきなり大量ビハインドを背負わされた10分間だろう。

そして富山はこのGAME2を落とすことになるわけだが、この1Qを敗因とするのは少し違う。

なぜならば、富山は2Qからのわずか16分31秒で44-19のランを返し、試合を振り出しに戻している。

ボックススコアからもわかるように10-35の1Q以降は2Qで26-12、3Qで25-15と2クォーター続けて茨城を10点上回っている。

ならばなぜ4Qも同じように茨城を上回れなかったのか?

敗因はそこにある。

今回の記事ではGAME1の流れについて解説した後、このGAME2の敗因について解説していきたい。


GAME1

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23 1Q 21
25 2Q 16
22 3Q 25
26 4Q 26
富山 96  F   88 茨城

今年絶好調のスタメンが機能せず

1月1日の広島戦以降、富山のスタメンは
宇都・水戸・晴山・BJ・スミス
である。

このユニットはこれまでの9試合の多くでスタートダッシュに成功している。
しかし、さすがにスカウティングが進んだのか、今節の茨城に対してはこのメンバーが機能せずオフェンスがブレーキ。
さらにマンツーマンDFも機能せず、入りはしなかったものの平尾と福澤にスクリーンからのミドルジャンパーを何度も打たれた。

これを見た浜口HCは3分5秒で水戸とKJを変え、マンツーも2-3ゾーンに変更した。

十中八九茨城のスカウティング通りだったはずだが、想定外の活躍をしたのが覚醒中のブライス・ジョンソンである。

ここまでのBJのスリーは33試合で9本中2本成功。
つまり、ノンシューターとして考えていい数字だ。
しかしこれまでとは異なるタイミングで2投放ち、2本とも成功させた。

1Qの富山のTOは6本であり、スタメンがいつもの形で機能したとは言えず、悪い内容だった。
しかしBJの活躍に加え、さらに茨城の勿体ないミスに助けられたこともあり、印象とは裏腹に23-21と富山リードで1Qを終えた。

流れを変えたベテランユニット

2Qのスタートは
阿部・KJ・飴谷・小野・BJ
のオン1体制である。

ここから流れを変えたのがKJと小野のベテランコンビによるツーメンゲームである。

KJがポストプレーをし、外で小野が構える形だ。

これは役割が逆のように見えるかもしれないがマッチアップを見ればこれは理にかなっている。

小野(197cm)vs トラソリーニ(206cm)
KJ(188cm)vs 福澤(177cm)

小野が外で構えることでトラソリーニを外におびき出し、中でKJが身長差を突いたミスマッチで攻撃する。
KJにトラソリーニが寄れば小野がすかさずスリーを放つ。

2人はこのオフェンスを2Q開始から4ポゼッション連続で成功させた。
小野が3点1A、KJが6点と躍動し、11-4のランで茨城を突き放しにかかる。

KJと小野、2人のホットな選手ができたことで富山のオフェンスは多彩さを増す。

茨城はKJと小野を警戒するのだが、BJやスミスのポストプレーやオフェンスリバウンドの対応も手を緩めてはいけない。
そして忘れた頃にやってくる水戸健史の"きときとハンドオフ"も決まった。

しかし2Q中盤。

アスレチック能力が高いとは言い難いこのメンバーは2Q後半ではボール運びに苦戦。
ショットクロックの大半を茨城のDFに削られてしまう場面が増え始める。

エントリーに至るまでに時間が掛かり、ボールが落ち着かない。そのためパス回しでDFを崩すような展開も無い。

それはあまり見栄えの良いオフェンスには見えなかったかもしれない。
しかし、このベテランユニットはなんだかんだでTOには至らない。
そしてショットクロックギリギリでも必ずシュートでオフェンスを終えた。

これがライブターンオーバーを回避することに繋がり、さらにBJやスミスのオフェンスリバウンドのチャンスも残る。

これによって茨城の有利な展開にはさせなかった。

バスケットの最終目標は相手より籠に球を入れること。

ショットクロックを削っても、
ディフレクションをしても、
ドリブラーを苦しめても、
これら自体が直接得点としてチームに加点されるわけではない。

そう言わんばかりの、ベテランならではの要所を抑えたプレーだった。

試合巧者のベテランメンバーの活躍により、2Qは25-16と富山が11点リードして終えた。



以降はスコア上は危うい場面もあったが富山は全く焦らなかった。

残り6分で77-73と詰められた勝負所ではタイムアウトからとっておきのセットオフェンスでスミスのダンクをメイク。
押せ押せムードのアダストリアみとアリーナを一気に静まり返らせた。
(現地で見ていたが、本当に会場が静まり返っていた)

最後にはファールされないようにボールを運び、パスを回して最後にKJでボールを落ち着かせる。フリースローシューターがKJになるように仕向ける大人なクロージングで見事に勝利した。


