音楽×和歌山。何も分からなくても想いを持って踏み出してみる
21歳、大学生のシンガーソングライター。彼のことを取材してほしい。
昨年度和歌山のゲストハウスにオンラインで宿泊したときに出会った方からこんなメッセージをいただき、和歌山で活動する大学生のシンガーソングライター・中野太貴さんを取材することになりました。
「音楽と和歌山をつなげる」ことをテーマに活動している中野さんですが、
「地元和歌山は音楽をする環境が乏しかったんです」
と苦悩を話します。
環境が乏しい中で地元で音楽というやりたいことを実現するためにどのようなプロセスを歩んできたのか、和歌山の若者に迫る旅へ出かけましょう。
周りに音楽をできる環境がなかった高校時代。
ーー音楽をやりたいと思ったきっかけを教えてください!
もともと音楽を聞くのが好きだったんですけどやりたいと思ったのは、中学2年生のときにMr.Childrenの音楽に出会った時でした。
当時、道徳の教科書に載っていたみんな仲良くしようとか絆とかが実際は裏でややこしい関係があったり、長いものに巻かれる空気があったりしたことに矛盾を感じたんです。そんなときにMr.Childrenの音楽は教科書に乗っている以上にことの真理をつかれているような感じがして。そこで曲を作る、ということをやってみたいと思うようになりました。
ただ。
ーーただ・・・?
和歌山って音楽ができる環境が乏しいと僕は感じてて。僕が通っていた進学校は1つも音楽ができる環境がなかったんです。
音楽やれる環境もなければ共感してくれる人もいなかったので、すごく難しい高校時代を過ごしました。
ーーなるほど。音楽はでは高校時代は全く触れていなかったんですか?
そうですね。高校は陸上やってました。
でもたまたま、カラオケで歌ってるのを交友関係が広い友達が撮ってて、それをツイッターにあげちゃったんです。次の日「あれほんとに中野が歌ってるの?と」言われて。
クラス替えでも「歌がうまい中野さんですよね?」と声をかけてもらえるようになりました。
そこから友達とデュオ組んで、文化祭に出てみたら体育館超満員で。ライブってとこんなに気持ちいいんだ、って知ることができました。
音楽をやる環境が中野さん。思わぬきっかけで音楽活動を始めるようになり、大学生を迎えます。
「和歌山で音楽やります!」100均のホワイトボードで始めた一歩。
ーー大学に入ってからのことを教えてください!
地元和歌山の大学の観光学部に入りました。そこで地域活性化であったり地元で頑張っている人の話を聞いて和歌山の良いところ知れました。どうせだったら自分の音楽と地元和歌山とをつなげたいと思って今の活動に至ります。
そこから和歌山を拠点に音楽をやっていこうと決意しました。
ーーすごい志ですね。実際始めてみてどうでしたか?
実は何もわからなかったんです(笑)21歳になったんですけど学生同士が集まってバンドやってたぐらいのものなので。
とりあえずわからなすぎて、100均で買ったホワイトボードに「和歌山で音楽やります!」とだけ書いて、駅で歌い始めました。めちゃくちゃ乱暴ですけど(笑)
ーー乱暴ですけどその一歩の行動がめっちゃいいですね!
ありがとうございます!ほんとになにしたらいいかわからな過ぎて(笑)
でもふとツイッターで和歌山でやるそこそこ大きい音楽イベントのコンテストがあるのを見かけてそれに出ようと決意しました。
出てみると意外に賞がとれて。
そこをきっかけに地元のライブハウスとか楽器屋さん、地元の芸人さんタレントさんに声かけてもらえるようになりました。
楽器を買いに行ったら「あ、君賞とった子だよね!」と認知してもらえるようになって。
ーー何も分からない状態から急展開ですね!
はい。そこからラジオ番組にも呼んでもらえるようになり、これは大変なことになってきたなと自分でもびっくりしています。
何もわからなくてもとりあえず踏み出した一歩。その一歩が少しずつ、中野さんの音楽と和歌山を繋げていきます。
「音楽×和歌山で遊ぼう」のコンセプトで和歌山の良さを共有したい
ーーだんだん認知されてきたなかで、和歌山のどんなところを発信したいですか?
僕自身が和歌山で感じてきたものですね。地元和歌山で受けたインスピレーションを大切にしようと思っていて。
僕が和歌山を通して得た感覚を、曲にしてより多くの方々と共有していきたいんです。地方あるあるや万人受け、というよりは和歌山で感じたものを「作品」として残していきたいです。
ーー最近、中野さんの地元の黒江を舞台にした曲を作られたと聞きました。
はい。車通る大きな通りがあって、一本路地にはいると急に昔の雰囲気の漆器がおいてあるような街が広がってて。でもそこ普段通らなかったからおもしろかったんです。
穴場に意外と面白くしたい人がいる。そこでもっと自分がいい音楽をやって、もっともっと名前を広げたい。ゆくゆくは僕の存在を通じて普段入ることなかった路地に人がはいってもらえるような存在になれたらいいなと思います。
ーー曲を作るうえでこだわったことはありますか?
一言も黒江っていうワードを出してないことですね。わざわざ黒江とか、お店の名前を出さなくても来てもらえたらわかるからです。お店じゃなくて、曲で響いて黒江に興味を持ってほしいと思っています。
ーーすごい。黒江のPRをするのに黒江の名前を出さないんですね!
はい。活動してみて和歌山ってご当地ソングは結構あるなと気づきました。ただ、課題があって。ご当地ソングって、お店や地域の名前をそのまま出してる曲が多いんですけど、それって和歌山でしか通用しないネタなんです。だから、聴いてくれる人の目線に立って曲を作りました。
ーー活動をされている中で大切にしていることはありますか?
遊び心ですね。僕の今のコンセプトは「音楽×和歌山で遊ぶ」です!もともとは音楽で和歌山を元気にする気持ちでやってたんですけど、そんなこと僕に言われなくても和歌山の人は必死に生きてるんです。
和歌山でこういう面白いとこ見つけた、こんだけ面白いとこ見つけたからぜひそれを共有したい、「和歌山こんないいんだ」とリスナーさんと和歌山の良さを共感し合えるようになりたいなと思っています。
音楽をできる環境がなかった高校時代。
「音楽×和歌山」をテーマにするも何をしていいか全くわからなかった大学生になった頃。
たとえ道が今見えなかったとしても、何か一歩踏み出してみれば、きっと世界感が広がるのだろうなと思いました。
日本にはいろんな過疎地域があります。「何もない」という地域であっても、きっとどこかに未来への種が落ちているのではないでしょうか。
こうして一歩踏み出した若者がいる和歌山が僕は楽しみでなりません。
まーきち
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