西宮に30点リードを7点差まで詰められたり、川崎に16点リードから逆転されたりとクロージングに難があった過去を考えれば、この日の富山はまた新しい姿であった。

GAME2

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10 1Q 35
26 2Q 12
25 3Q 15
18 4Q 23
富山 79  F   85 茨城

最悪の出だしvs最高の出だし


GAME2の1Qは誰もが予想をしていなかった展開になった。
原因は富山がトライしたマンツーマンDFにある。

富山はGAME2もGAME1と同様のスタメン。そしてディフェンスオーダーも同じくマンツーマン。
さらに言えばP&Rディフェンスも同じ。
スイッチではなくファイトーバー、つまりガードが一人で守り切るルールだ。

おそらくGAME1でできなかった守り方に再トライしたのだろう。
しかし、この日も宇都や水戸は平尾と福澤のスクリーン&ジャンパーを防げなかった。

そして、素晴らしい集中力を見せた平尾と福澤はGAME1のようにシュートを外してはくれなかった。

さらに茨城はDFもGAME1とは変えてきた。

タプスコットを宇都、遥をBJにマッチアップさせてきたのだ。
これはGAME1とは逆のマッチアップである。

BJがポストアップをしようものならタプスコットが宇都のミドルを捨て、BJに寄るシステムだ。
宇都は前節の島根戦で負傷した右手首の影響からか、空けられたミドルシュートを決められない。

これによって富山の自慢のツーセンターが得点力を発揮できない。

さらに宇都が下がり、上澤や阿部が出てくれば順当にガードがマッチアップしてボール運びからプレッシャーを掛けていく。

徹底されたわかりやすい富山対策である。

これによって茨城は6-18とスタートダッシュに成功。
最初の18点のうち、福澤と平尾の2人で16得点である。

この2人がアウトサイドで影響力を放っているため、次第にジェイコブセンやタプスコットのプレースペースが空き、次はウイングと至る所で好条件のシュートが増えていく。

その勢いは富山が2-3ゾーンに変えても変わらない。

点差が離れるほど茨城の選手達はストレスから解放され、放つシュートは面白いように高確率で決まった。
DFでも富山からタイムアウトを2つ使わせながらも10ターンオーバーを奪取。

富山は茨城の勢いに加え、思うようにファールが鳴らなかったことも相まって悪循環に陥り、10-35と最悪の出だしで1Qを終えた。


常勝チームのような立て直し


いきなり25点のビハインドを背負った富山だが、ここからはまるで常勝チームのような立て直しを見せる。

まず富山は宇都の使い方を変えた。

普通にトップで配給役を担うとミドルシュートを打たされてしまう。
そこで宇都はウイングの上澤に向かってドライブをした。

そしてボールを手渡してそのままスクリナーになり、上澤のスリーをメイクした。
これならば上澤は自分のマークを宇都に掛けてフリーになる。

宇都のマークは下がって宇都をノーマークにしているからヘルプにいけないのだ。

画像3

さらに遥がついてくればこれを見逃さずポストアップの1on1で処理し、トラソリーニを引き付けてBJのダンクをアシスト。

3ポゼッション目で上澤がタプスコットのパスをカットし、飴谷のスクリーンで宇都がレイアップを決めた。

わずか58秒で7得点を奪い、それまで10分間で10得点と重かったムードを一掃した。

以降、富山はジャッジの基準にアジャスト。
ボール運びでは注意をしてTOを抑え、逆にDFでは飴谷を筆頭にドリブラーにプレッシャーを掛けていく。

富山が特別やったことはこれぐらいである。
誰かが特別オンファイヤーしたわけではなく、昨シーズンのマジッククォーターのような爆発力を発揮したわけでもない。

あくまで淡々と自分達のバスケットを遂行し、一定のペースで点差を縮めていったのだ。
これまでの富山には無い、まるで常勝チームのような再現性の高い立て直し方だった。

その結果、2Q・3Qでは茨城のFGを33.3%、37.5%に抑え、自軍のターンオーバーもこの20分では7本に抑まった。

試合は61-62の1点差で第4Qへ。


敗因は1Qではなく、4Qにある


記事の冒頭でも述べたがこの試合の敗因は4Qにある。

確かに『そもそも1Qの大量ビハインドがなければ...』と考える気持ちはわかる。

しかし、1Qは富山の内容を優先したリスクあるトライが原因であり、ここである程度ビハインドを背負うことは想定内だったはずだ。

ここに幾つかの不運も重なって点差が想定よりも肥大化するオマケがついてしまったが、ある程度は富山も覚悟していたことだ。
そして、富山はこの想定外の大量ビハインドもわずか16分31秒で振り出しに戻している。

さらに追いついた段階で富山にスタミナ切れの様子はなく、茨城の出だしの勢いも完全に切れていた。

ならば本当の敗因は

14点上回った第2Q(26-12)
10点上回った第3Q(25-15)
なぜ同じように第4Q(18-23)で上回れなかったのか?

この点にある。
では4Qに何が起こっていたのか?

それは

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